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転生したら、アンデッド!  作者: 三ノ神龍司
第三幕 終わらぬ物語の行方
156/293

第九章 やっぱり物理が多めになっちゃう

 さて、この魔法は実際に使えるまで時間がかかるから、殴るか。


 俺は拳を振りかぶって突撃する。


 真っ直ぐ行ってぶっ飛ばす。


 右ストレートでぶっ飛ばす。


 心を読まれても、これなら大丈夫だ。


「…………?」


 オミクレーくんがすっげえ不思議そうかつ警戒した感じで構える。見た目通りの肉弾戦タイプなのか、手に血の鎧を纏ってじゃきんと固めてある。


 おらー、食らえー。はい、すかしました。『霧化』を使われるまでもなく、普通に身を反らされて回避されちゃったよ。


 心を読まれなくても、読みやすい軌道なら簡単に回避できるのは当たり前だね。この場合、超スピードでいかなきゃそりゃそうなるか。


「殴んぞ」


 んで、オミクレーくんはそう宣言して、俺以上に速く拳を振りかぶり、胸部に向かって叩きつけてきた。


 俺は腕をクロスしてなんとかガードするけど……ごしゃばきぃ、と鈍い音を出しながら、踏ん張りもきかずに吹っ飛んじゃったよ。わー、すごい、力も強いなあ。


 ゴロゴロ転がり、少々目を回しつつも、勢いが落ちると同時にすぐさま立ち上がる。追撃を覚悟してたんだけど、オミクレーくんは腕を組んでいて動かない。


「手加減してやったんだからな。棄権しろ。……あと、やっぱり『霧化』も『血器錬成』も使えねえのかよ」


《いぇあ》


 吸血鬼として振る舞っていますが、そういうスキルは使えないので使えないとはっきり明言しておく。ゾンビから吸血鬼になった人ってここにはほぼいないらしいし、どういうスキル構成になるかも判然としないから正直に言っても問題ないはず。


 種族として本来持つべきスキルを持っていないってことはたまにだが、あるらしいからね。


「そんな状態じゃ、もう戦えねえだろ」


 そんな状態?


(両腕ぐしゃぐしゃにへし折れて、変色してるだけだけど?)


《そうなったら『普通』は戦うのは無理じゃないかなあ》


(俺にとってこれは日常茶飯事、普通のことなので。……再生しちゃうぞ)


 ぎゅるんと俺は見せつけるように両腕をほぼ一瞬にして再生させる。欠損でなければ、それほどエネルギーは使わないから、体積はそれほど減っていない。


「なっ――」


 オミクレーくんが驚く。意外も意外って感じ。……吸血鬼は肉体再生の力を手に入れられにくいのかな。


 んで、薄暗闇の中、エコロケしつつダラーさんとハイマさんの反応を見てみると……少々、顔が強張ってるね。昔からいる勢からしても回復能力を持つ吸血鬼はやっぱり特殊な感じになるかな。


 ううむ、プルクラに報告行くかなあ。そうでなくても、他のギャラリーもいるし、噂は多少流れるかもね。


《まだ、いける》


「舐めてたわ。……魔法じゃねえな。再生スキルか。なら限界迎えるくらい、潰すぞ。……で、訊くが何があれば再生する」


 ……これって戦闘中、なんか食って再生する心配じゃなくて、終わった後の心配かな? 口利けなった場合に備えてとか。くくくっ、舐めおって、――気を遣われてわだすは嬉しいぞいっ!


《食べ物なら、なんでも。飼料も、いける。味分かんない、から、ほぼなんでもいい》


「オーケー安上がりで助かる。倒したらすぐ届けるわ」


 オミクレーくんが楽しそうに笑う。おっと、嬉しいことにちゃんと『敵』として認定してくれたようだ。今さっきまではそれ以下の雑魚程度にしか思われてなかったようだからね。


 ということでさっきより比較的遠慮がなくなるであろうオミクレーくんに俺は……変わらず突撃をかます。


 格闘技は多少(かじ)ったことあるけど、修練は積んだことはないからね。なので俺のスタイルは全力でぶん殴る喧嘩師スタイル! 当たればとりあえずダメージはいんだろ。『霧化』使われて避けまくられそうだけど、まだ準備が整ってないんですわ。


