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ふんじょしっ!  作者: 真木あーと
第一章  この後輩の女の子は、ふんどしをはいてますよ。
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第一章第二節

 そんなことがあってから数日が過ぎた。

 俺はやっとあの出来事を現実的な光景として捉える事はなくなった。

 なんか、そういう夢を見たと思う事にし、実際あれは夢なんじゃないかと思えてきた。

 このことは友達にも話してはいなかった。

 冷静に考えて、信じてもらえないと思ったからだ。

 いやさ、中庭を歩いてたら女の子が下着丸見えで逆さ吊りになってて、しかもその下着がふんどしだった、なんて言っても俺の頭が疑われるだけだろう。

 そんなわけで、あれを夢と思い込むことにして、ここ何日かはふんどしを思い出すこともなくなり、今まで通り平穏な日々を過ごしていた。

 そんなある日の事だ。


 カカッ


「わっ!」

 登校中、俺が下駄箱から上履きを取り出していると、俺のそばに手裏剣? 苦無(クナイ)ってやつが突き刺さった。

「……何だ、これ?」

 俺はそれが飛んで来た先を見ると、誰かが走って逃げていくのが分かった。

 追いかけても今からじゃ追いつけないだろう。

 とりあえず俺は、突き刺さった、苦無を抜いてみる。

 そこには紙が結びついているのに気付いた。

 俺は紙を解き、開いてみる。

 そこには冒頭にこう書かれていた。


 四谷景冶(けいじ)殿


 四谷景冶は俺の名前だ。

 つまり、さっきの奴は俺の知り合いって事か?


 お慕い申しております。

 二人にてお話がしたく存じます。

 本日、三時半、中庭側の校舎裏に来られたし。


 うーん……。

 やったら堅い文章だが、文字は女の子が書いたような、丸っこい可愛い文字だった。

 何これ? 新手のラブレター? もしくはその悪戯(いたずら)

 まあ、本物にしても引っかかるにしても暇つぶしにはなるだろう。

 三時半ってのは、俺にとっては遅いけどな、今日の時間割だと二時半には授業が終わるからな。

 つまり、同じクラスの奴の悪戯じゃないって事か?

 いや、一時間前の授業終ってるのに、俺がここでじっと待ってるところもにやにや笑って見てるのかもな。

 まあいい、俺はその手紙をカバンに入れて、教室へ向かった。


「はよーっす」

「やあ景冶、おはよう」

 俺がクラスに挨拶をすると、友達の推古(すいこ)が挨拶を返す。

 とりあえず、こいつの悪戯って線が一番高いな。

 こいつはアナクロ学生みたいな喋り方だが、死ぬほど悪戯好きだからな。

「なあ、推古、お前、俺にラブレター出しただろ?」

 俺は単刀直入に聞いてみた。

 俺もこいつとは付き合いが長い、こいつの反応で悪戯か初めて知ったかくらいは分かる。

「ラブレターか、いつかは出したいと思っているけど、今のところ予定はないね」

 推古が肩を(すく)めて言う。

 あー、これは知らない時の顔だな。

「じゃいいや。変なこと聞いて悪かったな」

 俺が自分の机に向かおうとする。

「ちょっと待ちたまえよ。なんだか面白そうな話に僕を通さないなんてありえないだろ?」

 推古がぐい、と俺の腕に腕を絡ませ、艶やかな表情で見上げる。

「な……だから、そういうのやめろ! 本当に何でもないから!」

 俺は推古の腕を振り払って、席に向かう。

「面白そうなことは僕に言うって約束したじゃないか~……」

 推古がぶつぶつと拗ねながら文句を言っている。

 ちなみにそんな約束をした覚えはない。

 俺はそのまま推古を無視して席に着いた。

 ちなみに推古ってのは百地(ももち)推古って奴で、俺の友達だ。

 あんな喋り方だがれっきとした女の子で、しかもそこそこの長身だ。

 身体はスレンダーで、出るところは出てないが、引っ込むところは引っ込んでる、すらりとした感じの奴だ。

 髪はショートボブにしていて、胸があと十センチあれば、モデルとしてもやっていけそうだが、そういう目立つタイプの奴ではない。

 ただ、暇を持て余していて、どんなことにでも首を突っ込んでくるから面倒で仕方がない。

 人懐っこく、ボディータッチをガンガンしてくる奴で、俺はそこがちょっと苦手ではあるが、こいつにその苦手を知られて以来、俺に対しては毎日のように身体をすり寄せてくる。

 それが、困る。

 俺はこいつを親友と思っていて、だから男女の隔てなく付き合いたいと思っている。

 だが、こう身体を密着されては、こいつが女であることをどうしても意識してしまう。

 それが困るんだよ。

 いや、こいつは確かに女性的な魅力はあると思うよ、見た目も美人だし表情も多いから可愛いし、胸はないけど、スレンダーなボディラインは魅力的だし。

 だけどそれ以上に人間的な魅力がある。

 俺は後者のこいつと仲良くして行きたいんだよ。

 こいつが男だとしても同じように付き合いたいと思ってるんだよ。

 そうなると、こいつの女性的魅力ってのは、邪魔っていうか、いや、邪魔じゃないんだが、ご遠慮願いたいというか、俺はそれを望んでないというか。

 もちろんこいつの女としての魅力はかなりのもので、認めざるをえないレベルだが、見た目とか、身体とか、そういう意味での女の魅力ってのは残念ながら一生モノじゃない。

 だが、俺はこいつと一生付き合って行きたい。

 確かに、密着されれば嫌でも女を感じるし、それで悪い気がしないのも事実だが、俺はそれを喜んでいるとこいつに思われるのが嫌なんだよな。

 俺がお前に魅力を感じてるのはそこじゃないって言いたいんだよ。

 推古はまだ、ぶつぶつと言ってる。

 だが俺はわざわざ戻ってフォローする気もない。

 どうせ次の休み時間には何事もなかったように振る舞っているだろうからな。

 さて、それよりもラブレターをどうするか。

 そもそも、これは本当にラブレターなのか?

 もしかして果たし状なのかもしれない。

 あれ? どんな文面だったっけ。

 今出すと、物凄い勢いで推古が走って来そうなので出すのを控えているため、詳しい文面を見返すわけにもいかない。

 うーん、ラブレターか果たし状か、もしくはどちらでもなく、何か相談なのか。

 いやでも、お慕いしてるみたいなこと書いてあったし、やっぱりラブレターか?

 とりあえず、行ってみるしかないのか。

 俺はなんとなくそう決断して、一限目の教科書を出した。

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