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シゾフレニア  作者: 民音慧可
第一部 空想上の物語
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生活


「はぁ・・・」


朝食を食べながら溜息を着く


その理由は朝、私は目を疑う光景に目の当たりしていたのだ


起きた時間は約6時


昨日の出来事のせいで大して眠れなかったのだが、起きる時間というものは習慣で決まるらしい


そんな早くの時間に起きたにも拘らず、この家では遅い時間だったのだと痛感する


起きたときには湊は朝食の準備をしていた


外を見るに、洗濯物はしっかりと干して有る


それでいて恙無く、丁寧に、効率よく料理している光景を見ると


なんか、こう・・・負けた気分になる


一人暮らしだからか、炊事洗濯掃除と家事なら何でも出来る主夫スキルの高い人間だったのだ


これでは私の立つ瀬がない


なにか、手伝いは無いかと聞いてみたが


「料理は二人だと効率が悪い。なにか手伝いたいなら今後俺より早く起きて洗濯してくれ。それ以外は特にない。」


との上から目線だ


これでも女なんですけどね、私


とりあえず今は甘んじて現実を受け入れることにする


そして、今に到る


「飯、口に合わなかったか?」


落ち込んだ様子を察したのか、その原因を聞いてきた


「うんん!不味くなんかない!・・・むしろ美味しい」


「ならいい」


これじゃあ女としての私が負けたままだ!


ここは何とか私にも主婦スキルが有ることを知らさねばずっとこのまま楽な生活に・・・


それもありかなと思ってしまう自分がもどかしい


「湊、提案があるんだけど」


「なんだ?」


「私にも料理させて欲しい」


「・・・駄目だ」


「何で!」


「何でも」


「う~・・・夕飯、私が作るから!」


「・・・・・」


露骨に嫌な顔しないでよ


私だってこれから住むんだから家事を分断させて欲しい


「はぁ、分かった分かった。でも今朝の分で材料無くなったから買いに行かないと・・・」


「私が買ってくる!」


「いやお前場所知らないでしょ。学校帰りに俺が寄って買ってくるから今日は俺が・・・」


「私も行く!」


「えー」


というかこの人どんだけ私に料理させたくないのよ!


「味のことなら心配しないで。父は平日家に居なかったことが多い人間だったからそれなりに料理出来るし、他の家事だって問題なくできるわ」


「そこまで疑ってる訳じゃないんだが・・・」


「ならいいでしょ?」


「・・・・・・」


後一押しか


「ねぇ・・・ダメ?」


少し上目遣いで色っぽく説得する


でもこれは目と目が合えば最大限の効果を発揮するもの


昨日今日で分かったけど、湊は基本的に人と目を合わせない人間だ


だから声をより色っぽくする


「・・・お前が、諦めの悪い女だということが分かったよ」


「じゃあ!」


「夕方には帰ってくるからそれまでに家に居ろ。それ以外はどこでなにしててもいい。外出るなら玄関付近にカギのスペアを使え」


折れた


「やったぁ!」


「みゃぁ~」


嬉しくて胸の前で小さくガッツポーズする


凄いげんなりしてるけどあえて見なかったことにする


これでようやく女としてのプライドが護れたというものだ


「・・・ん?みゃぁ?」


その鳴き声を放った持ち主は私のすぐ隣に居た


綺麗な毛をした白キジの猫だった


「帰ってきたか。」


湊が手招きしたらその猫はすぐに湊のほうへ向かい、エサのかにかまぼこを与えられ嬉しそうに食べる


「そういえば聞き忘れてたけど、猫アレルギーだったりする?」


「それは大丈夫。むしろ大好きな部類だよ」


「大好きな奴でも残念なことに猫アレルギーの奴も居るんだけどな・・・」


「にゃー」


ほら、とさらにエサを与える


存外、この男は動物には優しいようだ


なにせエサ与えられて嬉しそうな猫に釣られて自分も微笑んでるのだから


「へ~・・・」


「・・・・・・なにか文句あるのか?」


「いえ、別に」


からかわれると思ったのか喧嘩腰で聞いてきた


そんなこと無いのに。むしろその様子こそが微笑ましい


少し空気が悪くなったので話題を逸らす


「そういえばこの猫、なんて名前なの?」


「ミー」


「また安直な・・・」


ネーミングセンスがゼロであった




ソヴィに留守中の諸注意を促したあと俺は学校へ向かう


学校へは基本的には自転車だが、雨の日なんかは歩きにしている


学校までの距離は、ソヴィが通う予定の学校までは家から徒歩10分前後


俺が通う高校、諏訪原高校はそこから徒歩約30分


道のりは人それぞれだが大体そのぐらいで辿り着く


何故合計徒歩40分以上する学校を選んだのか


その理由は近くにある九条峰にかなりの数の中学生時代の同級生が通うからだ


近いのは勿論のこと、一応名門らしいので卒業するだけでも価値はあり、さらには女子の間では制服

が可愛いと絶賛され、最寄には十分すぎるくらいの充実した遊び場がたくさんあるので皆それを狙っ

て、中学時代から勉強に励んでいる


なので九条峰は人気が高いので、遠いところから通う人間も多い


俺はそれを見越して少し遠い諏訪原に入ったのだ


中学時代の友人には出来る限り会いたくなにから


でもそんな会いたくない連中だが、今でも仲のいい友人は居る


俺の事情を知ってなお俺の友人であり続けてくれる人間


俺にとって数少ない大切な存在だ


教室に入り、一目散で自分の席へ向かい、座る


後は適当に携帯弄っていれば時間は過ぎ、HRが始まり授業の時間になり適当に過ごして入れば放課後だ


その程度だ


有川湊にとって学校生活なんて些細なもの


あまり他人を見たくないから


出来るだけ人と接触したくないから


効率よく、慎重に、何事も無いよう過ごす


それが学校生活の目標


何故ならーーーーー


有川湊の視ているその世界はーーーー


"地獄"そのものなのだから

随分と遅くなりましたが、決して書いていなかった訳では無いと言い訳しておく

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