あっという間に残り1年。
猫になってから、1年があっという間に過ぎていく。
人として貴族院に通っていた頃は、内気な性格であることが災いして、毎日が長く感じていた。
あれから王宮に何度か足を運んだものの、大きな成果は得られずにいる。
その度に毎回パキラに会うのだから、偶然ではなく必然なのだろうと思うことにしている。
そして今日は、1年の締めくくりであり、3年生の卒業と成人の祝いを兼ねた卒業パーティーが行われる。
これが終われば、いよいよ処刑まで残り1年を切ってしまうのだ。
処刑が近づいてきたからだろうか。
いつ頃地下牢に連れていかれたか、明確に思い出すようになってきている。
貴族院も3年生になると、卒業までの残り2ヶ月は週に一度通うだけの休み期間となる。
卒業後の準備、というのが主な理由だ。
卒業後すぐに結婚する人は結婚の準備をしたり、騎士団などの仕事に就く人はそのための準備が必要になる。
もちろん、さらに勉強したいという人は大学院に通うことも可能だ。
かく言う私も、人である頃は結婚の準備をしていた。
……と言いつつも、ほとんど王太子の仕事を押し付けられ、王宮から出られない日が続いたわけだけど。
そして、たまたま帰宅できた日に事態が一変したのだ……。
「フラン。今日の卒業パーティーは全校生徒が出席するにゃ。国王たちもにゃ。そしてこの日が終われば処刑まで1年切るにゃよ。もっと焦らにゃいと本当に首チョンパされるにゃ!」
自分から見ていても、フランチェスカは処刑について実感がなさすぎではないかと感じている。
できればもっと焦ってほしいところなんだけれど、なんでこんなにマイペースなのだろうか。
「く、く、首チョンパ……わかっているのだけど、私自身どうしていいかわからないのよ。だって、元々嫌われているじゃない。オルテンシア王太子には……」
「はぁ……そういうところにゃ! もっとシャキッとするにゃ。彼奴は自分より目立つやつは嫌いにゃ。ママーに甘やかされてきているからにゃ。性格きつそうにゃのも嫌にゃ。だからおみゃーは、いつもの優柔不断なところを隠して、化粧もいつもより性格がきつくなるようにするにゃ!」
あいつが私を近くに置いていたのは、ただ言い返さず従順だったからだ。
だから、言い返したり見た目がキツい人は嫌いだと思う。
カルミアは……派手というよりも妖艶さの方が強く、パッと見は甘やかしてくれるお姉さんみたいな感じに見えなくもない……。
人によって見え方は違うだろうけど……。
「いいにゃ? 今日を逃すとオルテンシア王太子殿下に会う機会はにゃい! ということは、ズルズルと首チョンパの道が伸びていくのにゃ。首チョンパされたくなかったら抗うしかにゃい! わかったにゃ?」
少しでも危機感を持ってほしいと思った私は、強めにフランチェスカに話す。
今、私を含めお父様たちが必死になって情報を集めているのだ。
なのにフランチェスカときたら……。
……と言っても、人のことはそこまで言えた義理ではないのだけれど。
私だって元は処刑されているわけだし……。
「エディ。わかったわ! とりあえず今日の卒業パーティーはカルミアと被らない色合いで考えるから。そんなに怒らないでちょうだい……」
フランチェスカはため息をついてから、卒業パーティーの準備を始めた。
***
「全く、あそこまでガミガミ言わなくてもいいのに……」
卒業パーティーのための準備でドレスを選びながら、先程のエディの様子を思い返す。
私だって処刑されるのは嫌だし、そのための婚約破棄に向けて色々動こうとは思っているのだ。
ただ、何をしていいか全然思い浮かばない。
こういう時、自分の性格が心底嫌になってくる。
少しは変われたかも……と思っていても、性格を変えるのは結構大変だったりするものだ。
自分の意識もあるのだろうけど……。
自信のなさは、未だに変わらない。
人のせいにしたくはないけど、きっとそうなったのも王太子が原因なんだろう。
「あれだけ罵られてたら、誰だって自信なくなるわよね……」
でも、そんな感じだったから、全ての罪を擦り付けられたんだと思う。
「処刑まで……あと1年ないのか……」
そう考えるだけでも、気分は憂鬱だ……。
「とりあえずドレスの色は濃いめの青にしましょう。あとは目がつり上がって見えるようにアイラインで調整して……赤い口紅だと浮くから、口紅は薄桃色がいいかもしれないわ」
普段は薄いピンク系のドレスが多かったから、青いドレスなんて着るのは新鮮だ。
実際はピンクよりも青系が好きなのだけど、なぜか今まで着させてもらえなかった。
頭には青いバラのコサージュをつける。
着替えを終えてエディの元に戻ると、顔を少し上にあげて誇らしそうに――
「ふむ。いつもと雰囲気が違っていいにゃ。あとは背中を丸めにゃいこと。堂々と歩くにゃ! もし不安なら扇子で口元隠すにゃよ!」
やはり中身はフランチェスカ。
ピンクよりも青いドレスの方が好きそうな雰囲気が、猫であっても私そっくりだった。




