交わる物語
有川湊は普通の人間ではあるが普通ではない
それは超能力が有るとか、魔力があるとかそういうファンタジーなモノでは無く
単に普通の人間ならまず持たない持病を抱えている
いや、まず持たないは言いすぎか。世界的に見れば持っている人は多いだろう
その病気を人によっては中二病だと罵る奴も居れば、キチガイだと拒絶する奴も居る
しかし、他人の意見はどうでもいいこと。
何故なら当の本人にとって、その目に映るものが現実である以外に他ならないのだから
信じれるものは自ら歩んできた経験と自身の身体のみ
裏切る、裏切られる準備は常に用意して有る
当然といえば当然であるが、そうじゃ無い人間の方が多いだろう
特に学生時代は友人などを作りながら他人を信用することを覚えるものだ
それが出来なくなった人間に・・・いや、それをしなくなった人間になってしまった
しかし、日常とはいつまでもこのままという訳にも往かない
普通でない日常にも唐突な普通でない変化は来る
過酷で残酷な人生を選んできた少年すらも変える存在に出会ってしまうことだってある
それが未来
それが未知
だからこそ、生きていける
魂をというモノを認識することが奇跡に等しい輪廻の理
例え、少年が今のまま喜怒哀楽で幸せになれない世界にいたとしても
彼が幸せになる時を願っている存在も居る
だから、誰か彼を導いて欲しい
幸せで甘すぎる世界に、退屈で飽きてしまう自由な世界に
どうか、導いて欲しい
「・・・・・・・・」
帰宅途中、不意に妄想に耽ったり歌を口ずさんだりするだろう
要は暇だからそんなどうでもいいことしてしまう
かといって度が過ぎると通行人に気づかず恥ずかしい思いをしてしまうことも多々あ
何が言いたいか。つまりは家こそが唯一心を落ち着ける場所だということを言いたかったのだ
楽園と言ってもいいだろう
いや、別にヒキニートって訳じゃない
誰からも干渉を受けないこの空間がただ落ちつく。それだけである
帰宅して荷物を置き、夕食の準備に取り掛かる
材料は冷蔵庫の中に有る物を適当に切ったり焼いたりして盛り付ける
用意した材料を皿に盛り付けリビングのテーブルに置く
夕食の準備が完了したと思い、一人で食べ始める
いや、そもそも此の家には俺一人しか住んでいない
1ヶ月前までは父と暮らしていたが、死別した
家族が苦手な俺は一人暮らしすることを決めた。金銭面に関しては母に一任して有る。
そんな普通の家庭とは思えない世界でも
面倒事は突然やってくる
いつものように夕食を軽く食べ終わると、唐突インターホンが鳴り響く
父が居たころは近所付き合いか、頻繁に家の電話やインターホンが
なっていたが、今となっては静かなものだ。自分はそれが居心地が良い
だからこそ不審に思った。
無視するのも気分が悪いので、恐る恐る玄関へ向かい横開きの扉を開く
「はいどちらさまで--------」
「あっ!あの!・・・・」
開いたドアが嬉しかったのか身体を若干前のめりになりながらそう言ってきた
そのせいで扉の先の人物を目視してしまい、思わず息を呑み、すぐさま視線をそらす
(だから、人を見るのは苦手なんだよ)
恐らく(見てないので)、一般的にそこにいる人物を表すなら美少女なのだろう
先の一見から察するに、銀髪で、前髪にはヘヤピンが右に付けられている。
それでいて碧眼なので外国人だということが分かる
それにハーフか日本で暮らしたことがあるかだろう。生粋の外国人って感じはしない
目を逸らすときチラッと見えたが、右手側には旅行してきたのか分からないが
大きい手提げのバッグがある
・・・・・まあ、だからなんだという話だが
「こちらに住んでる有川勝一という方は、居ますか?」
なにやら少し焦ってる様子だ。あまり関わりたくないんだが
「勝一・・・父は先月他界しましたが」
「ーーーーーえっ、・・・そ、そんな」
見るからに困ってる様子
その様子を見られたくないのか、それとも無意識になのかは分からないが
空いている右手で顔を覆う
それほどまでに焦ってることが分かる
元々父はコミュニケーション能力がかなり高く、外国人との知り合いだっていなくても
おかしくは無い。むしろ自然だ。一度も外国に行ってなくてもそのぐらい容易い事だろう
「なにか、父に用でもあったんですか?」
素朴だが、一番重要な質問をする
「え、ええ。あの、私はーーーー」
・・・なにやら込み入った話になりそうな予感
こういう嫌な予感だけは昔から当たるから面倒
仕方ない、立ち話は疲れるからリビングにでも案内して話だけ聞いて帰らせるか
「ーーーー・・・話、長くなりそうですね。中に入りますか?」
「あ、は、はい・・・」
覇気がない声で返事する
見るからに痛々しいので心を落ち着かせるためのもこれが一番だと判断
「どうぞ」
「お、お邪魔します」
俯きながらそういった
親父さんよ、安易な安請け合いはしないで貰いたい
いや、安易じゃない安請け合いなんてないが
死ぬときは死んで、その後に残った人間のことも考えて欲しいものだ
今更ながらそう思う
なんせ俺は親父さんとは真逆に、コミュニケーション能力は無いほうなのだから
まあ、視線を合わせなければ何とかなるかな
完全に初心者ですが初心者なりに頑張らせていただきます。