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転生したら、アンデッド!  作者: 三ノ神龍司
第三幕 終わらぬ物語の行方
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第三十七章 最後の中継地点

 俺は補給を済ませ、森を駆け抜ける。幸い、誰かに追撃されることもなく、無事に森を抜けました。


 ちなみに俺一人だ。フーフシャーさんの妹さんを相手取るならルイス将軍にもついてきてもらいたかったけど、下手をすると降ってきたアスカに吸収される危険があるから駄目なんよね。


 とりあえずその対策としてダラーさんには、アスカの下へ行ってももらってるわけだけど、絶対ではないからなあ。


 んで、俺が止めることになるわけなんだけど……今のままだと難しいんだよね。もしもに備えて対応出来る策はあるんだけど、それはかなり危ない賭けになる。


 フィジカル強い王種って色々とやべーのよね。


 この世界ってレベルとか上げても、肉体強度は上がらないんだよ。魔物なら進化とかすれば、強くなるけどもそれでも大抵、生物としての範囲外にはあまり至らない。


 けど、スキルをとにかく肉体強化になるような構成を持つ王種だと、別次元の生物になるっぽい。


 攻撃を放てば相手は一撃で塵になる。攻撃が効かない。存在を追えない。そんなレベルだ。


 対抗策が一つもないと、出遭った時点で詰みと言える。


 じゃあ、俺に対抗策あるのーって言うと……ないんだよなあ。『鬼胎』や『発電器官』、『毒性操作』を使えば無力化出来ないこともないだろうけど、ちゃんと無力化しない限り向かってくるかもしれないんだよね。


 目にも止まらぬ速さと生半可な攻撃は効かない硬さ、一撃で殺してくるような相手に一分以上、持ちこたえろって言われて出来ると思う?無理なんすわ。


 だから、まあ、『賭け』なきゃいけないかなあとは思う。


 俺は、てってこてってこと進んで行き、とある平原の岩陰にてフーフシャーさんやドクターと合流した。


 フーフシャーさんは、いつもの人間の姿になっていた。んでもって背には、毛むくじゃらの子供がおくるみされて背負われている。


 他の子供達は、アンサムんとこの補給部隊に預けている。まあ、一人いれば良いし、皆連れてると吸血鬼さんらに囲まれた時、対応出来ないかもしれないしね。


「げっ、豚……!」


「うわぁ」


 そんでもって、フーフシャーさんが元に戻ってるということは、オミクレーくんとウーくんも解放されているということだ。


 日中だから、血の鎧を纏っている。やっぱりウーくんの鎧は白いね。ちなみにドクターの鎧は真っ白です。


 聞いた感じだと、白血球って光を遮断する性質があるらしく、それを用いた鎧なんだってよ。完全に光を防ぐなら、白血球多めの方が良いんだって。


 俺はビビってくる二人を見ながら、なんとなくその場で下半身だけの反復横跳びをしてみせた。軽快に尻が左右に振られる姿に恐怖するが良いっ……!


「…………?」


「??」


 何してんだこいつ、みたいな顔された。


 まあ、いいや。


《どんな感じです?》


 俺はフーフシャーさんに声をかけた。


 なんかオミクレーくんとウーくんが「フラクシッド!?」みたいに驚いてたけど今はどうでもいいので放っておく。


「なんとも言えないわね。ドクターさんにちょっと偵察してきてもらったけど、確実にこっちに向かってきてるそうよ」


「かなり殺気立ってたな。……先頭にそれらしいのはいたがよ、たぶん、ただ出ただけじゃ誰かしらが死ぬのは確実だな」


 ドクターがそう言った。うーむ、まずは足を止めさせてこっちに注意向けないといけないわけか。


《妹さん以外死んでもいいなら、猛毒撒き散らして半数以上殺して動揺させますがどうです?》


「まあ、あの子を殺さなきゃいいけど……こちらとしても戦力が減るのは困るわね。タイタンと小競り合いが多いから、機動性が高いあの子の部隊ってかなり貴重なのよ」


 うーむ、ほどほどに殺すしかないか。まあ、再度殺してもいい許可は得たし、『賭け』の布石として取っておくか。


 ちなみに『賭け』は進化のことです。ある特定の方法で、特定のちょっと強い奴に進化出来ることをラフレシアから聞いたんだ。でも、かなり危ない方法かつ危ない進化先だから本当に『賭け』なんだよね。


