真夜中の会議
「さて、ここ1ヶ月の調査内容について話し合おうか。」
フランチェスカが寝静まった頃、1ヶ月くらいの割合で開催されるのがこの会議だ。
勿論参加者は、お父様、プープリエお兄様、ブラオベーレ、そして私、エーデルワイスである。
まずは俺からと言って手を挙げたのはプープリエお兄様だ。
「この1ヶ月、カルミアの家系について調べられるところまで調べてみました。」
カルミアの魔法は「魅了魔法」であっていたらしい。
ただ、本人は魔法が使えることを知らないようだった。
「以前エディが言っていましたが、過去4回は私たちも途中からカルミアの魅了魔法にかかっていた可能性があります。」
そして正気に戻るのが処刑間際、もしくは処刑後だったのではないかということだった。
お兄様曰く、あの辺りの記憶は曖昧なところも多いらしい。
「魅了魔法の発動条件はにゃんにゃのにゃ?」
「そこはまだ分かってないんだけど、恐らく一度目を合わせたり話したりすることが発動条件なのではないかと思っている。あとは手を握ったりとかだろうか。エディがここに来る前のことは覚えているか?」
記憶が飛び飛びだから全てを覚えている訳ではないが、初めて声をかけられた日に肩に手を置かれた記憶があることを伝える。
「やはりね。私もフランチェスカがカルミアを友人として紹介してくれた時に握手を交わしているんだ。もしかしたらそれかもしれない……もう少し調査をしてみるよ。」
お兄様は私の話を聞いて少し確信がもてたのか、もう少し調査を続けてくれるようだった。
「次は僕が……」と言って話し始めたのはブラオベーレだ。
「この1ヶ月、義姉上の動向を探っていました。」
「にゃ!?」
あんなにお兄様と仲睦まじい様子だったのに、何かあったのだろうか……。
私はお兄様とブラオベーレを交互に見る。
「姉上は知らなかったと思いますが、1番初めの処刑の時は、兄上は別の方と結婚されていたのですよ。」
ややこしいが確かに私は今回初めて巻き戻っている。
ということは、その前の記憶はないということだ……。
淡々と話し続ける弟の言葉に、私は一瞬頭がついて行かなくなった。
私の頭に「?」が飛んでいるのが見えたのだろう。
「あまり時間がありませんので、姉上にはまた後日詳しくお伝えしますので、先に進めますね。」
私はその言葉にコクコクと頷く。
「兄上がいない間は特に変わった様子は無いですが、誰かと手紙のやり取りをしているようでした。手紙の相手までは確認できなかったのですが……。」
「そうか……カルミアとカトレアは血縁関係にあるはずなんだが……。まだ証拠がないからこの件については慎重に進めていこう。」
ここまで静かにしていたお父様が、お兄様とブラオベーレに伝えると、二人は頷いた。
「最後は私にゃ。」
テーブル上に登り、二本足で立つ。
「最近フランのみゃわりは静かにゃ。」
オルテンシア王太子殿下が一度現れてから、カルミアが学院に姿を現していないということを伝える。
「確か過去4度は何度かオルテンシア王太子が学院に来て、フランチェスカを王宮に連れ帰っていたと思うのだが……。」
「フランがガツンと言ったにゃ。それからは一度も見かけてにゃいにゃ!」
貴族院にいる間は公務は免除になることを王太子殿下に伝えたこと。
文句があるなら直接自分のお義母様に聞いてくださいと言ったことを伝える。
「今までのフランチェスカであれば、言い返すことが出来なかったであろうが、これは今までと全く道が変わっていると言っても良いだろう。」
お父様が少し嬉しそうな顔をしている。
もしかしたら、気弱で何も言い返すことが出来ず王太子の言いなりになっている姿を見て、ヤキモキしていたのはお父様だったのかもしれない。
この時、少しお父様に何か相談していたら未来は変わっていたのかなと思った。
猫の姿になってもフランチェスカはフランチェスカだ。
きっと今からでも遅くはないだろう。
何かあった時は相談するようにしようと心に決めた。
「あと、久しぶりに王宮に行ってきたにゃ。」
「「「え!?」」」
さり気なくこの間王宮に行ってきたことを伝えると、三人の顔が一斉にこちらを見た。
「どういう事だい?エーデルワイス。」
私を抱き抱えて、自分の顔の位置に私の顔を持ってくるお兄様……。
目が笑っていなくて、思わず「ひぇ。」と声を上げてしまった。
どんどん手に力が入ってきて、すごく痛い。
「プープリエお兄様。痛いのにゃ……話すにゃ。話すから下ろして欲しいにゃ。」
仕方がないなと言いながら、お兄様は自分の膝の上に私を下ろした。
そう、下ろしただけでガッチリと抱き締められているので、逃げるのは不可能そうだ……。
「カルミアが最近貴族院に来ていなかったから、王太子のところにいるのではないかと思ったのにゃ。それで暇だから行ってみたのにゃ。」
パキラという猫が一緒だったが、その事はあえて言わずに話を続ける。
「猫だから簡単に潜り込めたのにゃ。」
「それで?どうだったんだい?」
「いたにゃ……。」
いつもオルテンシア王太子殿下がお茶会を開いている東の庭園に、他の貴族令嬢とカルミアがいたことを伝える。
見たところ、オルテンシア王太子殿下はまだ魅了魔法にはかかっていなさそうなことを伝えた。
「どうして魔法にかかっていないことがわかるの?」
ブラオベーレが不思議そうに問いかけてきたので、その理由を簡単に説明した。
以前、処刑される前に入っていた地下牢に来る兵士たちは虚ろな目をしていたこと。
カルミアを見ると、お酒に酔ったような顔になる人が多いこと。
2つ目については、貴族院で色々な人を観察していると分かったことも合わせて伝える。
「なるほど。目を見れば魔法にかかっているかわかるということがわかっただけでも大進歩だ。時間も時間だからね。今日はこの辺でお開きにしよう。」
そう言って皆が立ち上がると同時に、お父様が私に声をかけてきた。
「エディ。あまり無茶はしないで欲しいんだが……なかなか王宮の情報は入らないからね。時間がある時だけで構わないから、潜り込んでもらっていいだろうか。」
少し心配そうな顔で覗き込むお父様を見て、出来れば行ってほしくないという感情が伝わってくる。
でも私は猫だし、フランチェスカの時の記憶を思い出しながら歩ければ、一番適任だろう。
「お父様。無理はしにゃいにゃ。みゃかせるにゃ!」
そう伝えると、お父様は「頼んだよ。フランチェスカ。」と言っていた。
処刑の理由は聞く時間がなかったので、またの機会になりそうだ……。




