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5. 見つけて……
手を伸ばした。
上も下もわからない世界で、冷たく震えた私の腕を誰かがつかんだ。
水は重くまとわりつき、手足は痺れ、目が霞み、感覚は、しばらく戻りそうにないけれど、
外は眩しく、少し寒い。
激しく咳き込み、耳は痛み、口か鼻か、はたまた目なのか、右も左も、わからないことだらけだけれど、
誰かの手のひらが、腕にある。
耳に血潮。
頬に温かな涙。
握りこんだ手指。
膨らむ肺。
鼓動が、うるさく胸を打つ。
あなたの手が、温かいのか、冷たいのか、今の私にはわからない。子供かもしれないし、おじいさんかもしれないし、人ではないのかもしれないけれど、
この呼吸を整えたとき、
それでもまだ
あなたがそばにいてくれたなら伝えたい。
私を、見つけてくれてありがとう。
ここまで読んでくれたあなたに感謝の言葉を、
ありがとう。