 大きく腰を横に捻って、思い切り拳も横に振り抜く。狙うは脇腹。


 けど、後に下がるようにして回避される。安易に『霧化』は使わんみたいだな。さっきの魔法で警戒してる感じか。ある意味あれもあれで牽制にはなってるみたいだな。


 上手いことやれば当たりそう。フェリスの回避並の絶望感はないんだよな。なんというか、あの回避されると、あっ、これ絶対当たんねえって分かるんだよね。実際何度やっても体勢すら崩れんし。


 オミクレーくんの回避はその感覚はない。タイミングをずらして一歩大きく踏み込んだりすればいける。


 んで、そういうことする前に、スッと素早く前に来たオミクレーくんに横っ面を殴られてしまう。片足だけ後にやって、身を反らして回避したと同時に戻ってパンチしたのかな? 最適化された行動ってこういうのを言うんだろうね。


 肌は裂けるけど、分厚くしてるので大したダメージはなく、血も出ない。


 多少視界がブレたけど、頑張って耐えて服を掴んで、さっきと同じ脇腹パンチをする。今度はクリーンヒットしてオミクレーくんが吹っ飛ぶ。――でもすぐ立ち上がる。ダメージはそんなにないかな。


 てか、耳に届いてきたんだけど、ぶみょって感じの水音が聞こえてきたんだ。たぶん脇腹に血のクッションを展開させたんだと思う。衝撃、吸収されちゃったみたい。


 でも、ノーダメージではなさそう。筋肉のミシミシ音は聞こえたから、一瞬で作った血のクッションにそれほどの厚さはなかったはず。


「力は、ほんと、つええな」


 ちょっと顔を歪めて痛そうにしている。痣出来るレベルのダメージは入ったかな?


 仮に触手で殴ってもあんま効かないかなあ。殺すなら、毒で良いけど、倒すならほんとよく考えないと難しそうだ。逃げながら殺さず、かつ即座に殴り倒すのはやっぱり至難の業だな。


 それとオミクレーくんは頭を狙ってきたから、一般的な吸血鬼には頭部の攻撃は有効なんだろう。


 ただ、不意をつかないといけないかも。吸血鬼って、基本的に血を全身の至る所からだせるようだから。肌を傷つけなくても、なんか、じわぁって漏れ出るみたいだな。


 ラフレシアいわく、


《血液中の赤血球は形を変えられるらしいし、白血球には遊走っていう能力があって自在に身体の中を駆け巡ることが出来るっぽいよ。それに吸血鬼は太陽の光を浴びたらダメージを受ける程度には細胞の結びつきが弱いらしいんだよね》


 だから血を染み出せるみたいなこと言ってた。よく分かんないけどすごいね。


 んで、そうこうしているうちにとりあえず魔法の準備は整った。


(普通に使って大丈夫かな)


《『作った物』を一気に使うのはやめた方がいいかも。インターバル必要なのはバレやすいから、やれるなら小出し気味が良いかもね》


(小出しかあ)


 出来るかな。


 俺は一度、オミクレーくんから距離を取り、両手を合わせる。


《《分かたれし者達、陰陽なるまま混ざり合え。我が多く望みしは陰なるもの》――《泡沫(うたかた)よ、混ざり合う陰陽を包み、進め。我が指先には月の(えにし)を繋ぐ》》


 こんな感じか。


 俺の目の前に、ぷくーっと俺の顔の大きさくらいのシャボン玉が現れ、それが比較的速く真正面にいるオミクレーくんに飛んで行く。


「!?」


 よく分かんないものをよくわかんない感じに飛ばされ、オミクレーくんは横に跳ぶように避け――身を低くしながら俺に突っ込んできた。なんかされる前に近づいてラッシュでも仕掛けようとしてるのかな。


 んじゃ、点火しよう。俺は指先を特殊な石に変化させて、指パッチンする。


 するとその瞬間、火花が散り、ほぼ同時に真っ赤な炎が空中で燃え上がり、シャボン玉に向かって行く。


「な――、は!?」


 オミクレーくんが驚く。着いた端から消えるものの、中々迫力があるからね。


 そんな導火線っぽいの、火、何かを蓄えられたシャボン玉、――その答えは?


