5、準備と修行
俺達は城を出たあと、城下町で必要な物を買うために歩いている。
「これからどうするの?」
「まずは食料と生活用品、武具関係と情報を手に入れるために本がいる」
「武器とかは城で手に入れたヤツ使えばいいじゃない」
「お前なぁ、城で手に入れたヤツを装備してたら歩く金蔓だろうが!最低限、戦えるようになっとかないと俺達より強い奴らに狙われたら終わりだぞ」
「そんなに警戒しなくても大丈夫だと思うけど」
確かに周りは活気のあるお店の人達が客の呼び込みをしたり、獣人やエルフみたいな人達が剣や鎧を着込み歩いている、多分冒険者だろう、平和そうな感じだ。
「ここは日本じゃない、警戒し過ぎが丁度いいくらいだ、とにかく行くぞ」
「どこに向かってるの?場所は分かってるのよね?」
「あっ!」
そういえば場所を知らない、歩いていればそのうち見つかるだろうと考えて歩いて1時間ちょい(多分)かかって見つからないのが現状だ、俺はそ~と目をそらす。
千影にじと~っとした目で見られながら通りがかる人に場所を教えてもらった。
「すみません~、少し場所を聞きたいのですが~いいですか?」
「えっ!はい、大丈夫ですよ」
俺が話しかけたのはダークエルフのお姉さんだ、胸も大きくスタイルもいい、弓を背負っているから冒険者かな?ひとつ言っておくが美人だから話しかけたわけじゃないぞ。
「武器屋だったらここから右に曲がって真っ直ぐ進んでいるとあるわ、そこの武器屋は鎧や服も扱っているから便利だし腕もいいわよ、その隣は道具屋でポーションとか地図、冒険で役に立つ物が売っているわよ、本屋は中央広場の近くに少し大きな建物があるでしょ、本のマークが入った看板があるからすぐに分かると思うわ」
「助かりました、ありがとうございます♪」
「困った時はお互い様だし、じゃあね」
ウインクして去っていった。
「なかなか親切な人だった」
「別人みたいなしゃべり方だったわね」
「処世術の一つだよ、言葉使いだけで第一印象がかなり変わるし、相手の対応も変わる、場所が分かったからさっさと行くぞ」
俺達は武器屋に入った。
店の中は剣と鎧、服が分かりやすく並べられている。
「目の前に剣や鎧が並んでいるのを見ると異世界に来たんだっていう感じがするな」
「それは私も思ったわ」
「いらっしゃい」
話しているとお店の奥からおばさんが来た。
「何か探しているのかい」
「一般的な冒険者の服が欲しい」
「それならこれだね」
おばさんは男性用と女性用の皮の服を何着か出してくれた。
「それを下さい」
「銅貨28枚だよ」
俺はポケットから出すふりをしてアイテムボックスから金貨1枚取り出し渡した。
アイテムボックスがどんな扱いか分からないからな。
「ちょっと待ってね、銀貨99枚に銅貨72枚のお釣だよ」
俺達はお釣を受け取り、店を出た。
隣の道具屋で野宿道具やポーションを買った後、続けて本屋へ向かう。
本屋の中は本が無造作に並べてある本と大切に保管された本があった。
入り口の近くのカウンターみたいな所にじいさんが座っている。
何故か見たことがない文字で書かれているのに分かる、召喚された影響かな?。
「何の本を買うの?」
「ステータスについてや歴史、冒険の基本が書かれた本が欲しい」
「なるほど、私も探すわ」
二人で手分けして探して結構沢山、本が集まった。
「結構大変だったね」
「あっちこっち適当に並べ過ぎだろ」
買うためにカウンターに持っていった。
「全部で金16枚と銀貨8枚じゃ」
「少し聞きたいんだが、じいさんの後ろにある本は何なんだ?」
「魔導書じゃが」
「それも欲しい、どんなのがある?」
「魔法の基本について書かれた本や生活魔法を使えるようになる魔導書があるぞい」
「それも追加してくれ」
「全部で金貨31枚と銀貨8枚じゃ」
俺は金貨を32枚渡し、銀貨2枚のお釣を受け取り本屋を出る。
「買い物終わったけど、次は?」
「宿屋に行く」
「今日は色々あって疲れたね」
「確かに疲れたな」
「宿屋の場所を少し聞いてくる」
俺は通りすがりの女性に宿屋の場所を聞き、宿屋に向かった。
(男なら男に聞くよりやっぱ女性に聞くだろ)
「いらっしゃいませ、お二人ですか?」
中学生ぐらいの可愛い女の子がやって来た。
「2人です」
「部屋はどうします?」
「2へっ」
「1部屋でっ!!!」
千影が俺の言葉にかぶせ気味に言った。
「分かりました、食事はどうします?」
「俺は今から食べたいけど千影はどうする?」
「私も今から食べるわ」
「宿泊費と食事代、込みで銅貨21枚になります」
先払いらしいのでお金を払う。
「ではあちらのテーブルで少し待ってて下さい」
俺達はテーブルに向かい、改めて宿屋の中を見渡す。
この宿屋は二階に部屋があって一階が酒場になっている、家族で経営してるみたいだ。
「お待たせしました♪」
持ってきた料理はパンとシチューとステーキだ。
美味しそうだが俺は米が食べたい。
「美味しそうだね」
「そうだな」
「じゃあごゆっくり」
そう言うと呼んでいる客の所に向かった。
パンにホワイトシチューを染み込ませ食べたらけっこう美味しい、ステーキは肉汁が滴り柔らかく凄く美味しかった!
