2.この国を知ろう
この国、アルマ国は、エイシャ大陸の北東方に位置する、アスエイシャ連合国家のひとつ。マリスタン王家が支配する農業、酪農などがさかんな農業国。西方隣国のエレブエイシャ連邦国家のモロア国とちょっと仲が悪いぐらいで至って平和。
この国は、一度も戦をしたことがなくとても平和。しかも、農業国あいまってすごく保守的。自軍も少ないらしくて南方隣の同じ連合国にもしも攻め込まれた時は援軍してもらうようになってるとか。自国も守れない軍事力ってどうよって思ったけど、日本もそんな感じだもんね。人のことは言えん。
ちなみに連合と連邦は同じ意味らしい。同じ言葉を使うのが嫌だから少し変えたとか。さっきちょっと言ったがアスエイシャとエレブエイシャは思想の違いにより仲が悪いらしい。
境界線を引くように大陸をまっぷたつにして4国連邦対3国連合とどちらにも属さない新興国1の三竦みでいがみまくっているんだってさ。
でも最初の人たちといわれる8支族は仲が良かったらしい。
説明が長くなるが…。とにかく。
このエイシャ大陸は8つに国が分かれている。今からおおよそ1000年前。
この8つの国を創った古の人が8支族がこの大陸に現れた。(ちなみに本家筋の人は色んな説があるが誰が未だにわからないらしい。)
8支族が仲良くこの大陸で開墾してたらしいけど、この土地は砂漠がほとんどの不毛の大地だった。
だけど追われてこの地に来たので他に行くところもなく、頑張ったらしい。
砂漠以外の地でも、いくら土をひっくり返しても栄養不足の痩せた土地で農作物がうまく育たない。
そんなことを続けてた数十年。忽然とひとつの支族が消えた。
この不毛の大地に根をあげ放り出したと思った残りの7支族は捜しもしなかった。
放り出したとしてもそれも致し方ない。こんな土地では…。
そんなある日。ひとりの女神が舞い降りた。
『頑張りやの貴方達にご褒美です。豊饒の大地をあげましょう』
『そして、勇気と知恵を持つ者を贈ってあげましょう。その者が貴方達を助けてくれます』
そんな感じのことを言い、女神は蛇の巻きついた杖を振るとあら不思議!あたり一面緑が繁々と!
7支族は喜び、開墾し、人を増やし、生き物を増やし、7つの国を創りました。(のちに8国)
で、そんなある日。ひとりの男がやってきました。
その者はこの大陸の者でもなく、この世界の者でもないと言うのです。
7支族は思いました。この男こそが女神がおっしゃっていた勇気と知恵を持つ者だと!
その男が持つ知識で国はますます栄え、大きくなり豊かになりました。
めでたしめでたし。おしまい。
と、創国史は、こんな感じらしい。
ちょっと端折りすぎたかな?
でも、こんなのは作り話も含まれているものなのでさらっとでいいと思う。
日本書紀や古事記を信じる人っていないでしょ?知らない人が多いでしょ?
だからあらすじぐらいで大丈夫。うん。
目の前で熱弁ふるうメイヤさんには悪いけど。
メイヤさんとはわたしたちの教育係である。本名はもっと長いけど覚えらんないからメイヤさんで。身長はそれほど高くなく大人の女性っていうよりお姉さんって感じで親しみが持てる方です。亜麻色の髪がとても素敵。欠点は、好きな歴史を語りだすと一直線!自分の世界に入って周りがどんな反応をしているか気づかないところかな?
とりあえず、わたし達は、うんうんと頷いてはじめての授業をやりすごした。
間。
ようやく長い授業が終わり、メイヤさんが去った後、大きく伸びをしたわたし達は円を作り駄弁りだした。
「うーんなんかさ、創国史とか神話とかの前に一言いい?」
みっつんが、みんなを見回し許可をもらう。
何の許可かって?それはこの授業中みんながずっと思っていたことを発言する権利の許可です。
わたしたちはどうぞと目で合図を送る。
「なんでさぁ、なんで日本語のわけ?!」
ええ、そうですねびっくりしたよね。
メイヤさんがチョークで書いた文字は日本語だった。
『エイシャ大陸の歴史』と黒板に書かれた時はみんな目を丸くした。
なんで漢字、ひらがな、片仮名、コンプリートしてんだよ。
そんなわたしたちにメイヤさんは気づかず、昏々と熱熱に歴史という神話を語りだした。
どうやらわたしたちに気遣って日本語で書いたというよりデフォルトで日本語らしい。
「こういう場合ってわかんな文字か英語っていうのがセオリーじゃない?」
「よくあるよね、言葉は脳内で自動翻訳されていて文字に苦労するって」
「言葉は最初っからわかってたけど…文字までとは思わなかった」
みんな口々に思ったことを言っている。まぁ、わたしも思ったけどね。
でも、苦労せずにすむのは大歓迎です。
その性か、みんなの話題も文字から創国史の話に移っていきました。
「歴史で女神様がでてくるなんてありえない!」
「え?でも日本の歴史も神様の国づくりからはじまるよ?」
「あれは後付けの作り話でしょ!日本書紀が実話だなんて誰も思ってないし!」
「まあね、現代では誰も皇族が神の血筋なんて思ってないね。尊い血筋だとは思うけど」
「そう!なのにここの人はこれを事実で正史だと思ってるってことを言いたいの!」
「わかる!わたしも違和感ありまくりでずっと眉が寄ってた!」
「でも、ここはファンタジーの世界なんだから女神さまも本当にいるのかもよ?」
「なんていったって魔法あり魔物ありの異世界なんだもん女神様もいるんだよきっと」
「いるんだったら見てみたいよね女神様…あと、妖精とかも見たい!」
妖精という言葉に心臓がドキっと跳ねた。
実は『見えてる』っていうべきなのだろうか?
でも、みんなこの辺飛び回っている妖精が見えてないようだし。
なんでずみだけ?って言われるかも…。わたしだって何で見えるかわからん。
ちっこくてティンカーベルみたいな妖精ははっきりいってかわいい。まぁ、常に部屋に3、4匹いて飛び回ったり、モノを触ったり、髪を引っ張ったりしてくるのはうざいけど。みんなにも見せてあげたい。きっと話が盛り上がる。
っていうか、わたしも本当は話したい。秘密を持つのは胸がもやもやするから嫌なんだよね。でも、ずるいとか言われたくないし、本当かどうか疑われるのも嫌だ。
……よし!やっぱもうちょっと様子みてから話そう。うん、そうしよう。
「そうりゃあ見えたら素敵なんだろうけど…やっぱ、おかしいよ」
「神様ってそんな身近なものなの?ほいほい人間の前にあらわれるものなの?」
意外と根が真面目な諸隈さんと『雪乃』が必死の否定するが…まぁ。
「ここでの常識とわたしたちの常識は違うってことでしょ」
この一言に限る。
(2012.5.24 少し言葉づかいを修正)