「爆発だ!」


 正解。ちなみに答えたのはウーくんです。


「ちっ」


 どれくらいの威力があるか分からない以上、オミクレーくんは回避することを選んだようだ。横っ跳びして、薄くながら全身に血を(まと)っていた。


 すぐさまシャボン玉に着火し、薄い皮膜が割れて、爆発を起こす。ぼんっ、と思ったよりデカい爆発が起こってビックリした。つっても、高い火柱が起こるとか爆風で吹っ飛ぶとかのレベルではない。


 でも間近でやられたら、即死はせずとも『霧化』は解けるだろうし、怪我はするだろう。まあ、俺は直で受けても大丈夫だから、今度から至近距離でやるけども。


 ちなみに今のは水を電気分解して発生した水素と酸素の燃焼です。魔法を触媒(しょくばい)(使い方あってる?)にして、分解を促進し腕に作った空洞に溜めていたのだ。


 実際の物質を使ったわけだから抵抗(レジスト)されて打ち消されることはない。これがある意味で正しい魔法の活用らしい。特に遠くに射出する場合とかだと、有用っぽいね。


 そんなことを考えつつも、俺はオミクレーくんが回避行動を移したと同時に突撃していた。体勢を崩して片膝ついているところに下から掬い上げるような拳を胸部に向かって叩きつける。


「くっ――ぐふっ!」


 オミクレーくんがさっきの俺みたいに腕をクロスにして、かつ腕に纏っていた鎧を針状にする。結構トゲトゲしてるから本来なら殴るのは躊躇(ちゅうちょ)するところだろうけど、生憎俺は痛みに疎い上に高度な回復能力を有するのだ。


 つまり気にせず殴った。


 (とげ)が俺の腕を――ついでにもう一本オミクレーくんの片腕から細い針が俺の心臓を――貫いた。……ううむ、残念ながら棘の強度が中々にあって、直接身体にぶち当てることが出来なかった。


 でも、良い感じに空中に巻き上げることが出来て、次いで良い感じに空中にいるオミクレーくんをぶん殴れた。でも、やっぱり直撃は血の鎧で防がれる。『霧化』使われてないけど、防御性能が糞高いな、吸血鬼って。


 俺はオミクレーくんに急いで駆け寄り、仰向けになっているところを馬乗りになり左手を顔に添え、右手を振りかぶった。


 オミクレーくんが身体を強張らせて若干、纏う血をざわつかせたけど、すぐに落ち着いて血を消してくれた。


「俺の負けだ」


 おー、ギブアップしてくれたー。


 俺がバッとギャラリー見上げると、ハイマさんが口角を若干上げていた。そんで俺と目が合うと口を開く。


「勝者、フラクシッド!」


 いえー、勝ちました。

次回更新は4月3日23時の予定です。



※日常一コマ劇場

『武器は実用性かロマンか』


(みてみてラフレシアー。じゃーん)


 アハリートが珍しく人間の姿をしていた。そんな彼が身の丈ほどもある大きな鎌を抱えている。


《……えー、なにー…………なに、そのでっかいカマ》


 魂の中で眠っていたラフレシアがひょっこりと彼の頭から生え、大きな鎌を見つけて言う。あまりにも大きすぎて頭の上からでは全体像を拝めず、一度離れてから見るがやはり訝しげな顔になり、今口にした言葉と同じ気持ちを再度抱いた。


(俺って今、グリム・リーパー(死神)じゃん? だから、大きな鎌は必須だなっ、って。なので頑張って作りました!)