《……子供がここにいるし、細部まで姿を真似して、前に出ればなんとか止まります?》


「匂いに敏感だからすぐ見破られるわよ」


「そんなことしたら激昂確実だわな」


 無理か。匂いに関しては、偽装は出来るけどそれを確認するための手段がないんだよね。犬並みに鼻が良い相手に人間の鼻だけで確認した香りは意味がないのと一緒だ。


「それにたぶんお前の足じゃ追いつけねえと思うぜ。今から走って行っても、確実に人狼達とかち合うだろうな」


 つまりリディアとぶつかっちゃうと。あーはいはい、ミチサキ・ルカさーん? 分かってますからそんなぶるぶるして力使わないでもらえますかー? あなた、俺に干渉するのかなり力使うそうじゃないっすかー(暇な時に色々とラフレシアに調べてもらった時に判明)。


《ドクター俺を……》


「嫌に決まってんだろ。俺はここから動かねえ。始祖様降ってくるかもしれねえ前線なんかに誰が行くか」


《ダラーさんが抑え頑張ってくれてますし……》


「……あいつの実力は信用出来るけどよ、あれより上がいるからな? それに始祖様落とすっつーんなら、確実に『あれ』がいるだろうしな」


《あれ?》


「形式上『プルクラ』様にされてる、あれだよ」


 あー、あれかあ。あのちょっと頭があっぱっぱーになってそうな、拘束具着用変態少女『プルクラ』様かあ。


《ところであれって結局誰なんです?》


「……あれはなあ。……あれは……プルクラ様の記憶を持ったサンっていうチビだよ」


《本物ではないんですよね》


 もしやクローンかと思ってたけどそうじゃなかったみたい。


「記憶だけだな。それと実験で魂をぶち込んでレベルを上げてるから、少々人格に悪影響が出てる。……ちなみだが、ダラーの幼馴染みだ、あれは」


《……あれまあ》


「時間がなくて伝えられてねえと思うから、一応俺から伝えておくが、たぶんお前期待されてるぜ。魂に干渉出来るなら、あいつを元に戻せるかもしれないって思われてんだよ。だからあいつも裏切ったんじゃねえかな」


 そうなのかー。やれるならやりましょうか。


(ラフレシア、出来そう?)


《魂に入ってみないとなんとも言えないかな。記憶が上書きじゃなくて、格納されてるなら可能性はあると思う》


 まず魂を調べてみて、か。ふむ、ラフレシアを魂に入れるには近づかないといけないんだが…………それを下手をすれば四天王以上の力を持つ相手にやれって?ぶへへ、ご冗談を。


