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勇者のヒーロー  作者: 梅こぶ茶
Ⅱ.アルマ国
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6.図書館妖精レイの事情


気づくと『コレ』はアルマ国の中宮にある図書館にいた。


最初は意思だけがあった。

ふわりふわりと図書館を漂う。

しばらくすると図書館にあるもの全て把握できるようになっていた。

本の内容から何がどこにあり、いま誰がここにいるかなど。

もうひとつ図書館がカラダ内にあるような感じだ。

本の在りか頭の中に浮かび、人が入ってい来ると異物が侵入したように感じる。


そう、人。

ここは人がたくさん来る。

訪れた人たちは本を読んだり居眠りしたり勉強したりと様々なことをする。

見ていて飽きない。

人をより近くで見るために『コレ』は人型をとるようになった。

でも、こんなに人がたくさんここに来るのに誰も『コレ』には気づかない。


さびしい。



そう、さびしい。『コレ』は特殊である。

魔力を発する魔導書。呪いを閉じ込めた禁書。人生をかけ想い記した本…。

さまざまな力や想いが混じりあう『場』となった図書館。

その特殊な図書館で生じたのが『コレ』

大地、木草花、水場、炎、大気、そして光からなる万物の根源たる超自然物から生じるのが『ソレ等』

『コレ』はこのどれにも当て嵌まらない。


超自然物以外から生じるものは魔物と呼ばれる。

魔物は陰の眷属で陽の眷属である『ソレ等』とは対極に値する。

故にお互いに相容れぬ存在で本能的に嫌いあっている。

『コレ』は確かに超自然物以外から生じた。だが、陽の眷属だ。

半端モノではあるが『ソレ等』の同胞である。

だが『コレ』は『ソレ等』に嫌われている。

『ソレ等』は『コレ』を魔物だと認識しているのだ。



さびしい。


人は『コレ』とも『ソレ等』とも魔物とも違う。

人は陰陽どちらも持ち偉大なる大母神に愛される存在だ。


神に愛される存在。


そのような存在なら『コレ』を愛してくれたりしないだろうか?

こんなにたくさんいるのだ。一人くらいいるのではないだろうか?


『コレ』は探した。

『コレ』に気づいてくれる人を。

『コレ』に話しかけてくれる人を。

『コレ』に笑いかけてくれる人を。

『コレ』に触れてくれる人を。


『コレ』を愛してくれる人を。



400年待った。400年待ったら奇跡が起こった。


黒髪黒眼で見たことがない服を着ている少女が来た。

髪は首もとに一つに結われ、服は紺色、しかし、短いスカートから足が見えている。

この国では信じられないくらい短い。女性が足を出すのははしたないはず。

しかし、一緒に来た美しい水色の髪を持つ大人の女性は何も言わない。

うむ、最近の『外』ではこの短いスカートが流行しているのか?


『コレ』は本にある古い知識はわかるか、最新の情報には弱い。

この人に興味がわいた。

大人の女性は、もう一人の肩まで髪がある少女と中等魔術本がある本棚へ向かった。

一つ括りの髪の少女とは別行動の様だ。

『コレ』はなぜか妙に惹かれるその少女についていくことにした。



少女は絵本が置いてある本棚で立ち止まった。

うむ、この少女も魔術について知りたいようだ。

しかしなぜ絵本?もっと詳しく書いてある本もあるのに。

『コレ』はじっと少女を観察する。


少女は5才向けの絵本から7才向けの本へとだんだんレベルをアップしていく。

もしかしてこの少女は、魔術を知らないのだろうか?

いや、知らないはずがない。生きることと魔術は密接につながっている。

魔術を使って人は日々の生活を営んでいるのだから。


いや、待て。例外がある。

『渡来人』だ。


渡来人は魔術がない世界から来る。

もしかしてこの少女『渡来人』なのではないか?

それならば、魔術を知らない事にもこの妙な出で立ちにも納得する。

100年前に来た渡来人とはまた違う格好ではあるが…。

異世界にも流行りの格好というものがあるのかもしれない。


ますます興味を惹かれ『コレ』は少女に近寄った。

100年前の渡来人も『コレ』が見えなかった。

この少女も『コレ』が見えないだろう。堂々と正面から観察しよう。

そう思い『コレ』は少女の前の席へ座った。


少女はしばらく絵本を見ていたが、何かに気づいたように、ふと『コレ』の方へ視線を上げた。

『コレ』と眼があった。

眼があったことが気まずかったのかすぐ逸らされてしまったが『コレ』を認識してくれた。

嬉しい!嬉しい!


人は『コレ』に戸惑っているように見える。

せっかく会えたこの人間に嫌われたくない。


『コレ』は使えるとアピールしなければ。

この『渡来人』はこの国の文字を読めるのだ。

なら、絵本よりもっとわかりやすい本を選び出せば『コレ』を使ってくれるやも。


『コレ』は初心者にもわかりやすい本と魔術の実践本を選び出し少女に渡した。

すると少女がにこりと笑ってくれた。『コレ』に微笑みかけてくれたのだ。

大母神のもとへ還ってしまうのではないかと思うほどの喜びだ!


この少女なら『コレ』を愛してくれるのではないだろうか?

『コレ』を使ってくれるのではないだろうか?


なら『名の契約』を…ダメだ!『コレ』には名がない!

『ソレ等』は生まれ持つ名があるが『コレ』にはないのだ。

この少女と離れたくない。『コレ』はこの特殊な『場』から出られぬ。

どうすればよいか……いや、簡単なことだった。

少女が『コレ』に名づければよい。呼んで『コレ』が応えるとそれが『コレ』の名となる。


少女の名を聞き、少女に名をもらった。


これで『名の契約』が結ばれた。




こちらこそよろしくおねがいします、


わが主、ユイ。





実は、主人公は知らないうちに妖精と「契約」をしていたのでした。

びっくりですね。


あと、この妖精ヤンデレ臭い。あれ?こんなはずでは…。

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