エーデルワイスは王宮を冒険する。
ブラオベーレの話を聞いていて、名前にとても聞き覚えのある人がいたことを思い出す。
「ダリア・パンドーレ侯爵令嬢……は、きっとこの間話したフィオーレと揉めていた人にゃ」
あの時は確か、公爵子息と婚約していると言っていたが、恐らくお兄様と婚約しなくなった、もしくは婚約が白紙になったことで、公爵子息と婚約することになったのだろう。
ダリアに話が聞けるのが一番いいけど、私が猫である以上、話すことは難しい。
一度この件については持ち帰って、フランチェスカに聞いてもらうのがいいだろうと考えた私は、とりあえず今日向かおうと思っていた王宮に向かうことにした。
この姿で王宮に向かうのは二度目のため、王宮までは特に問題なくたどり着けるはずだが、以前より人通りが多いこともあり、少し着くのに時間がかかりそうだと思っていた矢先、声をかけられる。
「おい。また会ったな……」
「パキラ。最近よく会うにゃ。もしかして迷子かにゃ?」
パキラは思っている以上に方向音痴らしい。
この間も迷子になっていたし……いつも外を歩いていると出会うので、とても不思議だ。
「いや……迷子ではないぞ。たまたま散歩していたらエディを見かけて声をかけたんだ。で……今日はどこに向かっているんだ?」
「この間行った王宮に向かっているのにゃ」
今日は前よりも人通りが多く、進むのに時間がかかっていることも伝えると、パキラが急に笑い出す。
「ククッ……王宮は逆方向だぞ。そりゃあ時間がかかるわけだ。ハハハ」
以前もずっとまっすぐ行けば着いていたので同じように真っすぐ歩いていただけなのだが……一つだけ違うことを思い出した。
今日は貴族院から来たわけではなく、ブラオベーレの馬車で途中まで一緒に来ていたということを……。
「やってしまったにゃ……パキラありがとうにゃ。吾輩はもう行くにゃ」
「……俺も暇だからついていく」
片手をあげて挨拶をすると、以前と同じように後ろからパキラがついてきた。
「それにしても、なんで王宮にばかり行くんだ?」
「パキラは猫だからわからないだろうにゃ。人の都合というやつにゃ」
王宮に行く理由は一つ。
カルミアとその周りの動向を探るためだ。
そしてオルテンシア王太子殿下との浮気現場を目撃できたら尚良い。
あとは、国家反逆罪……このよくわからない罪の内容を、今から探っておきたいというところもある。
「なるほどな。人の都合か。それに巻き込まれている猫も大変だな……」
「そうにゃのにゃ……」
ため息をつきながら伝えると、あっという間に王宮にたどり着いた。
さっきまで全然着かないと思っていたのに……まさかこんなに近くにいたとは驚きだ。
以前と同じように塀に上って王宮の中に入り込む。
王宮の中に入ると、国王と王妃が二人で話をしている姿が見えた。
少し隠れて様子を伺う。
急に止まったからか、勢いよくパキラは頭をぶつけていた。
「急に止まるなんて……何があったんだ?」
「静かにしろにゃ……国王と、王妃がいるのにゃ」
見つからないように声が聞こえるところまで近づくと、声が聞こえてきた。
「本当に、オルテンシアはあのままでいいのですか? あのままでは愚王になってしまいますよ……」
「仕方あるまい。何を言っても変わらないのだ。そのためにフランチェスカと結婚させるんだし、あとはフランチェスカに任せよう」
オルテンシア王太子殿下だけでなく、国王までもが屑だったと知った瞬間だった。
王妃も言っても駄目だと思ったのか、それ以上何か言うことはなかった。
私と結婚してもいいことなどないと思うけど、従順だからいいということなのだろうか……。
それにしても、パーティーがあるわけでもないのにやたら派手な装飾を付けているな。
二人とも……もしかしてこういったところで国民からもらったお金を使っていたのだろうか……。
あとは、他国と通じてこの国を襲わせようとした……なんてことも国家反逆になりそうだと思った私は、宰相の動向も追っておく必要があるなと思った。
恐らく、今までも国王はYESしか言ってこなかったのだろう……。
「そうにゃ、あいつのにゃまえはYESマンにゃ」
「ブフッ。真剣な顔して何を言い出すかと思えば……なんだそのYESマンって……」
「あの国王はきっと他の人たちの言いなりで、仕事も任せっぱなしだと思うのにゃ……それこそ、あの愚息と変わらないと思うにゃ。だからYESマンにゃ!」
パキラはその返しに何がツボったのかわからないが、お腹を見せて笑っていたので、私は見ないフリをして国王たちの方に目を移した。
それにしても、まだ時刻はお昼前である。
お茶の時間にも早いし、朝食の時間は過ぎているはずだ。
もちろんお昼前なのだから昼食にも早い時間だ。
そんな時間にここにいるということは……執務はしていないということだろう……。
もしかしたら、今までの執務の量がやたらと多かったのは、王太子の分だけでなく国王の分も入っていたのではないかと思ってしまった瞬間だった。
「この国の王族は滅びればいいにゃ……」
小さい声で思わず本音がこぼれてしまう。
二人を見ていても何も話の進展がなさそうだと感じた私は、オルテンシア王太子殿下のところへ向かった。




