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7話 デートの前に

8/13 ⋯⋯に修正

 ユバシリさんと2人きりになったところで即興の作戦だ、すぐに見つかる。

今のうちに感覚だけでも伝えなければ。


「ごめん、さっきはデリカシーないこと言ったけどイメージでいいんだ。本当はもっといい方法があるのかもしれないけど、俺が教えられるのはこれしかないんだよ」


「ありがとう⋯⋯。そのやり方であんなすごい魔法が出せるんだから正しいんですよきっと」


 騙しているようで罪悪感が込み上げてくる。

嘘ではないけど嘘に近い。


「好きな人⋯⋯でしたよね。わたしにはまだ恋というのがわかりませんが、なんとなく⋯⋯なんとなくすぐにでもわかる日がくるんじゃないかって、そんな気がします」


「そうか、ユバシリさんならきっといい人が見つかるよ。」


 姉さん大好きの俺から見ても、ユバシリさんは可愛いと思うし謙虚で控えめそうなところは男ウケするだろう。


「あの、せっかくリリちゃんから逃げてきといて聞くのもなんですけど、アサギリくんは慕っている異性がいるんですか⋯⋯?」


 ユバシリさんもやっぱり女の子なんだな。そういう話は興味あるってことか。

あんまり人に言いふらすタイプにも見えないし⋯⋯。


「⋯⋯うん、実はそうなんだ。」


「そう⋯⋯ですか」


 若干表情が曇りがちになっている。好きな異性がいないと火魔法は扱えないと思い込んでしまったか?

仕方ない、フォローを入れるか。


「えっと、俺はずっと姉さんと2人で暮らしてきたからさ、姉のことはすごく尊敬してるし、そういう意味でってことだから、ユバシリさんもイメージするときは家族とかでもいいんだよ。」


「お姉さん⋯⋯ですか? すいませんわたし何か勘違いしてたみたいでっ」


 あたふたしているが勘違いではないんだよユバシリさん、実はそれが正解だ。

なんて言えないけど。


「じゃあ特別に誰かを異性として好き、とかじゃないってことですよね?」


「あ〜、う、うん、そう。」


 ユバシリさんが微笑んだ。

よかった、適当なコツ教えといてそれを真に受けて、火魔法を扱うことを諦めさせてしまうところだった。

あまり安請け合いするもんじゃないな、こういうことは。



「おーーーーーーい!」


 遠くから俺たちを呼び掛けながら近寄ってくるのはリリアさんとレイナードさんだ。

もう気は済んだのだろうか。

そして俺たちは合流した。


「いきなりいなくなったんだもん、びっくりしたよ〜」


「あなた、まさか転移魔法も使えるの? この若さでおかしいわよ。本当に違法行為じゃないでしょうね」


 レイナードさんもなかなかしつこいな。

彼女にわからせるにはどうしたらいいんだろう。


「そもそも違法行為ってなに?」


「まさか知らないの? 最近ニュースにもよくなってるんだけど。一時的に魔力を増幅する薬物があるのよ。使用者の身体に非常に負担がかかるから使用は禁じられているの」


「そんな危ない薬を自己紹介やここで使うと思う?」


「それは⋯⋯」


「もし使ってたとしたら身体に異常が出てるよね、禁止されるぐらいなんだから。なんだったら今身体検査してもいいよ」


「⋯⋯わかったわ。私が悪かったわよ」


 んん?なんかゾクゾクする。


「スゥは素直じゃないなぁ。最初からわかってた癖に」


「あなたは黙ってて」


 リリアさんはまた睨まれている。

この2人、けっこう仲がいいんじゃないか?

