氷の覇王の関係
ディーナが2人の剣撃に見惚れていた時だった。
「何をなされているんですか!!」
そんな怒鳴り声が聞こえた。三人同時に声の方に視線をやればそこにはマルドアがいた。
「おお。マル坊か。おはよー」
「執務室におられず、寝室にもおられず心配しましたよ陛下!」
「おーい。俺は無視かー?」
ギドは華麗にスルーされ一応アピールはする。
「何か急ぎか?」
「いえ。陛下が暴漢に襲われているのではと思っただけでして」
「お前まで暴漢扱いかよー」
ギドは頬を膨らませる。そんなギドを王とマルドアが蔑んだ目で見た後、マルドアはディーナの様子に気付いた。裸足で、よく見ればところどころ傷もある。そして、羽織っているのは王の上着。下は履いて・・・?
まさか・・・っ
「貴様・・・っ」
マルドアは懐から出したナイフでギドに斬りかかる。ギドは難無く受け止めおお!と笑う。
「成長したなー。マル坊」
「黙れ!子供に手を出すとは何事だ!!」
ん?
皆の頭に疑問符が浮かぶ。
「貴様のことはつくづく最低な男だとは思っていたが・・・っここまでの外道だったとは!!」
「ちょ、ちょっと待てマル坊。何か勘違い・・・「問答無用!!」
マルドアは刃を切り返し、ギドに斬りかかる。ギドはそれを避け、マルドアの喉笛に刃を突きつけた。
「話聞けってマル坊。オメー頭に血ぃ登ると止まんなくなるクセ変わんねぇな」
「くっ・・・」
ディーナにはギドの動きが速すぎて見えず。凄い・・・っと目を輝かせていた。王はそれが気に入らずムスッとする。
「俺はあの嬢ちゃんにゃ指一本触ってねえよ。いや・・・手のひらでポンと触ったか「触ってるんじゃないか!!」
「性的には触ってねえって「貴様・・・っ」
マルドアは怒りでブルブルと震えている。
「マルドア。本当にそいつはディーナには何もしていない」
王の言葉でマルドアはへ?と目を丸くする。
「ディーナは俺がそいつと手合わせをしていたところ、俺が暴漢に襲われていると思い飛び出してきただけだ」
「結局全員俺の事暴漢扱いな訳ねー」
別にいいけどーとギドがはぶてながら呟く中、段々とマルドアの顔が赤くなっていく。
「あ・・・」
「あ?」
「穴があったら入りたい・・・っ」
真っ赤になってその場に崩れ落ちるマルドアにディーナが叫んだ。
「だ、大丈夫です!私も同じ気持ちになりました!「何のフォローにもなってないぞ!!」
ディーナはどうにか話題を変えようとハッとしたように言う。
「そ、そういえばギドさんとお2人は仲がいいんですね『良くない』
マルドアと王の声が見事に被り、ディーナはえっと・・・と言葉に詰まる。
「仲いいだろうが『良くない』
冷てぇ・・・とギドはいじける。
「で、でも、ギドさん陛下とマルドアさんをあだ名で呼ばれてますよね?」
「まあな。俺はラディがちっちぇ時からいるし、マル坊が来たのはまだまだ餓鬼の時だったからな。心境的には叔父さんか?」
「こんなだらしない血族はいらん」
「右に同じく」
2人が冷てぇよ嬢ちゃーんとディーナに抱きつこうとしたギドは王とマルドアにすかさず殴られた。
頬を擦りながらギドがあ、そう言えばと口を開く。
「ラディ。オメー嬢ちゃんに助けようとしてくれた礼言ってねえだろ」
「え・・・」
「ほんとお前はそーいうの駄目だよなー。あそこは叱るんじゃなくてまず先に『助けようとしてくれてありがとう』って感謝してからだろうが」
「貴様に言われると何故こんなにも屈辱的なんだ・・・っ「理不尽!」
王はクルリとディーナに向き直る。
「だが、確かに言うべきだったな。ありがとう」
真っ直ぐ見つめられ、言われ慣れない言葉にディーナはカッと顔を真っ赤にさせた。
「い、いえ!あの!私が勘違いしただけで!え、えと・・・その・・・」
熱とパニックで頭が回らない。不意にギュっと抱き締められた。
「ありがとう・・・」
耳元で響いた艶のある低音にディーナは更に赤くなり、何も考えられなくなった。
「ディーナ!?」
ディーナの様子を見てギドがあーあと口を開く。
「気絶してんなこりゃ」
「す、すぐに医者を!!」
「は、はい!」
慌てる王とマルドアをギドは待て!と止める。
「あんまし騒ぐな。皆寝てんだし。嬢ちゃんの気絶もヤバイもんじゃねえ」
「何故そう言える!「原因がオメーだからだよ」
王は疑問符を浮かべていた。
あ、説明すんのめんどくせ・・・とギドはため息をつき、頭を掻く。
「とりあえず部屋に寝かせてやれ。手と足に擦り傷あるから呼びたいなら医者も呼べばいい。ただし、もうちょい太陽が昇ってからな」
王とマルドアは冷静なギドの言葉に小さく唸る。
「「屈辱・・・っ」」
「だから何でだよ!」
俺一応お前らより結構年上だかんなー!と叫ぶギドの言葉など聞こえず2人はディーナを運び寝室に向かった。