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覇王様の子守唄  作者: 日明
11/29

氷の覇王の関係

 ディーナが2人の剣撃に見惚れていた時だった。


「何をなされているんですか!!」


 そんな怒鳴り声が聞こえた。三人同時に声の方に視線をやればそこにはマルドアがいた。


「おお。マル坊か。おはよー」

「執務室におられず、寝室にもおられず心配しましたよ陛下!」

「おーい。俺は無視かー?」


 ギドは華麗にスルーされ一応アピールはする。


「何か急ぎか?」

「いえ。陛下が暴漢に襲われているのではと思っただけでして」

「お前まで暴漢扱いかよー」


 ギドは頬を膨らませる。そんなギドを王とマルドアが蔑んだ目で見た後、マルドアはディーナの様子に気付いた。裸足で、よく見ればところどころ傷もある。そして、羽織っているのは王の上着。下は履いて・・・?


 まさか・・・っ


「貴様・・・っ」


 マルドアは懐から出したナイフでギドに斬りかかる。ギドは難無く受け止めおお!と笑う。


「成長したなー。マル坊」

「黙れ!子供に手を出すとは何事だ!!」


 ん?


 皆の頭に疑問符が浮かぶ。


「貴様のことはつくづく最低な男だとは思っていたが・・・っここまでの外道だったとは!!」

「ちょ、ちょっと待てマル坊。何か勘違い・・・「問答無用!!」


 マルドアは刃を切り返し、ギドに斬りかかる。ギドはそれを避け、マルドアの喉笛に刃を突きつけた。


「話聞けってマル坊。オメー頭に血ぃ登ると止まんなくなるクセ変わんねぇな」

「くっ・・・」


 ディーナにはギドの動きが速すぎて見えず。凄い・・・っと目を輝かせていた。王はそれが気に入らずムスッとする。


「俺はあの嬢ちゃんにゃ指一本触ってねえよ。いや・・・手のひらでポンと触ったか「触ってるんじゃないか!!」

「性的には触ってねえって「貴様・・・っ」


 マルドアは怒りでブルブルと震えている。


「マルドア。本当にそいつはディーナには何もしていない」


 王の言葉でマルドアはへ?と目を丸くする。


「ディーナは俺がそいつと手合わせをしていたところ、俺が暴漢に襲われていると思い飛び出してきただけだ」

「結局全員俺の事暴漢扱いな訳ねー」


 別にいいけどーとギドがはぶてながら呟く中、段々とマルドアの顔が赤くなっていく。


「あ・・・」

「あ?」

「穴があったら入りたい・・・っ」


 真っ赤になってその場に崩れ落ちるマルドアにディーナが叫んだ。


「だ、大丈夫です!私も同じ気持ちになりました!「何のフォローにもなってないぞ!!」


 ディーナはどうにか話題を変えようとハッとしたように言う。


「そ、そういえばギドさんとお2人は仲がいいんですね『良くない』


 マルドアと王の声が見事に被り、ディーナはえっと・・・と言葉に詰まる。


「仲いいだろうが『良くない』


 冷てぇ・・・とギドはいじける。


「で、でも、ギドさん陛下とマルドアさんをあだ名で呼ばれてますよね?」

「まあな。俺はラディがちっちぇ時からいるし、マル坊が来たのはまだまだ餓鬼の時だったからな。心境的には叔父さんか?」

「こんなだらしない血族はいらん」

「右に同じく」


 2人が冷てぇよ嬢ちゃーんとディーナに抱きつこうとしたギドは王とマルドアにすかさず殴られた。


 頬を擦りながらギドがあ、そう言えばと口を開く。


「ラディ。オメー嬢ちゃんに助けようとしてくれた礼言ってねえだろ」

「え・・・」

「ほんとお前はそーいうの駄目だよなー。あそこは叱るんじゃなくてまず先に『助けようとしてくれてありがとう』って感謝してからだろうが」

「貴様に言われると何故こんなにも屈辱的なんだ・・・っ「理不尽!」


 王はクルリとディーナに向き直る。


「だが、確かに言うべきだったな。ありがとう」


 真っ直ぐ見つめられ、言われ慣れない言葉にディーナはカッと顔を真っ赤にさせた。


「い、いえ!あの!私が勘違いしただけで!え、えと・・・その・・・」


 熱とパニックで頭が回らない。不意にギュっと抱き締められた。


「ありがとう・・・」


 耳元で響いた艶のある低音にディーナは更に赤くなり、何も考えられなくなった。





「ディーナ!?」


 ディーナの様子を見てギドがあーあと口を開く。


「気絶してんなこりゃ」

「す、すぐに医者を!!」

「は、はい!」


 慌てる王とマルドアをギドは待て!と止める。


「あんまし騒ぐな。皆寝てんだし。嬢ちゃんの気絶もヤバイもんじゃねえ」

「何故そう言える!「原因がオメーだからだよ」


 王は疑問符を浮かべていた。


 あ、説明すんのめんどくせ・・・とギドはため息をつき、頭を掻く。


「とりあえず部屋に寝かせてやれ。手と足に擦り傷あるから呼びたいなら医者も呼べばいい。ただし、もうちょい太陽が昇ってからな」


 王とマルドアは冷静なギドの言葉に小さく唸る。


「「屈辱・・・っ」」

「だから何でだよ!」


 俺一応お前らより結構年上だかんなー!と叫ぶギドの言葉など聞こえず2人はディーナを運び寝室に向かった。

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