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6話 炎上ハート

8/13 ⋯⋯に修正

「唸れ⋯⋯ハイスコア!!」

寝起きと同時に姉さんがつけてくれた能力名を叫び、発動する。オートで発動はしているが、せっかくつけてもらった名前だし使わないと。

するとそこへ姉さんが駆け寄ってきた。


「恥ずかしいからそれはなしって言ったじゃないですかー!!」


 狙い通り、俺は最高の朝を迎えることができた。





 姉さんとのデートの約束を取り付けた俺の気分は有頂天。止まることを知らない。

だがしかし、デートというものを一度もしたことがないどころか、友人と遊んだことすらない俺に姉さんを喜ばせることができるのか?

デートと言うからには男がリードするべきだよな⋯⋯?

想像の範疇でしかないが。


「おっはよー! アサギリくん!」


 不意打ちで肩を叩かれ、ビクンと跳ねてしまった。

なんだリリアさんか。


「おはようリリアさん」


「そんなリリアさんだなんてかしこまらなくていいよ! 親しみを込めて『リリアちゃん』とかでいいよっ」


 会って2日目でちゃん付けは難易度が高すぎる。

それにしても朝から元気だな。

彼女はクラスのムードメーカーなのだろう。


「リリちゃん、アサギリくん困ってるよ⋯⋯」


「え、うそ! ごめんねー!」


 リリアさんの後ろには小柄で控えめな女性がいた。

クラスが同じ子だったか、まだ覚えてないな⋯⋯。


「あー、えっと、その、おはよう」


「あっ、私同じクラスのサユキ・ユバシリです⋯⋯。」


「あぁごめん、ユバシリさん。まだ全員覚えてなくって」


「まだ2日目だしねー! そのうち覚えるって!」


 ハイテンションなリリアさんとは対照的に、大人しく静かなユバシリさん。この2人は友達なのだろうか。

前世ではあまり見ないパターンだな。



「ねーねーアサギリくん、次の学校休みの日って暇かな?私たちに魔法教えてもらいたいんだよねぇ。うちら2人はあんまり上手くできてなくてさー」


「リリちゃん!わたしはそんなじゃ⋯⋯!」


「え?いっつも私と下位争いじゃん」


「あぁうあう⋯⋯」


 成績不良をバラされたのが恥ずかしかったのか、ユバシリさんは下を向いてしまった。

彼女は勉強はできそうなイメージだけど実技はそれほどでもないタイプだろうか。

手伝ってやりたいのは山々だが、生憎、その日は姉さんとのデートがあるんでな。


「ごめん、悪いけどその日は予定があってね。また今度でいいかな」


「え〜、なになに何があんの〜?」


「リリちゃん、アサギリくんは引っ越してきたばかりなんだから忙しいんだよ」


 いいフォローだユバシリさん。

そう、俺は忙しいのだ。クラスメイトとの時間も大切にしたいが、それよりも優先する事が俺にはある。


「じゃあ今日の放課後は?ちょっとだけならいいかな?」


ふむ、本来なら一刻も早く帰って姉さんに会いたいところだが拒否し続けるというのも印象が悪い。


「それなら大丈夫。放課後、グラウンドに集合しようか」


「やったー! ありがとアサギリくん!」


 俺の手を握ってぴょんぴょん跳ねるリリアさん。

彼女は異性相手でも平気でスキンシップを図れるんだな。

異性慣れしていないから照れ臭い。

姉さん以外の女性でドキドキしてしまったが浮気にはならんよな⋯⋯。

そもそも付き合ってはいないが。







放課後


 グラウンドに集まったのは4人。

俺、リリアさん、ユバシリさん。もう1人、なぜかスゥさんがきている。


「あれ?スゥさんも俺に教えてもらいに?」


「気安く名前で呼ばないで。あとあなたに教えてもらうことなんてないわ。あなたが不正行為をしていないか確かめにきただけ。2人を巻き込んだら困るからね」


 すごい剣幕だ。なんで俺こんなに嫌われてるんだろう。

姉さん以外に嫌われてもなんとも思わないからいいんだけど。


「ごめんね!アサギリくん。私らが話してたの聞いたらしくてどうしても連れてけって⋯⋯。スゥは負けず嫌いなんだよ」


「⋯⋯」


 リリアさんを鋭い目で睨んでる。

ひょっとして図星か?一番優等生だった自分の上をいく奴が転入してきてその視察といったところか。

俺は勝ち負けどっちでもいいんだけど、あまり刺激しないように派手な真似は避けるか。


「いいよいいよ、俺もずっと誤解されてるままじゃ困るしね。レイナードさんの気の済むまで見てってよ」


