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悪女として処刑された私、猫に転生したので破滅フラグを回避します  作者: ゆずこしょう
処刑をされないために……

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卒業パーティー。

卒業パーティーは、パートナーと参加するのが通例だ。


これは自分が卒業する時も、上級生が卒業する時でも変わらない。


……が。


「やっぱりオルテンシア王太子殿下は来ないわね。エディの時もこうだったの?」


「そうにゃ……卒業パーティーの時だけじゃにゃいにゃ。他の時もにゃ……おかげでただの召使いと笑われたものにゃ」


すごい遠い目を見ながら話すエディ。


召使いと言ったのは、オルテンシア王太子殿下ではなく、その周りにいる取り巻きの令嬢たちだろう。


「彼奴も処刑ではなく婚約破棄にしてくれればよかったものを……今思うと腹しか立たないにゃ!」


エディの気持ちはものすごくわかる。


人のことを罵るだけ罵っておいて、なぜか婚約破棄だけはしないのだ。


―――「のろま」


―――「ブス」


―――「なんでそんなこと出来ないんだ」


―――「俺の代わりに全部やっておけ」


―――「お前の顔を見ると吐き気がする。顔を見せるな」


そんなことも言われた。


今考えれば、よくこれまで耐えてきたと思う。


そして大体、周りの取り巻きたちはそれを見て笑っていたり、ジュースをかけられたり……好き放題やられたものだ。


「あっちの方が趣味悪い女ばかり連れて歩くし、何も出来ないだと木偶の坊だと思わない?」


「そうにゃ! その意気にゃ! そのまま卒業パーティーに行ってひと暴れしてくるといいにゃ!」


エディが両手を交互に前に出して、パンチを繰り返している。


可愛いけれど、ひと暴れなんて出来るわけがない……。


向こうが暴れてくれたら別だけれど……。


「迎えも来ないし、行ってくるわね。エディはどうするの?」


「パーティー会場には入れにゃいからにゃ。ついて行ってプラ~っとしているにゃ!」


馬車に一緒に乗り込むエディ。


初めの頃は御者も猫が乗ることを嫌がっていたが、次第に何も言わなくなり、今ではおやつまであげている始末だ。


「吾輩は人間にゃ」と言いながらも、干した魚をもらって喜んでいるエディは、ただの猫だった。


貴族院に着くと、普段は使うことがほとんどないパーティー会場に向かう。


卒業生の保護者と下級生、下級生のパートナー、上位貴族など、たくさんの人が集まっていた。


1人でこんなところを歩くなんて、足がガクガクしてくる。


周りの視線が怖くて、本当は下を向いて歩きたい……。


その気持ちを必死に飲み込み、ただひたすら前だけを見て歩く。


少しばかり周りを見渡してみると、意外にも自分を見ている人なんていないことに気づいた。


「フランチェスカ。前を真っ直ぐ見て歩きなさい。意外にあなたのことを見ている人なんかいないものよ」


小さい頃にお母様に言われたことを思い出す。


あの時から周りにビクビクしていた私は、そう言われても顔を上げることが出来なかった。


「お母様が言っていた通りだったのね……もっと早くに気づくべきだったわ……」


最近では会う度に「シャキッとしなさい」「自信を持ちなさい」など言われてばかりで、どんどんお母様と話すことが少なくなっていた。


「帰ったら久しぶりにお母様に話しかけてみましょう。今更かもしれないけれど……」


そのためにも、まずはこの卒業パーティーを乗り切ろうと心に誓う。


パーティー会場の中に入ると、1箇所だけ異様な雰囲気が漏れ出ている空間があった。


頭の中で警報が鳴るくらいには関わりたくない軍団である。


私は見なかった振りをして別のところに向かおうとした――その時。


その集団が、こちらに近寄ってきた。


「なんだ。いたのか」


沢山の女性を引き連れて近づいてきたのは、婚約者でもあるオルテンシア王太子殿下だった。


「えぇ。ここの生徒は全員参加ですから。ここの学院の卒業生なのに、そんなことも知らないのですね。オルテンシア王太子殿下」


扇子を口元に持っていき、クスクスと笑う。


「そんなの知っているさ。お前は婚約者だからな。特別に近くにいてもいいぞ」


「結構です。沢山女性を侍らせているような人の近くにはいたくありませんので。それに迎えもありませんでしたし、エスコートする気がないのは知っています。どうぞ他の方と仲良くしてくださいませ。それでは……」


軽く頭を下げ、その場を去ろうとした――その瞬間。


「ま、ま、まて! お前、婚約者に向かってそんな態度はないだろう!」


一瞬、頭に「?」が浮かぶ。


婚約者に向かってそんな態度?


……え? それはこっちのセリフなんですが。


「そんなに大きな声を出さないでください。周りの皆様の迷惑です。そして、これだけは言わせて頂きますが……オルテンシア王太子殿下にそんなことを言われる筋合いはございません。まずはあなたの周りにいる方々と、あなたの腕に絡みついているカルミア様を解いてから、その言葉を発言してくださいませ」


声が出ないのか、口だけが動いている。


「お、お、おまえ!! お、お、俺を侮辱する気か!?」


侮辱も何も、婚約者の名前すら覚えていない人が何を言っているのだろうか……。


私は王太子殿下の態度を見て、ため息をついた。


「侮辱しているのは昔も今もオルテンシア王太子殿下とその仲間たちじゃないですか。私の名前すら覚えていないですよね。婚約者になって何年経つと思うのですか……8年は経ちましたよ?」


「覚えているわ! フランソワだろ!」


フランソワって誰だよそれ!と、思わず心の中で突っ込んだ。


私も言い返すのが面倒になり、そのまま踵を返して歩き出す。


「待ってくれフランソワ!」


「フランソワ! お前がいなくなったら誰が仕事をするんだ!」


「わ、わ、わかった。俺の2番目にしてやるから許してくれフランソワ!」


ここまで名前を間違えているところを見ると、本当に覚えていなかったようだ。


しかも2番目ってなんだろうか……。


だんだん、今まで我慢していたものが、ふつふつと煮えくり返ってきていた。

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