次の目標が決まったようです。
「ふぁぁぁ」
フランチェスカは朝になると、自分でカーテンを開ける。
普通であればメイドの仕事だが、アマレッティ侯爵家では、自分でできることは自分で行うというのが昔からのルールだ。
ドレスなどに着替える時はメイドたちに手伝ってもらうが、貴族院に行く時の準備はすべて自分で行う。
「あら、エディ。今日は眠そうね。」
昨日は真夜中の会議があったこともあり少し眠いが、猫になった分は寝る時間がたくさんある。
「大丈夫にゃ。それよりも、オルテンシア王太子殿下と婚約破棄する算段はついたのにゃ?」
「そうね。とりあえずカルミアとオルテンシア王太子殿下が浮気でもしてくれれば早いと思っているんだけれど……最近カルミアの姿を見ないし、早ければ証拠も集められるのじゃないかしら。」
確かに浮気が一番早いが……そんなに上手くいくだろうか……。
「ふむぅぅぅ。それは難しいかもしれないにゃ。あの王太子は隠すのが上手いにゃよ。じゃなければ吾輩が首チョンパされることはなかったにゃ。」
「く、く、く、首チョンパ……?」
しまった。処刑の内容を言っていなかったのを忘れていた。
「言ってしまったのは仕方がないにゃ。そうにゃ。吾輩は首チョンパされたのにゃ。あの二人に……」
悪女にされていた理由は未だに分からないが……ここはこれから調べていかなければならないところだ。
「貴族院にいる間は王宮に行かないから気づかなかったのにゃ。それにあの王太子は二人で会うことはほとんどしない。大体、他の令嬢も合わせて呼ぶにゃよ。」
昔からそうだ。
数人の令嬢をまとめて呼んでお茶会を開く。
もしかしたらその中の一人と恋仲だったりするのかもしれないが、手紙などもとことん隠すし、二人で逢瀬している姿を見た者は誰一人いない。
「そ、そんな……」
あれだけカルミアが学院に来ていないところを見ると、王宮に入り浸っているのだろう。
ということは――だ。
「一つだけ、もしかしたら上手くいくかもしれない方法があるにゃ。この件は吾輩に任せてほしいにゃ。おみゃぁは他に方法がないか考えてみるにゃ。首チョンパにはなりたくないにゃろ?」
魅了魔法にかかるのであれば、何かしら解除する方法もあるはずだ。
カルミアと二人でいることを見ていても誰も口を割らないとすれば……その衛兵たちも魅了魔法にかかっている可能性が高いだろう。
「そうね!処刑なんか絶対いやだわ!私も私で他に何か方法がないか試してみる。例えばあの王太子が苦手なタイプの女を演じてみるとか……」
「そ、それにゃ!おみゃぁはまず彼奴に嫌われる女になるのにゃ。彼奴は派手で、なんでも言うことを聞いてくれて、自分を甘やかしてくれるやつが好きにゃ。次の目標が決まったにゃ!」
私たちは立ち上がって、二人で拳を合わせる。
「オルテンシア王太子殿下に嫌われる女を目指すわ!」
***
「この間、学院にいなかったがどこに行っていたんだ?」
この間とは一体いつのことか考えてみる。
もしかして、エディと一緒にこの街を探検していた時だろうか。
「あぁ、この国の王宮に潜り込んでいたんだ。」
あの時は面白かった。
まるで自分が人だとでも言うように道路の真ん中を歩くし、思っていた以上の方向音痴で、よくあれで一人で王宮まで行こうと思っていたなと思ったくらいだ。
「なに!?王宮に潜り込んだ?」
「言ってなかったか?フランチェスカ嬢の飼っている猫が、一匹で王宮に行くと言うから危なっかしいし、ついて行ったんだよ。」
箱入り猫という感じで、周りの猫に絡まれたらひとたまりもなさそうだったしな、と付け加えると、ため息が返ってくる。
「そういうことは先に言ってから行ってくれ!心配するだろう。」
エリオントが心配するなんて珍しいと思っていると……自分が発した言葉が少し恥ずかしかったのか、顔を赤くして目を逸らした。
「そ、それで……何か分かったのか?」
「カルミアがオルテンシア王太子殿下の所にいた。他にも数人令嬢たちがいたから、二人が恋仲になっているということまでは分からなかった……が……」
「が……?」
「オルテンシア王太子から魔法の反応が感じられた。少なからず魔法にかかっていると思う。あと周りにいた衛兵たちもだ。」
本当に微量な魔法反応だったが、少しずつ魔法に染まりつつあるように感じたのは確かだ。
あとはエディの雰囲気を見ていると、カルミアとオルテンシア王太子殿下と何かしらの因縁があるように感じる。
「エディがこれからも王宮に行くだろうから心配だし、一緒について行こうと思っている。」
「その方がいいかもな。お前もカルミアの魔法には気をつけてくれよ?恐らく魅了系の類だろうからな。」
魅了魔法はかなり厄介だ。
今までに国が滅亡したなんて話も聞く。
俺はエリオントの言葉に頷き、エディを探してくると言って部屋を出た。




