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勇者のヒーロー  作者: 梅こぶ茶
Ⅱ.アルマ国
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10.緊急会議!


「なんか王様のうっかりのせいでわたしたち1年後に同盟国の危険が一杯であるアジジェット帝国とティーバット王国に派遣されるらしんだけどどうしよう!?」



わたしは皆の前で姫様から聞いた話を暴露した。


姫様はわたしの判断にまかせるっていってくれた。

なので、わたしは姫様が部屋を出て行った時からずっと悩んだ。

悩んで悩んで晩ご飯食べて悩んで風呂入って悩んで悩んでベッドで就寝。

朝の日差しを浴びながらアヤさんに叩き起こされた時、思った。


わたし一人悩んだって仕方がない。

っていうかもうどうでもいい気がしてきたので言おう。


投げやりなったわけではない。あれだ。

ひとりは皆のために皆はひとりのために。ってやつだ。

悩みもみんなで分かち合おう!


そう決心した私は朝食時に夜わたしの部屋に集合と声をかけた。

なぜなら朝食は皆そろって食べるけどその後の行動は皆バラバラだからだ。


魔術の授業をはじめた頃から団体行動は少なくなった。それぞれの性質に合わせたプラグラムを組まれいろんな場所でいろんな授業を受けているからだ。

なので、お茶休憩の時間に会うとかはっきりいってムリ。授業終了時間もまばらのため晩ご飯も各々自室でとる事が多い。会うなら寝る前の空き時間しかないのである。


で、前回は弓道部主将の諸隈さんの部屋だったけど、今回号令をかけたわたしの部屋に皆が集まった。


それで冒頭に戻るのだけど…。


「はぁ?!なにそれ?どういうこと?」

「あー、それね。知ってるよ」


反応が二手に分かれた。

知ってる知ってると呟いてるのは剣士三人組だ。


「なんで知ってるの?姫様は誰にも言ってないって言ってたよ?」

「誰って師匠。というかそれ前提で鍛えてるって感じだけど?」

「それ前提って…」

「国に連れて帰る事こと前提ってこと」


おーーい、姫様。そうなってるの?言わないって意思統一できてないの?

あ、もしかして。


「国ってみっつんたちの師匠さんってどこの国の人なわけ?」

「サヴノック師匠はティーバット王国の騎士っていってたよ。アロカスさんもだよね?」

「オレの師匠もティーバット王国の騎士」

「騎士なのに魔術師なの?」

「騎士は仕事で魔術師は称号みたいなもんだよ」

「ふーん…」


そういえば前に師匠は魔術剣士だって言ってたな。

ティーバット王国の騎士で、魔術剣士で、魔術師名も持ってるってことか…。

剣も凄腕で魔術もレベル高いって、もしかしてそれってチート?

みっつんとゆずの師匠スゴスギル。


しかし国に仕える騎士様がわざわざアルマ国まで出張師匠をしてるってことは、国から渡来人を連れ帰れとでも命令されてるんじゃない?

魔族に現在進行形で侵攻されてるっていうんだから切羽詰まってるんでしょうけど……露骨すぎる。


「もしかしてやっちもティーバット王国に来いっていわれてるの?」

「うん、腕がいいからお前も来いって言ってくれてるぞ」

「行く気?!」

「いや、どうしよっかなぁーて思ってる。一応おれ、ザガン師匠の弟子だから」

「ああそっか剣術だけ教えてもらってるんだっけ。ちなみにやっちの師匠さんはどこの国の人?」

「アジジェット帝国の人」

「……アジジェット帝国の人がティーバット王国の騎士に剣を習いに行けって言ったの?」

「おう!自分は錬金術専攻だから錬金術以外は使えないからってさ!」


なんかうちの師匠とやっちの師匠なんか似てる気がする。ヘタレ臭いところが。


「じゃあさ、他に師匠がティーバット王国の人」


皆を見回してみるが誰も挙手しなかった。

なるほど、つまりティーバット王国の人だけが誓約のことを口にしてるわけね。姫様は師匠達にちゃんと口止めをしていたけどティーバット王国の騎士たちは無視したってことかな?

ただの推測にすぎないけどそんな感じがする。同盟国といって所詮よその国で、自分たちの王様の命令の方が優先順位が上ってか?

