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勇者のヒーロー  作者: 梅こぶ茶
Ⅱ.アルマ国
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8.ホームシックについて。




「ずみは家族に会えなくて寂しくないの?」



素敵な中庭(先客の件は忘却の彼方で)で借りてきた本を読みながら、のんびりしていると雪乃がやってきた。

軽く最近どう?なんて雑談をしていると突然の質問だ。


どうやら雪乃はホームシックのようだ。


「寂しいに決まってるでしょ」


とりあえず正直に答えた。


「えー?ずみが一番平気そうに見えた」


正直に答えてやったのに失礼な奴だ。


「平気そうに見えたならそれは皆がいるからでしょ。わたし一人だったらきっと泣いてた」


当たり前だ。この歳でこんなに親元を離れることはそうそう無い。

修学旅行のときですら、ちらっと家を恋しく思ったのだから。

高校生のわたしが突然ひとりきりで異世界なんて来たら泣き喚いていた。


だってわたし、家好きだし。引きこもりだし。パソコン中毒者だし。

家族も父とは上手くいってないけど、母と妹好きだし。姉は……嫌いではないし。

絶対、泣いたと思うね。家が恋しくて、友達に会いたくて。

数学と英語がついていけなくて嫌気がさしていた学校だって懐かしくなる。


でも、幸いなことに一番仲が良い友達が8人も一緒だ。

確かに、自分の布団で寝たいなぁとか、母に会いたいなぁとか思うよ?

でも、ひとりじゃない。皆も同じ気持ちだと思う。

だから我慢ができる。それだけだ。


雪乃はなんだか考え込んでいる。

わたしはそんな雪乃をそっとしておくことにした。

面倒くさいからじゃないよ?思考の邪魔をするのはいけないと思ったらデス。


「ずみは……本当にたまーに良いこと言うね。普段は人の心を抉るのが得意なのに」

「ちょっと人をサディストのように言わないでよね。そりゃ、好きな子はいじめるタイプだけど」

「サドじゃん!あと、わたしのことをいじめるのやめてよね」


失礼な!いじめてなんかいないわよ!雪乃がイジリやすいのがいけないんでしょ?

雪乃イジリはわたし以外の人もやってるわよ!みーちゃんとか日登美ちゃんとかみっつんとか。

愛情表現よ!愛情表現!


うりゃっと手のひらをぐりぐりと雪乃のほっぺになすりつけた。

手のひらが摩擦で温くなるくらいの勢いで。地味な嫌がらせである。

もちろん、嫌がった雪乃に腕ごと払われた。


ちなみにこれはよくやる嫌がらせである。やっちにもする。


「つーかさぁ、最初にホームシックで喚いてた諸隈さんには聞かないの?」


ホームシックと言えば諸隈さんだ。

なんせ初日に家に帰りたいと無計画に城から脱出しようとした人なのだから。


わたしなんかより共感できて慰め合いが出来るのでは?


「ああ、りんはダメ。いま王子とイチャイチャしてるから」

「・・・・・・・あれ、マジなんだ」


どうやら一週間前のここでのあれは幻ではなかったようです。

わたしが知らなかっただけで、みんなには周知の出来事みたい。

まぁ、わかるよね。だって中庭で堂々と逢引きしてたんだもん。

中庭って芙蓉宮からはばっちし見えるし、中宮からは角度によっては見えるかもしれない位置だ。

つまり誰にでも見える。隠してない。オープンである。


別にイチャラブがダメってわけじゃないよ?

所詮他人事だし本人が幸せなら何も言わない。


でも、覚悟のほどを問いたい。


あなたの彼氏はこの国の王子様だよ?って。

それがどういう意味かわかってる?

ただの王子様じゃないよ?跡取り息子だよ?


諸隈さんはホントーにこの辺をわかっているのかね?


まぁ、こんなこと雪乃に行っても仕方がない。


「皆さんにも聞いてみたら?」

「他の子には気を使わしそうだから聞けない」

「わたしならいいんかい」

「ずみなら大丈夫、神経図太いし」

「それ誤解だからチョーナイーブだから」




雑談挟みながら「馬に蹴られないでおこう」と日向ぼっこをしながら話をまとめた。






これでとりあえず、全員としゃべらせたかな?

諸隈さん?別にいいんじゃない?そっとしておきましょう。

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