⑧クロスケ〇
今回は、猫好きな、いえ生き物好きな方には不快に感じる表現が入ってます。
あらかじめお詫びいたします。
見つけた、あの小さな穴、あそこにはいれれば!
無我夢中でやっと見つけた小さな穴に飛び込んだ。
ハァ!、ハァ!、ハァ!
『油断した、ちょっとした冒険のつもりで出かけただけなのに』
あらい息を吐きながら身を潜める。
少し離れたところで、「どこに隠れやがった」と声がきこえる。
周りに味方はいない。
ここも安全な所とは言えないだろう。
今日は良い天気だった、ひなたでのんびりするのに良さそうだった。
そんな天気の下、俺はいつものコースをやめて、
新しい寝床に良さそうな場所を見つけようと、
ちょっとした冒険心を持ってしまった。
草むらに入り込みトンネルになった隙間をウロウロしていた。
途中、虫とかを猫の本能で追いかけて狩を楽しんでいた。
しばらく楽しんでいると周りの空気が変わっていた。
しまった、縄張りを出てしまったか!
慌てて来た道を戻る。
路が塞がれていた。
まだ30分もたってないのに?
他の路は?
わからない!
他に路を探すが見当たらない。
誘導されているかもしれない、かえって離れてるみたいだ。
どうしよう、焦りばかりが生まれる。
なんとか知ってる場所を見つけないと。
しかし行く先々で障害物が置かれている。
そして、とうとう
網を持った人間に出逢ってしまった。
物陰から顔を出すと目が合った。
俺は、そーっとバックして物陰に戻り、ダッシュする。
後ろで声がする。
「いたぞ」
そっちに行った!例の黒猫だ!」
「向こうは塞いでる」
「路地に追い込め」
「傷つけるなよ、金にならなくなるぞl
少なくとも5人はいる。
隠れる場所が少ない。
しかも直ぐに見つかる。
だんだん追い詰められていく。
もうあそこに戻れないのか。
俺は、今朝の自分の判断を後悔する。
いつもの場所で寝ていれば良かった。
優しい人達から食べ物を貰えた。
あんなに安全な場所を何で俺は出てしまったんだ。
後悔はやっぱり後悔なんだ。
俺は必死に逃げる。
諦めかけた時にそこが見えた。
路地の空いた狭い穴。
そこに俺は飛び込んだ
入る所は見られていないはず。
じっとして耳をすまして物音を聴く。
この隙間、先は行き止まりだった。
おれはじっと我慢して様子を伺う。
周囲は静かだ、ここにいるのは気づかれていない。
どれぐらい経っただろう。
もう大丈夫だろうか?
ゆっくり後ずさりして穴から出る。
真っ暗だ。
夜になっていたのかな。
持ち上げられた?
「やーっと、出来やがった」
「今までで1番手こずらせてくれたなコイツ」
「まさか自分からあそこを離れるなんて思わなかったぜ」
「あそこの中だと手が出せなかったからなぁ」
しまった、罠だった!
追い詰めて、追い詰めて最後に罠。
箱から出された先は檻の中だった。
とある倉庫の中、周りにはいくつかの檻。
そこには同じように捕まった猫が何匹もいる。
少し離れた所で男たちは酒を飲んでいた。
今日の成功を祝ってる。
一人の酔った男が近づいて来て俺をみる。
「ヨウ、黒猫ぉ、お前は見栄えが良いから、Aコースだろうなぁ、稼がせてくれよぉ」
次の檻を見ると、「お前良くてBかな、下手するとCだぞ頑張れよ。
更に、お前は下手に逃げやがって、怪我してるからDだ!割りに合わねーな!
猫たちを品定めしている。
何の意味か分からないが、嫌な使われ方だ。
翌日、リーダーらしき人間が顔を見せた。
「ほう、靴下付きの黒猫か人気商品になりそうだな」
「えぇ、先日見かけて目をつけてたんです」
「然も首輪付き、もとは飼い猫か」
「あそこにいたんじゃ手を出せなかったんですが、敷地から出て来た所を偶々見かけまして」
「おい、クロネコ!愛想よくしねぇとお前でもDコースだぞ」
「おい!猫にAだのDだの言ってもわかるわけねーだろう」
「そうだな、わからねぇだろうが教えてやるぜ、
Aは貴族さまの家に高く売れる。俺たちにとってもアメイジングのAだ。
Bはそこそこの値段で売れるブラボーのB。
Cは覚悟しろよ、薬品の研究材料、実験動物、でケミカルのC。
Dは誰にとっても外れ、売れなかった奴、直ぐに殺して肥料になるデス(死)のDだ」
「まあ人間さまの言葉なんてわからねぇだろうがな」
『あいにくだが、俺は言葉が分かるんだよ』
こうなったら絶対あの場所に帰るんだ。
「取り敢えずこの国じゃ売りさばくのは無理だから、行き先は外国だがな」
「しかし、あの国じゃ生き物なら何でも食うらしいな」
「まぁ、あの国ならクロネコの値段次第だな」
「上手くいけばあれ1匹で元が取れるぞ」
とそんな会話を連中がしている所へ。
「動くな!こちらは動物保護局だ!」
何か紙を開いてみせて
「動物の違法捕獲と密売容疑で捜索する。
尚、周囲は騎士隊が包囲しているので無駄な抵抗はするな!」
何とか助かったみたいで俺たちは保護された。
保護された所で、猫好きの係りの人達が俺に話しかける。
「あなたの行き先はカヴァデール様の所になるそうだよ」
『俺はそんな所より元の場所に戻してくれ』
「お手柄だぞクロネコちゃん、お前が付けてる首輪には、最近開発された発信機が付けてあったんだ」
「お前になら目を付けるだろうなって、対策してたんだ」
「魔術院技術局のノースランド局長の提案で開発された新型魔道具の試作第一号だぞ」
「これが実用化されたら誘拐事件も早く解決する様になるでしょうね」
「あぁ、定期的に信号を出して位置を教えてくれる。なんて便利なんだ」
「なんでもあの局長、最終的には地図表示させるつもりらしいぜ」
「あれだろ、お嬢さんがもし誘拐されたらって心配して作らせてるって噂になってるし」
「いや、心配するのも当然って美少女らしいぞ」
「今回はテストとはいえ借り出せてよかったよなぁ」
「アイツら居場所を転々として中々摘発まではいかなかったからな」
「今回は王立公園の中にいた保護猫を不法に密漁していた証拠にもなるし大成功!」
こうして俺は《カヴァデール“公爵家”》に引き取られた
そこには沢山の仲間がいた。
この後俺はこのお屋敷でクロスケと呼ばれるようになる。
今回の正式タイトルはクロスケ(ゼロ)になります。
よくあるエピソード0って奴ですね。
エイミちゃんは覚醒前なのでスラリ美少女時代です。
皆さん、カミラ夫人の公爵家が[カヴァデール]って覚えてました?
すいません私は忘れてました。でこの落ちからストーリーが浮かびました。
で読み返してたら、ついつい全部読んでしまいますね。
クロスケは元々いたのは王立の公園で、国が管理して保安の為騎士も駐在しています。
そこでクロスケは猫好きの方にエサを貰ってました。
密猟者らしき人間がいる情報から、クロスケに発信ビーコン付きの首輪を付けて監視対象になっていました。
ABCDのコースは密猟者の仲間内の隠語とした適当に付けましたが。
不快感を与えてしまいましたら重ねてお詫びします。