「⋯⋯アサギリくんは大人ですね」


「え?なにが?」


「いえ⋯⋯」


 ユバシリさんは俺のなにを見たんだろう。

家に帰れば姉さんに甘えることしか考えてないし、むしろ子供なんだよなぁ。

さて、とりあえず授業を始めるか。


「2人の苦手なとこ教えてもらっていい?」


「全部!!」


「リ、リリちゃん!⋯⋯わたしはその、ユキノメ族なので氷魔法はそれなりなんですけど火を使った魔法が苦手で⋯⋯」


 ユキノメ族か。肌が白いのは血筋なのかな。

記憶を辿ると、雪の深い地方に住んでいる部族らしいな。


「火魔法か⋯⋯火魔法のコツは⋯⋯」


 ん、コツってなんだろう。よく考えてみたら俺はチート能力があるおかげで適当に魔法を使ってるんだった。

申し訳ないけど自分が魔法を使うときの感覚を伝えるか⋯⋯。


「そうだな、なんかこう、気持ちを盛り上げるみたいな?熱く燃えたぎる心の底から魔力を振り絞るように」


「熱い⋯⋯気持ちですか?」


「えー! アサギリくんそんな熱血キャラじゃないじゃん! クールぶってるだけ!?」


 クールぶってるように見えてるのか俺は。

断じてそんなつもりはない。

色で表すとけっこうピンクだと思う。


「いや、俺は常に情熱をたぎらせているよ」

姉さんへのな。


「熱い気持ちと言われましても⋯⋯どうしたらいいか」


 急に熱くなれよ!!って言われても難しいか。

となると俺自身のことを当てはめてみるか。


「ユバシリさんは好きな人とかいないか?その人のことを考えてやってみるといい」


「すっ!?」


 ユバシリさんの白い肌がほんのり薄ピンクに染まっていく。

あぁ、失言だったかな。下手すればセクハラか。


「アサギリくんも直球でいくねー! てことはてことはさ!アサギリくんは好きな人がいるってこと?彼女はいないって言ってたよね!」


 この流れ⋯⋯。これは⋯⋯「恋バナ」!

迂闊だった。リリアさんのような女子が色恋トークに食いつかないわけがない!

本心を話せば転入2日目にして変態扱いされ白い目で見られ、それが姉さんにも伝わり破局!

なんとしてでも誤魔化す!


「いやいや、イメージのしやすさを考えたらこの手の話がいいかなってね。そんなことよりほら! 火魔法の練習を!」


 手のひらから爆炎を放ち、矛先を逸らす。

おぉー、と感心するリリアさんとユバシリさん。

よし、切り返しは成功した。


「その恋の炎は誰を想ってあげたの!?」


 目が爛々と輝いている。

ダメだ、もはや頭がそっちの方向へ切り替わっている。

やむを得ん、こうなったら最終手段だ。


「ス⋯⋯、レイナードさん!俺とどっちが上手く火魔法を操れるか勝負しましょう!」


「はぁ?」


 後ろで1人静観を決め込んでいるレイナードさんを巻き込み、全てを有耶無耶にする作戦だ。


「君も好きな男の1人や2人はいるだろ!俺と君でどっちが熱い想いを魔法に乗せられるか競争するんだ!」


「は!?そんなのいるわけ⋯⋯」


「またまた〜〜〜。スゥちゃんも気になる人ぐらいいるんじゃないの〜?」


「じ、冗談じゃない! そんなのいるわけないでしょ!?」


 大成功。リリアさんをレイナードさんに擦りつけることによって俺とユバシリさんはフリー。

この隙に2人で少し離れた場所へテレポートする。

俺はおもむろにユバシリさんの手を掴み、今いる場所の反対方向へとテレポートした。



 一瞬の出来事でなにがなにやらわからない様子のユバシリさん。

こういうのはタイミングが重要だからね。

強引な手段を取らせてもらった。


「あ、あの! 手を⋯⋯」


 うっかり、移動するために掴んだ手を握りしめたままだった。

さっきより顔を赤らめている。

おっとこれは失礼。


「あ、ごめんごめん。いやーリリアさんの勢いはすごいね」


 閑話休題お茶を濁す。


「アサギリくん、時空転移魔法も使えるんですか⋯⋯?どうしてあなたみたいな人がこの学校に⋯⋯」


 特に事情はないんだ。

たまたま転生した先がここだっただけのこと。

それは言わないけれども。


「俺の師匠は達人だったからね。教え方が上手かったんだよ、うん」


「⋯⋯わたしも、その達人の弟子に教わればもっと魔法が使えるようになれますか?」


「もちろん。俺はいつでも応援するよ」


「⋯⋯」


 ユバシリさん、まだ顔が赤いな。

セクハラで訴えられないといいけど。

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