レイナードさんも本気で俺のことを疑ってたわけじゃないみたいだし一件落着ってとこか。


「ちがーーう!いい雰囲気で終了みたいな空気だけど私まだなにも教わってないよ〜」


 リリアさんが泣きついてくる。


「元はと言えばあなたが話を脱線させたんでしょ?自業自得じゃない」


「うえ〜んスゥが厳しい〜。サユもなんとか言ってよ〜⋯⋯、あ!サユがなんか嬉しそうなんだけど!さては自分だけこっそり教わったな!」


「え?なんでもないよー?」


「いっつもそんなテンションじゃないじゃん!」


 俺からすればユバシリさんの表情もテンションも変わらない気がするが。

2人の間だけで通じるものがあるのだろう。





 さて、今日の授業はここまでかな。

なにも教えてないけど上手くコミュニケーションは取れた。

しかも女子3人って俺にしてみればかなり頑張ったほうだ。

ここに姉さんも居れば良かったんだけどな。

あ、そうだ。せっかく女子と仲良くなれたし、次の休みのデートについてアドバイスを貰うとしよう。



「俺からも聞きたいことがあるんだけど」


「ん?なぁに?なんでも聞いてくれたまへ!」


「君たちが男性とデートに行ったと仮定して、こうされると嬉しいとか、ポイント高くなることってなにかあるかな」


「え! アサギリくんデートするの!? やるぅ〜」


 その発言にユバシリさんがショックを受けているように見えたが⋯⋯。


「そんな機会があればね、ほら、せっかく女子と仲良くなれてそういう話もしたしついでに聞いてみようかなって」


「ふむふむ、気配りができる男はモテるぞ〜。私たちが教えてしんぜよう!」


 リリアさんの性格は姉さんとは似ていない。ユバシリさんと足して2で割ったのが姉さんと近いか。

なんにせよ女の子の心理というものはチート能力でもわからない難易度というイメージがある。

この辺で学んでおくのがベストだろう。



「そうだなー。私だったらさりげない優しさにときめいちゃうね!例えば⋯⋯デート中って女の子はトイレ行きにくいと思うからちょうどよさそうなとこで男の子が行きたくなくても『ちょっとトイレ』って言って行きやすい環境作るとかね!」


 なるほど、便意の把握が重要⋯⋯と。


「女の子は察してほしい生き物だからね。相手の様子を観察して、デートのために気合入れてきたオシャレを褒めるのもいいかもよ!」


 髪切った?って聞くやつ、あれはそういう効果があるのか⋯⋯?

これはマーカーチェックだ。


「ありがとう。リリアさんはデートとか慣れてそうだよね」


「うーん。残念ながら友達として遊んだりはするけどそういう相手っていないんだよねぇ。あぁ、私も恋がしたい⋯⋯!」


 それは意外だ。モテそうだけどな。


「じゃあ次、スゥは?」


「はぁ?なんで私まで言わなきゃならないのよ」


「さっきまで難癖つけて無理矢理アサギリくんのこと疑ってた癖に〜」


「わ、わかったわよ! 言えばいいんでしょ!」


 扱いなれてるな。レイナードさんは負けず嫌いで煽りに弱いってこともメモしておこう。

そして、皆の視線がレイナードさんに注がれる。

確かにこれは気になることだろう。


「こほん、わ、私だったら⋯⋯手を繋ぐときに指を絡めたり、頭をポンポンされたり⋯⋯とかかな」


 聞いていた全員がぽかーんとしている。

あまりにもイメージに似つかわしくない発想が飛び出してきたからだ。


「スゥってけっこう可愛いんだね」


「う、うるさい!例えばの話だから!」


「じゃあ次!サユね」


「ちょっと!さっきのは私の本意じゃないから!」


 顔を真っ赤にして弁明するレイナードさんはそのまま放置されることになった。


「わたしは⋯⋯好きな人だったらなにされても嬉しいんじゃないかな⋯⋯。全部含めて好きになったんだと思うので⋯⋯」


 それは非常によくわかる。

俺は姉さんに叱られても喜んでる節があるからな。

相手の存在そのものを好いているから一挙一動全て好きなんだ。


「でも付き合う前のデートでしょ?それって通用するのかな」


「ある程度好きな相手じゃないとデートしないと思うけど⋯⋯」


「確かに! 一理ある!」


 姉さんはあえて俺を誘ってくれた。嫌われてはいない。

むしろ好かれているほうではあると思うけど、俺の好意とはジャンルが違う好意だろう。

そこに食い違いがあれば、俺が気持ちを伝えたところで気まずくなるどころか、優しい姉さんは俺の事を考えて離れていってしまうだろう。


俺はどうすればいいのかわからない⋯⋯。



「ん〜? なんか不安そうな顔してるね。大丈夫だって! アサギリくんはデリカシーないけど親切だし優しいし、顔も悪くないよ!」


 褒められた、ということでいいんだよな。

まぁくよくよしてもしょうがない。

逆に考えれば好きな女性が家族ってことはそれすなわち結婚したと同義なのでは?

あ、そう考えるとお得感が出てきたぞ。


「アサギリくん、あなた表情がころころ変わって気持ち悪いけど大丈夫?」


 俺は姉さんのこととなると顔に出やすいんだな。


「うん、大丈夫。ありがとう3人とも」




 そうだ。俺は姉さんが喜んでくれればそれでいいんだ。

俺はこの世界で、姉さんを護っていくと誓ったんだから。

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