 表情筋がほぼ死んでいるはずのに、にっこにこだ。


《……。…………えーっと……》


 ラフレシアは昔から今に至るまで、この手の人間は実はかなり相手にしている。最古はリディアであるが、その時はよく分からない性質だった。……もっとも今に至るまでよく分からないままなのだが。でも、その独特な言動を『格好良い』と思っているのは最低限分かっている。


 だから、理解は示して出来うる限り好きにはさせようとはするものの……さすがに命に関わる事柄を無視してそのままには出来ない。ただ、頭ごなしに否定してはいけない。そもそも武器として使うわけではないのかもしれないのだから。


《あー……それ、どうするの?》


(どうって使うよ? 身体に仕込んでくー)


 武器として使う気、満々だった。イカレている。だが、ここで使うな、と言うのはいけない。そう言って言うことを聞いた人間は数えるほどしか知らない。


《……んーと、私が思うに変えた方が良いと思うところがあるんだよね》


(えーなにー。教えて教えてー)


 ラフレシアはとりあえずアハリートに指示を出し、武器として使えるように変えてもらうことにした。


~~~数十分後~~~


《うん、良い感じ!》


 ラフレシアは満足気に頷く。


 アハリートの手には草刈り鎌のように(というよりそのもの)、縮んだ鎌が握られていた。柄の先端には鎖がついており、さらにその先には小さな分銅のようなものが吊り下がっていた。いわゆる鎖鎌だ。


 《これなら扱いやすいし、応用が利くと思うんだよね。確かこれって『日本』の武器なんだよね。マスターに合ってると思うよ》


 「――がう」


 アハリートが呟いた。


 《え?》


 「ごれ違う!」


 《!》


 アハリートが珍しく声を出した――それも怒鳴ったことにラフレシアは驚いてしまう。アハリートは『鬼胎』の効果が間違っても周囲に及ばないようにするため、絶対に声を出すことをしなかったのだ。それが今いきなり叫んだのだから、ラフレシアも効果が及ばずとも固まってしまう。


 「ごれ鎖鎌! おでが作っだの、デズザイズ!」


 《……えー……同じ鎌でしょ? そっちの方、使いやすいよ?》


 「ぢーがーう!!」


 アハリートが手に持っていた鎖鎌を床に叩きつけた。鎖鎌が、牢の石床にぶつかり、がしゃんと大きな音を立てる。


 ――ラフレシアは『中二病』についてよく分からないままだったが、曲がりなりにも善意しかなかった。それなのにこのような態度を取られてしまっては……、


 《何で投げるの!!》


 さすがにキレた。


 床に投げ付けられた鎖鎌の元まで飛んで行き、状態を確認する。試作品として骨で作られていたため、重さはそれほどなく折れたりはしていない。だが、刃こぼれてしてしまっていた。


 《あーあー刃こぼれしちゃってるじゃん! どうすんの、これ!》


 「おでが作っだの! 最初っがら、ぞれ!」


 《自分が作ったからって壊して良いことにはならないでしょ!》


 「ぞれおでんじゃないもん! ラフレシアが変えだんでしょ! 勝手に!」


 《勝手にって何! よかれと思ってやったんでしょ! あの鎌、どう考えても使いにくいんだから! 命かけるんだからちゃんとしなさい!》


 「うるざーい!!」


 もはやオカンに怒られる駄々っ子である。しかもこの駄々っ子、力があるから厄介なことこの上ない。今、ただ声を出すだけで、この牢獄全体は恐怖の渦に巻き込まれている。囚人や看守達はその怒鳴り声に強制的に言い知れぬ恐怖を抱いて震えているのであった。


 そんな傍迷惑な喧嘩は延々と続き、慌てた看守が応援を呼びつけ、結果的にアンサムやリディアが出張ってようやく収束するのであった。


 二人は一応仲直りはしたものの、これ以来、武器についての話題は避けるようになったという。



――――――――

後書き

 良い落ちもなく短いため、このスペースにぶち込むことにしました。アハリートがかなり見苦しいですね。中二病のリディアと何気に現実的なアンサムが介入してーで話を膨らますことが出来るかもしれません。もしかしたら第二幕の後日譚にぶち込めるかも。ないと思いますが。むしろこの章のバランスが悪くなる場合は文章の廃棄場辺りに移す可能性の方が高いかもですね。

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