ブラオべーレからの手紙。
ブラオべーレからの手紙を開くと、そこまで細かくは無いが、新しい情報が書かれていた。
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パキラ殿
急を要することのため、挨拶は省略させていただきます。
姉上より、パキラ殿にお伝えしたいことがあるとのことで、代わりに弟の私が代筆しております。
姉上曰く「今回の首謀者はカトレアではないにゃ!」だそうです。
カトレアといつも一緒にいるメイドがいるのですが、そのメイドがカトレアに圧力をかけていたと。
馬車の中で、母親がどうなってもいいのかという感じのことを話していたらしく、
その内容から察するに、母親が人質に取られているのではないかと仰っていました。
そのメイドの名は、ロベリアといいます。
そしてもう一つ。
「恐らく首謀者はカトレアのおじい様だにゃ!」だそうです。
おじい様といってもパンナコッタ家の祖父ではなく、大帝国トライアルの母方の祖父です。
カトレアの母親はトライアルの公爵家出身で、トライアルに居場所がなくなったためこの国に来たようなのですが、
もしかしたらその情報も少し違うかもしれません。
そちらについては別途資料を送付致します。
最後に。
「明日なにか動きがあるはずにゃ。孤児院が危にゃいのにゃ!」ということでした。
孤児院を回ったあと、なぜ行動に移さないのか。
ロベリアが問い詰めていたようで……
その際に、明日行動に移すとカトレアが震えながらも話していたと仰っていました。
もしかしたら王宮のことはカルミアが一人で行っていることかもしれません。
今まで起きていた暴動も、カトレアが何かしたという訳ではなく、
国民が貴族の態度や、徴税の増額に対する我慢の限界を超えたということでしょう。
明日、カトレアについて行くと姉上は仰っていました。
こんなことをお願いするのは恥ずかしいのですが、
姉上をよろしくお願いいたします。
ブラオべーレ
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「……なるほどな」
恐らくエディでは手紙が書けないから、ブラオベーレに代筆を頼んだということだろうが……
それにしても、少しずつ進展してきたようだが……
「とりあえずエリオントに報告へ行くか……」
手紙を持って隣室であるエリオントの部屋へ向かう。
扉を開けると、エリオントは難しそうな顔をしながら書類を読んでいた。
「エリオント。何かあったのか?」
「あぁ……パキラか。すまない。集中していて気づかなかった」
エリオントは集中しすぎると、周りの声や音が一切聞こえなくなるのか、全く反応がなくなる。
王子なのだし、もう少し危機感を持てと言っても、ここだけは変わらなかった。
「この国はある意味平和とは言え、自国ではないんだ。もう少し危機感をもてよ」
「わかっている。で?パキラも用事があってここに来たんだろう?」
本当にわかっているのか……
わかっていたら、せめて音くらいには反応すると思うのだが……
今はとりあえずブラオベーレから送られてきた手紙の方が大事なので、そちらについて話すことにした。
「先ほど、フランチェスカの弟、ブラオベーレから手紙が届いた」
「……何!?弟だと?お前いつの間にフランチェスカの家族と仲良くなったんだ!」
いや、そこじゃないだろ!
と突っ込みたくなったが、今はそれどころでは無いと、喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。
「そこはまた今度話す。今はそれ所では無いんだ」
「お前のその表情、久しぶりに見たよ。相当切羽詰っているんだな。
俺の話も聞いて欲しいから、お前の話が終わったら時間をくれ」
そんなに切羽詰った顔をしていたかは分からないが、
とりあえず落ち着いて話せるようでよかった。
「あぁ。この手紙を読んでくれ」
ブラオべーレから来た内容の手紙を渡すと、静かに読み出した。
「パキラ。この姉上というのは?
なんか猫みたいじゃないか?フランチェスカは確か男兄弟しかいなかったと思うが」
これは完全に、以前話したことを忘れていると感じた。
「フランチェスカだよ」
フランチェスカが語尾に「にゃ」をつけて話しているから、どうしたらいいか分からないんだろう。
「大丈夫だ!俺はどんな趣味でももう、受け止めるぞ!」
あ、これは完全にフランチェスカが二人いるのを忘れているな――と思った瞬間だった。
「エリオント……前に話したこと忘れているな?
この手紙は18歳のフランチェスカ。エディからの手紙だよ。
エディがフランチェスカであることは父親、兄、弟が知っているんだ。
この3人も巻き戻っているからな」
「そ、そうなのか!?」
「あぁ……それでこの間、夜中に出かけたじゃないか……」
恐らくエディとフランチェスカのことで頭がいっぱいになっていて、
他の話はほとんど頭に入っていなかったんだろうな……。
普段は頭が回るのに、フランチェスカが関わるといつもこれだ。
「そ、そうだったな……?」
「どうやら明日動きがあるようだから、俺は外に出てくるよ。
孤児院を中心に見て回ってくる」
「わ、わわわかった。とりあえず気をつけていって来いよ」
必死に頭の中で整理しているようだった。
もう少し元に戻るには時間がかかりそうだと感じながら――
俺は、エリオントが持っていた書類に目を通した。




