ピーマン
私の好きなピーマンの食べ方は、
フライパンでちょっと焦げ目がつくくらいまで焼いて、ちょっとしょうゆをかけるだけ。
ピーマンそのものの苦味が感じられるくらいがちょうどいい。
ピーマンがずっと好きだった訳ではない。小さい頃は苦手な味だった。
高校生の頃、たまたま焼肉屋で食べたピーマンがおいしくて、そこから少しずつ食べれるようになった。
ピーマンの苦味を好き好んで食べるようになったのは、結婚してここ数年の話。
「俺は、ひじきと一緒に食べるのが好きなんだよなー。この食べ方が一番おいしいだろ?」
「うん、確かに美味しいよ」
「だろー?やっぱ夫婦って味の好みが似るんだなー」
…。確かに、美味しいよ。確かにね。ひじきだって美味しいし、ピーマンだって美味しい。でも、ピーマンの苦味がひじきに消されてしまいそうで、私はあまり好きじゃない。
その食べ方と同じくらい、あなたのことも好きじゃないのかも。
彼に養ってもらってる私は、そんなこと言えないのだけど。
「あっ、さっき買ってきたピーマン、フライパンで焼いたんだね。しょうゆかけて食べると美味しいよね。俺もよく弁当に入れるんだよ。」
「そうなの?私もこの食べ方がシンプルで一番好きなの!」
スーパーで二人で買ったピーマンを、二人だけしかいない彼の部屋で食べる。このピーマンの苦味がまた私を幸せにする。
「今日、家に帰らなくていいの?」
「うん、旦那は今日から出張で、明後日帰ってくるの」
「そっか。じゃあ、今日はずっと一緒だね。」
私も大人になったからなのか。
苦いくらいがちょうどいい。