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勇者のヒーロー  作者: 梅こぶ茶
Ⅲ.勇者の剣
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18.勇者の剣とは


「この剣は約400年前に異世界からこの国へ渡来したアルマという勇者の所有物で『カタナ』という名前の剣です。勇者はこの剣を寝るときにすら抱え込んで肌身放さず持ち歩いていたそうです。しかも、この勇者様は、いつ襲われるかわからないからって座った体勢で寝て、ベットを使用しなかったそうですよぉ!すごいですよね!なんか、死んだ魚のように床で寝っ転がる事はあったとか(笑)ああ、話がそれましたよね。勇者アルマはこの『カタナ』をもって当時世界を恐怖に突き落としていた魔王をやっつけたんです!世界平和を実現した偉大な勇者様誕生!すごい!そして、魔王を討伐し、この国に戻ってきた勇者アルマを祝して、国名をマリスタンから勇者の名前であるアルマに変え、勇者の功績を永遠に称えることとなったのです!王様ったら国名を変えちゃうなんてそんな大胆!姫様と結婚して末長くこの国にいてもらおうとしたんですが、勇者様が結婚という契約を嫌がったのか、当時の姫様が不細工だったのか、なんと突然の蒸発!世界中びっくり!この相棒ともいえる『カタナ』だけ残して行方不明になったんです。謎でしょ?勇者様はどこにいったんでしょうね?大事な『カタナ』を残して、なんか意味あるんですかねぇ。まぁ、その謎は置いておいて。消えた後も世界を救った勇者様は人々に崇拝されていてこのような神殿も建てられることになりました。いやぁ、すごいですよね渡来人のチカラって。あ、貴女たちも渡来人でしたよね?どうです?ご興味もちました?記念にこの『カタナ』を抜いてみます?これ誰がやっても抜けないんですよー。みんな面白がっちゃって年に4,5人が勇者にあやかりたいとわざわざ抜きに来るんですよー。バカですよね、あはははっ!まぁ、そんなバカがたくさんいたので、このカタナが『勇者の剣』なんて呼ばれるようになったんですよー。抜いたら勇者!なんちゃって、あはははっ!」




勇者の神殿。


思ったよりちんまりとしたギリシャにあるパルテノン神殿のようなところだった。なんて風通しのよいことでしょう。おざなりに囲いと扉があるってだけだ。とっても不用心。この神殿に仕える神官もこの神殿とは別のところにお屋敷があるんだって。本当にこんなところに大事な『勇者の剣』があるんだろうか。ここに来る途中に出店もあったが、勇者のストラップ、勇者のお護り、勇者の遺物…など、なんとも怪しいモノが並んでいた。観光名所かよ。なんか勇者の神殿自体怪しいなと思っていたところ、この勇者の神殿の案内役である神官様の登場だ。

すっごい笑顔の神官様はベラベラとマシンガントークをかましてきたので、わたし達は茫然と立ち尽くすしかなかった。…一行目で諦めた。帰っていいですか?


「えぇっと…あの、この『カタナ』って勇者が異世界から持って来た…でいいんですよね?」


雪乃ぉ!そんなに真面目に答えてあげることないよ!絶対この神官はふざけてるよ。それか頭パーンってなっちゃってる人だよ。関わらない方がいい!このままみんなで回れ右をするべきだ。


「そうですよ!わたしたちの世界の剣とは違う製法で作られてるらしいですよ。なんでも鉄でも切れるとか!」

「いや、それはさすがに言い過ぎですよー。確かに「切る」ことに特化したモノですけど、鉄は切れません。切れたらそれはアニメやわ」


銃の弾が切れるとか聞いたことあるけど、鉄はムリ。どんだけ尾びれに背びれがついてんのよこのカタナ。

わたし達は改めて伝説の『勇者の剣』を見る。


台座に穴があり、そこになんの有難味もなく茶色い地面にぐっさり刺さっているのは『勇者の剣』


でも、どうみても日本刀です。ありがとうございました。


わたしは頭を抱える。なんで勇者の剣が日本刀なんだ。ふつうは西洋剣とかだろ?そんで神の祝福とかがついていてこう神々しいものだろ?なんでぼろっちい無名っぽい日本刀だんだよ。夢壊れるだろ?つーかさぁ、神官がさっき言ってたこと、寝る時も刀を持ってるとか床に転がって寝るとかさぁ……もしかしなくてもそうだろ?


「その勇者さまって、日本人?っていうか侍でしょ?職業・武士って言ってなかった?」


とうとう言ってしまった。他にもツッコミどころがたくさんあったけど、とりあえず今はスルーだよ。わたしのスルースキルを持ってしてもスルーできなかったことを訊いたよ!


「おお!さすが同じニホンジン!勇者様が書いたとされる手紙があります。読みますか?」


読みますか?と尋ねてるけどもう手に持ってるじゃないか。それだろ勇者の手紙って。

それはこの世界では一般的な羊皮紙だ。それを額縁に入れてある。なんでと訊いたら負けなんだろう。

4人でその手紙をのぞいてみる。そのミミズがのたくったような文字は縦書きである。この世界は横書きが主流なので確かに違う点だ。信憑性が上がってきた。そして手紙の最後には勇者の名前が書いてあった。それは達筆ながらもなんとか読み取れる。でも、みんなが首をひねった。


「―――勇者の名前はアルマさんですよね?」

「はい、この国の名前でもある勇者アルマです」

「「「「・・・・・・・・・・・」」」」


4人は固まった。そして目を合わせる。よし、意思疎通が出来た。

心はもともと一つだったらしい。さすが日本人だ。空気が読める。


「なんでもないです」

「ん?そうですか?疑問があったらいつでも答えますからね!では本日のメインイベントです!勇者の剣抜っけるっかなぁ♪」


うわぁー神官マジうぜー。殴ってしまいたい。でも、神官を殴ると警察ではなく教会に捕まって特製の牢屋に入れられるか奉仕作業をさせられるらしい。なので、我慢。


そして、勇者の名前が『有馬高遠アリマタカトウ』であると暴露するのも我慢だ。


あと、その日本刀になんか妖精っぽい?ものがくっついているって言うのも我慢だ。






まぁ、よくあることですよ。日本の名字ってむずかしい。

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