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第三話〜語り部〜

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最初の話は極東戦争の終結から5年後の20XX年の九州は北九州市から始まる。


戦時中はTSADA作戦総司令部が置かれ4つの航空基地と1つの海軍港が置かれた前線司令部的な街であった。


戦争の終結から5年も経ち国の復興支援で戦争の生々しい爪痕は消えつつあった。


そして私はある人物に会う為に閉鎖された旧作戦総司令部へと向かった。


街の中心から一時間ほど車を走らせ、しばらく山の中を走るとようやく目的地に到着した。


一見すると幽霊屋敷かと見間違えるほどの廃墟と化した施設だが、5年前まではここが日本防衛の要であり頭脳であったのだ。


ゲートの鍵は既に外されバイクが二台止まっていた、そのバイクの邪魔にならないように車を止めて私は中に入った。


そして施設の入り口であろう玄関のところに二人の男女が立っていた。


二人は私に気づくと帽子を脱いで深々とお辞儀してくれた。


「今日はお忙しい所を申し訳ありません、こんな所に呼び出してしまって」


ワンピースを着た女性がもう一度お辞儀しながら私に言った。


彼女の名前は宮本恵理(みやもとえり)元中尉、元TSADA防衛師団所属第七中隊ヴァルキリー隊2番機のパイロットであった女性だ。


「まぁ、こんな所で立ち話も何ですから中へ入りましょう」


勲章を付けた軍服を着た中年の男性がドアの鍵を開けて中に入るように促した。


彼の名前は佐伯隆二(さえきりゅうじ)現中佐、元TSADA防衛師団所属第七中隊ヴァルキリー隊3番機のパイロットである。


「あ、はい・・・失礼します」


私は二人に促されて中に入った。中は荒れ果てており壁はひび割れガラスは全て割られていた。


数分ほど歩きある部屋の前に到着した、ドアには掠れかけた文字が書かれたプレートが貼ってあった。


「ここが司令室です、ここはさほど荒れてないから大丈夫でしょう」


佐伯さんがポケットから鍵束を取り出しドアの鍵を開けた。


中は革張りのソファーとその奥に司令官が座っていただろうデスクが置かれていた。


本棚にはファイルが置いてあり、もしや機密書類かもと思い開いてみたがなんの事も無い普通の日誌であった。


「重要機密書類は殆どが中央司令部の保管庫にありますよ」


宮本さんがニコリと微笑んでソファーに腰掛けた。そして手提げバックからお茶の入ったペットボトルを取り出した。


「そうですか・・・残念です」


私は苦笑いを浮かべて彼女に対面するようにソファーに深く座った。


「それで隊ちょ・・・いえ、大村浩介中佐の話を聞きたいと聞きましたが?」


佐伯さんがデスクに腰掛けて私をじっと見ながら聞いた。その目はまるで私の心を見透かしているようであった。


「えぇ・・・兄と最後に飛んでいたのが貴方達と聞きまして・・・兄の話を聞きたいのです」


私は胸ポケットから古い写真を取り出して二人に見せた。そこには私の高校の入学式を見に来てくれた兄・浩介が軍服姿で写っていた。


「失礼ですがお名前は?」


宮本さんが写真を見ながら聞いた。彼女の顔は軍人の疑りぐり深い顔では無くどこか姉のような表情をしていた。


「大村・・・有希です」


私は自分の名前をはっきりと述べた、それを聞いた二人は顔を合わせてうなずいた。


「間違いないな、よく隊長が言ってた名前だ・・・」


佐伯さんが懐かしそうに微笑んでつぶやいた。その顔はどこか遠い昔を見るような顔であった。


「大村隊長・・・いえ、お兄さんは非常に優れたパイロットでした」


宮本さんが財布から一枚の写真を取り出して私に手渡した。そこには宮本さん・佐伯さん、そしてもう一人の若者と兄が仲良く笑いながら肩を組んで写っていた。


「隊長は・・・本当の英雄だった、今の俺があるのも隊長のお陰だよ」


佐伯さんが外を見ながらボソリと呟いた。彼が吐いたタバコの煙が天井に昇りやがて薄れて消えていった。


「よかったら・・・兄のことをもっと詳しく教えてくれませんか?」


私は思わず身を乗り出して二人に言った。二人は顔をもう一度見合わせて肩を軽くあげて『仕方ないな』という顔をした。


佐伯隆二・宮本恵理この二人の口から、今伝説が語られようとしていた・・・。

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