五十嵐との二者面談
私なりの表現で、読者の皆様を楽しませてみたいと思い投稿することにしました。ファンタジーを選んだのは、現実とは違うもうひとつの世界を楽しむのに最適だと思ったからです。
本の世界に入り込むのは楽しいですよね。どうか楽しい世界をかけていけたらと思います。
俺は、その日の放課後、進路指導室にくるように、担任に呼び出されていた。
高校3年の、受験シーズン真っ只中の現在、両親の離婚により、九州から東京に引っ越し転校してきた俺のことをなにかと気遣ってくれる熱血先生だ。
生徒からは、その若さと親しみやすさから、五十嵐と名字で呼ばれ慕われている。
進路指導室に入ると五十嵐が椅子に座っていて
「飯島、座ってくれ。」と言った。
長いテーブルを挟んで、五十嵐と向かい合うようパイプ椅子に腰かけた。
「飯島、お前、進路についてはどう考えているんだ?
前の学校にいたときの成績からみても、目標があるようには見えないし。」
五十嵐の言う通り、俺には行きたい大学や、勉強したいことがあるわけじゃない。
皆が必死こいて勉強する中、俺は漫画を読んだり、ゲーセンに行ったりしている。
行ける大学に行ければいいと考えていた。
選ばなきゃ、俺でも行けるところくらいあった。
「正直どこでもいいんです。適当な大学行って、適当に就職できれば。」
五十嵐は、そんなところかと思ったよ。
と言いながら、長机の上に置いていた、大きめの茶封筒から
なにやら紙と写真を一枚ずつ取り出した。
そして、急に真剣な顔をして言った
「飯島、この世に魔法はあると思うか?」
俺は思わず目を見開いた。
魔法、何かの比喩で言っているのだろうか、と考えていると
「この写真を見てくれ。」
と五十嵐が写真を見せてきた。
俺と同じくらいの歳の男と女が写っていて
男は手のひらの上で燃えている炎を見つめ、女は両腕を前につきだし、水をすくうような形に丸めた手から、あきらかに、手の容量以上の水が溢れていた。
「これは、映画とか、何かですか。」
俺はいちいち区切るようにしてなんとか喋った。
まるで五十嵐の意図がわからない…。
五十嵐は顎の下で両手を組んで言った。
「いいか、飯島。魔法はある。ずっと昔から研究されている。しかし、それを知るのはごく一部の人間だけだ。お前も今、そのうちの一人になった。」
そんなことが、あるのか。
俺は、UFOだとか、UMAだとか、あほらしいとは思わない。
でも、絶対あるだろ!とも思っていない。ただ、あると信じた方が楽しいと思ってる。でもまさか!そんな類いのもの
目の前に突きつけられると、すぐには信じられないものだった。
「見せたら、信じるか?少しは。」
五十嵐はそう言って、部屋の隅の観葉植物の植木の前まで行った。五十嵐が植物に触れるとめきめきと植物が成長した。
「どうだ、少しは現実的に思えてきただろう。」
俺は呆然と植木を見つめていた。
五十嵐の腰ほどの高さだった植物は、いまや天井すれすれまで成長した。
「まじかよ…でもなんで俺にこんなことを見せるんですか!いったい…!」
五十嵐は、今度は植木をもとの大きさに戻して言った。
「進路だよ。こういうことを学ぶ学校が日本にはあるんだ。」
五十嵐はまた俺の正面に腰掛け、続けていった。
「俺もその学校で卒業した。その学校は、卒業生もしくは教員の紹介でしか、受験資格が得られない。」
五十嵐は、写真と同封されていた紙を、俺に渡した。
「入試志願書だ。サインして郵送すれば、受験日と時間、場所など詳細を書いた手紙を送ってくる。」
「ただし、郵送するのは俺だ。お前には、受けるか否か、今ここで決断してもらう。」
なんてことだ。ファンタジーの世界みたいな話がここにある。
本当に魔法を使えるようになるとして、それは凄くいいし、
愉快だ 。それはいいが、その後は…?
「就職は、どうなんですか?」
五十嵐は俺の顔をみて、ぷっと吹き出したかと思うとゲラゲラ笑った。そして笑い混じりで言った
「大丈夫だ、就職率は100%だよ。凄いんだ、この学校は。
そんなことは心配しなくていい。」
「ただ、中退するもの、再起不能になるものもすごく多い。
ぬるくねーんだ。この学校は。」
そして、五十嵐は俺に学校のことをいろいろ話した。
ざっとまとめると、
就職はよく、卒業さえすれば、大体どんな職業にもつける。
二年制で、留年、退学あり。
無人島にあり、入学後はそこで二年間生活する必要がある。
入試内容は不明で対策のしようがない。
ひとしきり話して五十嵐は最後にこう言った。
「で、受けるも受けないもお前次第なんだけど、受けないなら
ここでの話や見たことは全部忘れてもらう。魔法でな。」
俺はすごいチャンスを手に入れたと思った。
ただ適当に生きていければいいと思っていた人生。
こんなチャンスはもう二度と巡っては来ないだろう。
当然俺は受けることにした。
返事を聞いた五十嵐はにっこり笑っていた。
「才能があるんだ、お前。転校してきたときすぐわかった。」
「頑張れよ。」
俺は、学校をあとにして、五十嵐の言葉を思い出しながら、いつもの帰り道を違う風景を見るような気持ちで歩いた。