食べ終わったあと俺達は部屋に向かった。
部屋について千影を見ると顔が少し赤い。
「顔が赤いけど大丈夫か?」
「だっ大丈夫よ」
「ステータスを見せてくれ、出来る事の確認とこれからの事を話そう」
「えっうん、分かったわ、はいっ」
目の前に千影のステータスが出る。
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高梨 千影 Lv.1
ジョブ《影使い》
HP=2240
MP=3000
STR=800
VIT=670
AGL=500
INT=1000
RST=800
LUK=80
固有スキルーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【影魔法 Lv.1】
アクティブスキルーーーーーーーーーーーーーーーー
パッシブスキルーーーーーーーーーーーーーーーーー
【気配遮断】
称号ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【薄幸の美女】【影を操る者】
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まさか俺よりステータスが上なんて………………
俺は防御力ですら女に劣っているのか………………
まぁいい、影魔法を調べてみるか。
鑑定眼で影魔法を見る。
【影魔法】
魔力を消費することによって影を操ることが出来る。
Lv.1【影渡り】【影縫い】
【影渡り】
20m以内の影に瞬時に移動出来る、スキルのレベルによって移動出来る距離が広がる。
【影縫い】
Lv.20以内の敵の影に何かを突き刺すことによって動きを止める、スキルのレベルによって止められる相手のLvが上がる。
※絶対ではないため自分のINTより相手のRSTが高い場合は効かない可能性がある。
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「なかなかいいスキルだな」
「そうなの?」
俺のステータスと千影のスキルについて教えてやった。
俺のステータスは少し前に確認したからスキルについて調べよう。
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ジョブ《超越者》
成長の限界がなく無限の可能性がある、全てのスキルや魔法も覚える事が出来る、その強さは神さえ越えるだろう。
今まで誰もそのジョブになれた奴はいない。
【潜在能力∞】
全ての属性に適正があり成長の限界をなくす、全てスキルや魔法を覚える事が出来る、状態異常無効。
【超越成長】
レベルアップ時ステータスが倍加する、獲得経験値10倍、倒した相手から全てを奪える。
【超越記憶】
一度見ただけで全て完全に記憶する事ができ記憶したものを完全再現できる、スキルをコピーする事もできる。
【鑑定眼】
見たものの全てを見通す、鑑定のスキルの上位版
【メニュー】
アイテムストレージがあり無限に収納出来る、マップ機能があり、初めて通る場所はすぐにマッピングされ地図をスキャンしたらマップで確認する事が出来る。喚装システムがあり、あらかじめ装備の組み合わせを設定する事で瞬時に装備を装着する事が出来る。
【自然治癒】
HPが減っている状態の時、自動でHPが回復していく、スキルレベルによって回復量が増える。
【魔力回復】
MPが減っている状態の時、魔力が自動で回復していく、スキルレベルによって回復量が増える。
【無詠唱】
魔法の詠唱を唱えずに魔法を使う事が出来る。
【魔力掌握】
魔力を自由自在に操る事が出来、魔法の効果を少ない魔力で絶大に強化出来る。※相手の魔法すら操る事も出来る。
【空間掌握】
空間魔法を自由自在に操る事が出来、空間魔法を使う時、魔力を消費しない。
【完全遮断】
気配と魔力を完全に隠蔽出来る、相手が気付く事は絶対にない。
【空間魔法】
空間を魔法で操る、スキルのレベルによって操れる空間の数、規模が強化される。
【身体強化(魔)】
魔力によって身体能力を10%強化出来る、スキルのレベルによって強化の強さが上がる。
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滅茶苦茶チートじゃん!もしかして勇者より強くね!
千影にはまだ教えずにおこう。
ベッドで俺は無意識に寝転びながら足をバタバタしていた。
隣では千影がキョトンとした目で俺を見ていた。
俺を見るんじゃない、………………恥ずかしい。
「深夜にも子供っぽい所があるんだね」
千影はクスッと少し笑っている。
「とにかく明日の予定を話すぞ」
「うん」
「明日はこの街をでて近くの森で野宿しながら修行する」
「マジでっ!」
「マジだ!」
「私の読んでた小説ではみんな冒険者になるためギルドに行ってたんだけど、お金も一生遊べる位あるのに何で外で野宿するの?」
「千影も小説読んでるのか、俺も読んでいるんだが、読んでて俺はある結論に達した、現実は残酷だとな、お前はこの世界を甘く見てないか?」
千影はゴクリと喉を鳴らす。
「まず始めにギルドで絡まれたら勝てるか?大体お前の体目当てで絡まれる可能性は高いぞ、お前綺麗だし」
綺麗だしと言ったら千影は顔を赤らめている、コイツちゃんと分かっているのか?
「絡んできた奴がもし俺達より強ければお前は散々弄ばれて最悪殺されるかもな」
「そんなこ」
「そんな事ないとは言わさせない!、この世界は命が軽いんだ、お前は人を殺せるか?俺達は凄いスキルや魔法があるが戦いは素人だ、強くならないと………死ぬぞ…」
「確かに甘く考えていたわ」
千影は青ざめた顔をしている。
「明日から1ヶ月位はスキルや魔法を使いこなす修行だからな、スキルや魔法に使われているうちダメだ」
「分かったわ」
「じゃあ、そろそろ寝るか」
「うん」
俺が寝る体勢に入ると千影はがっかりした感じでベッドの中に入る。
次の日の朝、朝食を食べて、俺達は宿屋を出た。
「また来て下さいね♪」
この宿の娘さんが可愛いくウインクしながら言ってきた。
勘違いするお客がいそうだ。
「身分を証明する物ないけどどうするの?」
「お前もう忘れたのか?城でやってただろ」
「そういえば、あの方法があった」
この街の入り口は門が二つ離れた所にある、その内の一つに俺達は空間魔法で気配を消して素通りする。
そして目指すは迷いの森!まぁ近いんだけどね。