 あっ、一つ疑問が出てきた。


《ドクター、プルクラさんの記憶がーってことは、あの人そういうスキル持ってるってことですか?》


「らしいな。そうやって自分の記憶を写して、始祖様ん中に行かせてるんだよ、いつもそうやってる」


 へえー。中々えげつないスキルをお持ちで。


 ……なるほど、下手すると俺が捕まったら俺がプルクラになってたってことか。こわっ。


《プルクラさんが戻せたりはしないんです? 俺が『魂支配』解くみたいに》


「出来ねえんじゃねえのか。そもそも操ってる訳じゃなく、自分の人格と記憶のコピーしたもう一人の自分にしてるわけだからな。水を操るのと、水質を変えるのは別もんだろ」


 なんて無責任な能力っ。とか思ったけど、俺の大体のスキルは無責任な糞迷惑スキルばっかりでしたね。人様のこと言えねえわ。


《まあ、協力する分にはオーケーですよ。ダラーさんにはお世話になってるんで。ただ、そん時はドクターも協力お願いしますよ》


「……勘弁願いてえんだが」


 そう言いつつも嫌だと否定しないのが、ドクターの人の良さを現している。長い付き合いでもあるからってのもあるんだろうね。


「私は嫌よ」


 フーフシャーさんが、背中の子供をぽふぽふしながら言う。


《うーん、まあ、仕方ないですよね》


 命がけになるだろうし、関係がほとんどないなら手伝わせるのは酷というもの。ていうか、フーフシャーさんからすれば、妹の子供を攫って残虐に殺した種族なわけだしね。ダラーさんやドクターが良い人でも、命を賭けて助ける気にはならんわな。


 俺は、オミクレーくんとウーくんを見る。二人がビクッとする。


《二人は手伝うよね?》


「なんでだよ!」


「僕は……嫌だよ……」


 ブルブルと頭を振るう二人に、俺は下唇を出した。


《えぇー……いやぁ?》


「嫌に決まってんだろ! こっちは無理矢理攫われたんだぞ!」


《無理矢理人様の子供攫って殺した側なのにー?》


「ぐぅ!?」


「いきなりボディブローかましてやるなよ」


 俺が直球デッドボールかましたら、オミクレーくんとウーくんはたじろいでドクターは呆れていた。フーフシャーさんは困り顔である。


《はぁ、ダラーさんかわいそーだなー。上の勝手な都合で幼馴染みが無理矢理……無理矢理っすか?》


 ドクターに問うと、首を横に振っちゃった。


「割と望んでやってた。プルクラ様に懐いてたからな、あれは」


《ダラーさん止められなかったんです?》


「あの性格だぞ? やるって押し切られたら、止められねえだろ」


 うーん、容易に想像出来るぞお。最悪の未来を想像出来たとしても、やりたいのっ、とか言われたら葛藤して見送って後悔した姿がありありとな。


《だったら駄目だね。あとでてっしゅーして良いっすよ、オミクレーくんは。ウーくんはドクターについていく感じで》


「良いのかよ!」


《同情あんまり誘える境遇じゃなかったし……。他になんか言うにしても、オミクレーくんのこと知らないし……》


《一応誘いたい体ではあるんだ》


 ラフレシアがそんなことを言う。……言いたいことは分かるよ。力不足だろ、って言いたいんだろ。でも、意外なところで役に立つかもしれないじゃん。単純に人手があるだけでも助かるし。


 でも無理強いは出来ない。


《……………………。試しに…………。……ビビってるんですかあ?》


 俺はアゴを引いて肉をため、上目遣いで言う。


「あ?」


「やめてオミクレー、安い挑発どころの話じゃないから。これに乗っかるのはさすがに恥ずかしいから」


 さすがツッパリオミクレーくんはビキッてしまう。けれどウーくんはそんなオミクレーくんをたしなめる。オミクレーくんは素直に「くっ」と怒りを収めちゃった。


《駄目かあ。まあ、いいや。もしダラーさんを手伝いたいと思ったら、お願いします。……ドクター、プルクラさんはあの子を戻さなくても良いと思ってる系?》


「どうだろうな。……嫌ってる風には見えなかったが……むしろ、気に入ってたんじゃねえかなあ」


《だったら、元に戻すことはダラーさんやプルクラさんに取っても良いことなんですねっ》


 俺はそう言いながら、ちらっとオミクレーくんを見やる。すると、「うっ」と呻いちゃった。


 まあ、これ以上は言わなくて良いか。


《それじゃあ、行ってきまーす》


「気をつけてな」


「頑張って。妹を止めて欲しいけど、無理はしなくて良いわよ」


《いえっさー》


 俺は二人のエールを受けながら、戦場へと駆けるのであった。

次回更新は10月16日23時の予定です。

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