帝国っていうのも言葉の響きも恐いけど、ティーバット王国も危険な臭いがする。いかされると擦り切れるほど働かされてボロボロにされてアルマ国に帰ってこれない気がする。

いきたくない。いきたくないよー。


「三人ともティーバット王国に行く気なの?」


わたしが頭抱えて唸ってると諸隈さんが剣士三人にすっごい心配顔で尋ねてた。

そりゃ諸隈さんは心配だろう、もちろん剣士三人を純粋に心配してるんだろうが、下手すれば自分が他国に行くことになり仲良くなりかけていた王子様と離れなければならないかもしれないんだから。


「いきたくないよ?皆といたいから。でも決定事項なんでしょ?誰かはいかないといけない。それに師匠にはお世話になってるしね」

「おれは嫌だっていっても強制連行するって脅された」


ゆ、ゆずちゃん…ええっと、ご愁傷様です。

でも、みっつんもゆずも行く気なんだ。


ふと、視線を感じみっつんの横に居るやっちに眼をやった。

こっちをじっとみている。


「ずみが嫌ならおれが行ってやろうか?」


いたい。いま心臓になんか刺さった。

矢の種類はわからないが、わたしは完全にノックアウトされた。

胸に手を当てうずくまる。


やっちにここまで言われたなら腹くくるしかない。

嫌だけど行きたくないけど……仲間に押し付けるわけにはいかない!

顔を上げ前を見据える。


ぐるぐる回るどす黒い気持ちに負けるのはイヤ。

友達を友達だと胸を張って言えなくなるのもイヤ。

この仲間を失うのもイヤ。

ならやることは一つだ。開き直れ志水有唯!


「馬鹿言ってんじゃないっ!…よし!作戦会議だ!」


これからのことを書き留める紙が欲しい。

が、この世界は植物の繊維で出来た紙は貴重で、重要書類ぐらいにしかつかわれない。

ただのメモ帳として使いたいだけなので紙は却下。


部屋を見回しよいものを見つけた。授業で使っている小型黒板だ。

持ち手を動物の皮で包んでいるので手にチョークはつきません。

ベッドを下り勉強机までとりに行く。え?なぜベッドの上に居たかって?

皆にベッドの上に座ってもらっているからです。

本当は絨毯の上に座りたかったんだけどアヤさんに却下くらいました。

でも、ソファに座ると距離がひらくので妥協してベッドの上です。


わたしは早速小型黒板を皆の輪の中心に置き白い文字をかいた。


「この際だから行く国を決めちゃいましょう!」

「え?!もう決めちゃうの?というかわたしは行くなんて言ってなんだけど?!」


この話を知らなかった雪乃がストップをかけてきた。


「でも、みっつんとゆずとやっちは行く気だよ?」

「イヤ、オレは行きたくないんだけど」


ゆずがぼそっと反論するが無視だ。だってゆずの場合は師匠命令がでてる。ガンバ。


「じゃあ三人には悪いけど手分けしていってもらったらいいじゃん」

「それはダメ」


雪乃は行きたくない派なんだな。まあ、わたしもなんだけど。

でも、三人だけが行くのはダメだ。


この招待を受けるのが三人だけだとすると、ティーバット王国に行くのはみっつんとゆずこの二人は師匠の関係で決定だ。残りのアジジェット帝国にいくのは必然的にやっち一人となる。


これは非常によろしくない。なぜならアジジェット帝国はその名の通り「帝国」なのだ。帝国主義の軍事国家。新興国と常に戦っている国。戦の国。傭兵の国。一般教養の師であるメイヤさんの授業で同盟国として軽く教えてもらっただけであるがイメージはよろくしない。


そんなところにやっち一人なんてやれるわけがない。先程の発言もそうだがやっちはすぐ人を庇う。他人の荷物を持とうとする。自分も持ってるくせに。

そんなお人好しで世渡りが上手いようで下手なやっちがそんなところで上手く立ち回れるはずがない。アンタ馬鹿?死ぬ気なの?自分を見つめ直しましょうね?といってやりたくなる。


「とにかく二、三人グループで一国ぐらいじゃないと。1年もその国にいるのよ?もし招待先の国で孤立無援になったらどうするのよ?雪乃は平気なの?」

「平気じゃありません。ごめんなさい」


ようやくわかってくれたようだ。うむっと頷いて再び黒板に文字をかく。

アルマ国、アジジェット帝国、ティーバット王国の3つ。

そして、ティーバット王国のすぐ下にみっつんとゆずと書き加える。


「まぁ、この二人は固定ね」

「オレは嫌だってさっきからいってるでしょ?嫌がらせ?!」

「でも、強制連行されるんでしょ?」

「そんなの王様に命令されたとか何とか言って誤魔化せるでしょ?オレはいかない」


ゆずは反乱を企てているようだ。

上手くいくのかな?騎士で魔術師のチートその2でしょ?ムリだと思うよ?

