プロローグ
俺はある日、突然死んだ。
けれど特別なことがあったわけじゃない。ただの事故だ。
そもそも俺はそんな特別なことが起こるような人生を送っていない。
俺の人生はただただ普通の一言だった。
学校を小中高と卒業し、まあ、特に理由もなかったため専門にも大学にも行かず適当なところに就職。低賃金だが、別に生活できないわけではなく、そもそも出不精なため、むしろ貯金はそれなりにあったのだ。
いわゆる軽度の引きこもりだ。だが、それなりに友達はいるし、ぼちぼち楽しく生きてはいた。恋人は積極的に探そうとはしなかったからいなかったけど。
そんな普通を生きていた。
けど、普通に生きていたからって、普通に死ねることがないわけで。
死はいつでもどこでもやってくる。
で、それはやってきた。
欲しい漫画の本があって、けど近所の小さな本屋には売ってないマイナーな奴だったのだ。だからそれを買うために、ちょっくら遠出をしたのだ。
免許はあれど業務上特に必要なかったため、車はもってなかった。なので電車を乗り継ぎ、バスにて移動。
ちなみにそこはすでに都会のど真ん中のため、カーブを曲がりきれず崖から転落や大型トラックと正面衝突、なんてこともなかっただろう。
……実際のところ、死んだ詳しい原因は分からない。
普通にバスに乗って、運良く座席をゲットできたから、悠々としていたのだが、ものすごい衝撃と共に一瞬にしてお陀仏になってしまったのだ。
ただ、予想としては高層ビルの建築付近を走行だったこと。一瞬ではあるが、天井が迫ってきたように感じたことから、鉄筋でも降ってきたんじゃないかと思っている。
実際の所、原因なんて、もうどうでもいいのだが。
なんであれ、俺はこの世界で目を覚ますことはなくなったのだから。
で、俺が次に目覚めたのは、真っ暗な――墓の中だった。




