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転生したら、アンデッド!  作者: 三ノ神龍司
第三幕 終わらぬ物語の行方
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第二十三章 俺のいつものやつ!

俺は軍と数十分にも及ぶ激闘を繰り広げることになった。


 はい、で、結論から言うと、負けたんですけどね。でへへ。


 豚さん達は壊滅。俺はハイマさんの攻撃は耐えたけど、ボロボロの満身創痍(まんしんそうい)だ。少なくとも内臓のほとんどは液体ミックスだ。まあ、こっそり治しておいたけどね。


(ラフレシアさん、俺達の敗因は?)


《えーっと……あっ、その前に他の階層にいる豚も壊滅したよ。逃げ出させた数匹もすぐに討伐されると思う。もうすぐ殲滅(せんめつ)されるかもね》


 壊滅って厳密には死滅とは違うらしいね。群れとして機能のいくらかを失うと全滅で、さらに悪いのが壊滅、んでもっと悪いのが殲滅らしい。


 俺の後には数匹の豚さんがいるので、かなーり緩めに言うなら壊滅だな。


《ちなみに敗因は、普通に能力差がありすぎたこと。能力の制限をしていたマスターはともかくとして、他の豚は弱すぎ》


(例えるなら?)


《えー……スポーツカーに軽自動車……いや、自転車……あー、三輪車で挑む感じ?》


(力量差、エグすぎない?)


 それはひどい。もうちょい『分裂体』を強くするべきなのかなー。まあ、切り替えていくか。とりあえずドクターに報告だ。


 呑気(のんき)に見えるけど、ハイマさん達はもう俺らを捕らえるつもりで動くらしく、抵抗しなければ無理に殺すつもりはないようだ。ので、時間はある。


(ドクタードクター、そっちどうです?)


(一階層についたが……くっせえな、おい。それに……豚の死体が多いんだが?)


(軍に壊滅させられちゃいましたー。今、俺、ハイマさんに捕まっちゃってまーす)


(マジかよー)


 俺が呑気に言うと、ドクターも呑気に返してくれる。


(で、どうすんだ? 俺の出番か? たぶん俺らの方も気付かれてるから、もたもたしてると軍と警察に挟み撃ちにされるかもしれねえ)


(いいえ、まだ大丈夫です。……やっと向こうも油断してくれたんで)


 ……特殊警察と違って軍に負けるのは分かっていたんだ。


 特殊警察は、自国内で政治犯を捕らえることに特化しており、そもそも戦闘向きではない。でも地力が高いから、普通に強かったのだ。でも俺らのような大勢で滅茶苦茶に暴れるような相手には慣れていないのだ。だから勝てた。


 対して吸血鬼の軍隊は、地上で他の軍隊と戦うことなれている。しかも少数で。その時点で、俺らが勝つのは難しかったんだ。


 ハイマさんの部隊はエリートらしいしね。


 練度が低い俺らが敵うわけがないのだ。まあ、俺らの対策なしに当たってくれればワンチャンあったかもしれないし、俺がハイマさんらを殺す覚悟で猛毒を散布すれば、勝てただろう。


 それでも本当に『ワンチャン』なんだけどね。


 だってほとんど油断してくれないんだもん。ハイマさんなんて初見で『孤苦零丁』避けちゃうしさー。


 今だって俺と数匹の豚さんには絶対に目を離さんぞ、という強い意志を感じるほどだ。


 けどー、俺にとってその集中してくれるのは大変ありがたい。


「われーらはどーなるので?」


 俺はハイマさんを見上げながら、口を開く。ちなみにさっきまで猿轡(さるぐつわ)を噛まされていたけど、もごもごでも声さえ聞くと普通に『鬼胎』の効果があるらしく、むぐむぐ鬱陶(うっとう)しいということで外して貰いました。でも叫んだり、無駄に喋ったりすると殺されるかもしれないから言葉は一応選ぶ必要がある。


 ハイマさんはと言うと、俺を見下ろしてくる。目がやや冷たーい。


「……明らかに内臓が液状化してるのになんで死なないの、これ」


 ぼそっとそう呟かれるぐらいには嫌われちゃったぜ、いえーい。


 なんとか防護服を破って汚せたからね。顔面とか所々破けて、そこにしっかり豚さんの糞便ぶっかけてやりましたよ、うへへ。


 ある意味、これは俺の勝ちー。あと、他の軍人さんも何人かは防護服の破壊が出来たよ。まあ、やっぱり臭いに関してはシャットダウン出来たのか、効果はなかったんだけどね。若干、動きは鈍ったけど力量差を埋めるほどではなかった。


「一応、捕虜として収監。研究派閥でスキルのコピーを行った後、裁判になるか……そのまま実刑」


 裁判の可能性があるのか。……豚が被告人として裁判長の前に立つのか。すごく、シュールだ。……やべえ、豚の姿で裁判に出たい欲が――! だが、耐えるんだ、アハリート、ここは逃げなければ……!


 さて、ここからどう逃げるか。まあ、逃げるだけなら普通に暴れて頭に攻撃貰って死んだふりすれば良いんだけど、それは駄目。


 あくまで俺は『生きて外に出る』必要があるのだ。


 まあ、それはバルトゥラロメウスと出会いやすくするためなんだけど、最悪、それをする必要性はない。


 けど、なんとなくやります。出来そうなので。


 んじゃあ、どうすんの、って話になるんだけど、まあ、普通に奇襲を仕掛ける。


 どうやって?