でも、ゆずの希望なのでティーバット王国からゆずの名前を消した。

それから今度はアルマ国に諸隈さんの名前をかく。


「諸隈さんもアルマ国に固定ね」

「え?いいの?」

「まあね、ややこしくなるから」


王子の恋人(仮)をよその国にはいかせられないだろ。

事情を知った人に誘拐もしくはその国に人質としてとられるかもしれない。

リスクは減らしましょうね。


「あとは……希望とかある?」

「うーん、わたしと笠置さんとやっちの師匠はアジジェット帝国の人だけど…正直いきたくないなぁ」


そうですよねー。わたしもいきたくない。何回でも言う。いきたくない。

みーちゃんに同意する。皆できるなら平和なアルマ国にいたいよね。

でも、さっきのみっつんの言の通り誰かが行かなければならない。


仕方ない。


「じゃあ、アジジェットにはわたしがいくよ」

「え?!ずみいいの?!」

「もういいよ、わたしだったら帝国主義に絶対染まらないだろうし、1年で帰ってくる」


そうだ。永遠ではない1年でいいのだ。ちょっといって我慢して帰ってくればいい。

それぐらいならやってもいい。


ああ、馬鹿だなわたし、黙ってたらいかなくてもよかったかもしれないのに…。

そんなことを行くと宣言したそばからぐだぐたと考え込んでいたら、やっちが大きく手を挙げた。


「はい!だったらオレも行く!」

「え?どこに?」

「もちろんずみと一緒のアジジェット帝国に」


オレが一緒にいってずみのこと守ってやるよ!だから安心しろ!


そんなことをいい笑顔でやっちがいってくれました。マジ男前。

だが、大人しく守られる気はないけどね。やっちが実はメンタル豆腐なのは知ってるし。

わたしがそこら辺は上手くフォローするか。


はいはいありがとう、と軽く流しながらアジジェット帝国の文字の下にわたし達の名前を書き込んだ。


「あとはティーバット王国に最低1名だな」

「ならわたしがいくよ」


そういって手を挙げたのはみーちゃんだった。

びっくりしたわたしと日登美ちゃんが慌ててみーちゃんを宥めにかかった。みーちゃんはわたし達の癒し系マスコットだ。ただし、自分から貧乏くじを引きに行くので要注意。


「え?みーちゃんいいの?さっき行きたくないって言ってたのに」

「ムリせんでもええよ?わたしがいってもいいし」

「ここまできたらいいよ。わたしだけイヤだっていってられないし。それにやっちとずみのペア見て思ったんだ。剣士と魔術のペアの方が生存率いいかなって」


みーちゃんの言葉に思わずやっちと目を合わす。

言われて気づいたけど、役職の相性っていうのもあるんだな。

例えば、やっちは魔術が初級レベル(日常生活をおくるのに不便がない程度)がちょっと使えるぐらいなので、戦闘では主に剣で戦う。思いっきり前衛だ。それに比べ腕力からっきしで剣すら持ったことがない魔術師見習いのわたしは後衛。剣士を後ろから支援する魔術師というゲーム等でよくあるパターンのやつだ。

みっつんの師匠は魔術剣士なのでみっつんも両方使えるバランスのよい魔術剣士見習いだと思うけど…。みーちゃんと相性いいの?


「ティーバット王国は魔族に襲われて危ないところなんでしょ?わたしは治癒魔法が使えるからみっつんが怪我しても治してあげられるから」

「みーちゃん……」


みーちゃんマジ天使。

あたりがみーちゃんのおかげで浄化されていく。


イヤだと駄々こねた二人が騒いでるけどね。


「なんかオレらが悪いみたいじゃんか!」

「わたしだって行けっていうなら行くもん!」


へいへい、と後の祭りだと思いながらそれは胸の内のとどめて置いた。ますます煩くなるからね。

黒板に名前をかいていく。よし、とりあえずこれで全員行く場所が決まったな。


アルマ国

 諸隈さん、日登美ちゃん、ゆず、雪乃

アジジェット帝国

 わたし、やっち

ティーバット王国

 みっつん、みーちゃん


「アルマ国多いな…わたしどっちか行こか?」


日登美ちゃんが黒板を見てボソリと呟いた。

わたしはそんな日登美ちゃんに首を振る。


「正直うちのグループに来てほしいけど、日登美ちゃんは三人のお守役をお願いします。特に諸隈さんね。国の政に巻き込まれないようにね」


そういうと日登美ちゃんは察してくれたようだ。にやっと笑った。


「なーる、オッケー」


これで全員の了承をもらえたのかな?

黒板を皆に見せながらこれからのことを大まかに説明する。


「とりあえず、自分の行く国のことを調べて対策を立てましょう。どこの国でも政治に関わらないように気をつけようぜ」


おーー!とちょっと疲れたような返事が返ってきた。

確かにもう遅い。寝る時間だね。



「じゃあ、解散!」



この8人も平和ボケしたのんき者たちです。生温かく見守ってやってください。

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