飛ばし屋リューと飛ばされ屋シュー
森の中は起伏が少なく平坦であった。
この試験のためにある程度人の手、いや魔法が加えられているのかもしれない。
「在校生がいるとすれば森の奥に潜んでるだろうな?飯島。」
「そうだと思うよ。まぐれでも一回魔法もらったらオワリだからね。」
-デイビットと飯島の推理はほぼ当たっていた。 この入試試験の在校生の戦法の定石であった。
一部の異端児を除いて。
-まったく、錬金術が苦手で単位がとれたなかったばっかりに、こんな目にあうことになるとは一年前はこれっぽっちも思わなかった。
「このへんでいいかなぁ、シュー?」
相棒のシューが俺を振りかえって言った。
「ああ。文句なし!最前線だ。派手に暴れようや、リュー。」
新一年陣営側から200m。周りは一年だらけだ。
『在校生がこんなところにいるぞ!』
目の前に現れた大男の新一年生が大声で叫んだ
あちこちから動揺したような声が聞こえてくる。
「はっはっは!ごくろうさん。これで皆集まってきてくれるな!」
シューが大男の虚をつき、一瞬で懐に潜り込んだ
「っ!!はやい!!」
「ご褒美のリバーブローだ。飛べ!!」
大男の脇腹に拳を打ち込んだ。
シューは魔法が苦手だ。触れたものにしか魔法が使えない。
魔法使いとして致命的な欠点。単位はとれないし、実践でも非常に不利。だがプロボクサー並のボクシングの実力をもつ
シューにはその欠点を補うスピードがある。
「俺からも不合格をプレゼントだ、また来年会おうな!飛べ!」
大男がシューの魔法でぶっとんでる間に、俺はぶっ飛ばし魔法をさらに3発ぶちこんだ。
「うああああぁ…!!」
通常の一発分の数倍のスピードで大男はぶっとんでいった。魔法は重ねれば倍でなく2乗ほど効果があがっていくという。
「在校生!ここにいる!」
その声と同時に四人の新一年生が魔法を放った。魔法が四方から弾丸のようにシューを襲う。
「同じ魔法でも、素人じゃやっぱりとろすぎるなぁ!」
シューは巧みに4発の魔法をかわした
「あ…あ…当たらない…」
シューは何発もの魔法をかわし、ときに拳で打ち消しながら
最も近くの新一年に近づき殴り飛ばした。
「どこが落ちこぼれだよ!かなわねぇ。」
残りの三人の生徒は逃げ出そうとしてバラバラに散ろうとしたが、リューの魔法は、曲がりくねりすべての生徒をふっとばした。
俺とシューはこんなぎりぎりの試験でも、授業よりも何倍も楽しんでいた。
異端児と言われても、模擬戦闘では俺たちはいつも優等生だったのだ。
「授業にでて単位とるより楽でいいかもな。」
冗談でいって、シューと二人で笑ったが
次の瞬間俺たちは意味ありげな顔を浮かべて、笑うのをやめて黙った。