 そりゃあ、あれよ。


「ぐぅ!?」


「なっ!?」


 軍人さんらが驚いた声を上げる。……いきなり背中を噛まれたらビックリするよね。


 ほぼ全員の(うしろ)に牙の生えたワームがいます。それもたーくさん。


 ……そう、レッサーワームくんだ。本当に有り難いことに、軍人さんらは的確に頭部だけを破壊してくれていたのだ。そうしなきゃ処理が間に合わないってこともあったんだろうけど。


 それと解剖された個体にはレッサーワームくんは入れてなかったからね。知らなくても仕方ない。


 豚は頭部破壊で死んじゃったけど、おかげでレッサーワームくんは生き残れた。ただ、寄生虫だから本体が死んじゃってると生存出来る時間は長くないんだけどね。でも生きたまま解析される心配が低いってことでもある。


「!?」


 この奇襲にはさすがのハイマさんもビックリ。振り向いた先で、レッサーワームくんの牙を血の鎧を纏った腕で防いでいたけれども、本来なら見ずに反撃出来たり避けられたりするはずなのにね。さすがに混乱しちゃってたみたい。


 なので、このチャンスは逃すまい。


 俺はケツジェットで包囲網を抜け出す。


「あでぃおす!」


「くっ――」


 ハイマさんが逃げた俺に反応するけど、豚の頭部から次々に生えて襲ってくるレッサーワームくんの相手で手一杯だった。


 にゅるにゅるして、無駄に鋭い牙もあって、挙げ句に死んでいる豚の身体まで動かしてくるんだから厄介極まりない。


 あっ、ついでに一匹は俺についてこさせて、もう一匹は爆発させちゃえ。


 ちなみに火力があるタイプじゃないよ。いわゆる、うんこをぶちまけるタイプ。


 それを四苦八苦してるハイマさん+軍人さんが周りにいる中で爆発させました。


「~~~~~~~~~~~!」


 ハイマさんらの声にならない悲鳴が上がって、俺は大変満足でゲス。

日常一コマ劇場    慣れると可愛く見える、あれ





「おーよしよしよしよしよぉし!!」


《んー?》 


 俺が『とある存在』を全力が撫でながら頬ずりしていると、ラフレシアが目を覚ました微かな唸り声が聞こえてきた。


 それでも俺はやめぬ。


「んんんままままままままま!」


《なにマスター、うるさいん、だけ、ど……?》


 ラフレシアが俺の身体から、ふわりと飛び出てきて空中から見下ろす。


 そこには体外から完全に出たワームくんを抱える俺がいたことだろう。珍しく人型になっているから、ちゃんとホールド出来るから全身で可愛がっています。


 ラフレシアの表情が、困惑、恐怖――錯乱、気まずさ、なんか色々ころころと変化する。


 そして、フッと顔を逸らした。


《ごめん》


「なんで謝るん?」


《魂の中に入ってるって言っても、そうだよね、それぞれのプライバシーは尊重されるよね、そこらへん私、ちゃんと考えてなかった。……ほんとにごめんね》


 スッと腕を組むラフレシアだ。


「そう言いながら心の防壁築かんといてくれます?」


 ラフレシアとの関係はなんかこんな感じで一進一退が続いています。どうしてなんだろうね。






 俺はかくかくしかじかぺろんちょと説明する。


 俺とワームくんにやましいことはなく、なんか懐いてくれているので全力で可愛がっていただけで他意はなく、恥ずかしいことはないと。


 ……浮気とか恥ずかしいことの弁明みたいになってるんだけど、どういうことだろうか。


《いや、まあ、良いんだけど。……ていうか、『その子』、まともな意思があるんだ》


「なんでか分かんないけど、普通に懐いてくれてる」


「ぎぃ!」


 変な鳴き声を上げて返事をする。普通に俺らの言葉を理解してるっぽいんだよな。んで、基本的に友好的で、ラフレシアを見てもなんかいきなり襲いかかりそうな気配もない。


 ごっつい牙生やして、人の顔の皮剥がしそうなのにね。――そうだっ!


 俺はワームくんの顔を掴んで、牙を自身の顔面に近づける。


「その牙、俺の顔になんかこう良い感じに突き刺して、こう、びりぃって一気に剥がして!」


「ぎぃ!?」


《なんでそんな突然、グロいこと要求するの?》


 ラフレシアは呆れ、ワームくんは慌てている。なんか逃げだそうとするから、牙を掴んで俺の顔に先端を無理矢理突き刺そうとする。


「おらっ、やるんだよ! その立派な牙で俺の顔面を剥がしなあ!」


「ぎぃいいい! ぎぃいいいい!」


《やめなよ、嫌がってるじゃん!》


 俺はなんとかワームくんに牙を突き刺して貰おうとしたけど、ワームくん当人は嫌がり、ラフレシアもそんなワームくんを見て、止めにかかられてしまった。


 これには俺も止めざるを得ない。


「けっ、甘ちゃんがよぉ」


 まったく、ガッカリだよ!


《なんでマスターって時々そう意味分からなくなるかなあ。……えーっともう大丈夫だからね》


「ぎぃいい!」


 ラフレシアがワームくんを撫でると、とても嬉しそうにしていた。口と牙があるだけなのに、表情というか感情というかそういうの分かりやすいね、この子。


《…………》


 ラフレシアがなんとも言えない顔をワームくんに向けている。


「姿とか関係なく可愛いよね、ワームくんって」


《……悔しいけど、まあ、ちょっとだけね》


 なでなでするとその分、嬉しそうにするワームくんにラフレシアは若干ながら、母性を抱いてるのかもね。


 まあ、仲良くなるのは良いことだ。


《でも顔の皮剥がそうとしたり、早朝にこの子抱きかかえて頬ずりするのはやめてね。心臓に悪い》


「善処する」


 やめるとは言ってないがなあ!





次回更新は7月3日23時の予定です。

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