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悪女として処刑された私、猫に転生したので破滅フラグを回避します  作者: ゆずこしょう
処刑をされないために……

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カルミアの魔法について考える。

オルテンシア王太子殿下が学院に来てから、一か月が過ぎていた。


あれから学院に一度も現れることはなく、私的にはのんびり過ごすことができている。


カルミアはと言えば……あれだけ毎日追い回されていたというのに、全く姿を現さなくなった。


「カルミアがいないだけで、こんなにゆっくり過ごせるものなのね。」


以前の私であれば、カルミア以外に話す人がいなかったこともあり、こんな状況だと孤独を感じてしまっていたと思う。


でも今のフランチェスカは違う。


孤独とは感じていないし、一人の方がゆっくりできて、むしろいいとすら思える。


「いみゃ思うと、吾輩もカルミアの魔法にかかっていたのかもしれないにゃ……」


「え? 魔法!?」


強い意志を持っていなかったり、異性に対してかかりやすい魔法もあるのではないかと思う。


この考えに至ったのは、お父様に魔法について聞いた時だった。


アマレッティ家も魔法を持っているということ。


お父様やプープリエお兄様、ブラオベーレは時渡りの魔法を使っていたというのに、なぜ過去四回、私だけ使えていなかったのか……。


恐らく、絶望して生きることを諦めていたからなのではないかと思う。


そして五度目の今回、猫ではあるものの時渡りが使えた理由。


よくよく考えれば、処刑間際に「生き返るなら猫になりたい」と願った気もする。


残念なことに、ショックが強かったのか、その時の記憶はほとんど残っていないのだけど……。


「そうにゃ。おみゃーも授業で、この国の歴史は習っているはずにゃ。」


「え、えぇ……確かに習っているわ!」


「その歴史に、昔は魔法が使えていたという話はなかったかにゃ?」


フランチェスカは、授業の内容を思い出しているようだった。


魔法があった時代は、今から三百年ほど前。


そこから徐々に生活が発展し、魔力に頼らなくても暮らせるようになっていった。


使われなくなったことで、“必要のないもの”と見なされたのだろう。


やがて魔力そのものが失われ、魔法を使える者はほとんどいなくなったと言われている。


「一部の人は、みゃだ魔法が使えると言われているにゃ。その一部の中に、カルミア・パンナコッタの家系があるのだと思うにゃ。」


「そ、そうなのね……」


もちろん、私たちもその“一部”に含まれる。


けれど、このことについては決して口外するなと、お父様たちに強く言われているため、話すつもりはない。


最近、調べて分かったことだが、パンナコッタ家は比較的新しい新興貴族だった。


貴族位を得た理由は、カルミアの祖父が芸術家として名を上げ、王族の肖像画を任されるようになったためらしい。


彼の描く絵は、人を強く惹きつけるものだったとも言われている。


ただし、カルミアやその父には芸術的才能はなく、家としては不安定な立場にあるらしい。


「うむ。恐らくカルミアの魔法は、“相手を魅了する”ものだにゃ。」


相手の思考や感情に干渉し、自分に有利なように動かす。


あるいは幻覚を見せて、認識を歪める。


そんな類のものではないかと考えられる。


「魅了魔法……。確かに、以前の気弱な私だったら、かかっていてもおかしくなかったかもしれないわ……。カルミアと話していると、少し頭がぼんやりするというか、靄がかかったような感じになることがあったの。一瞬だったからすぐ戻ったのだけど……それかしら?」


「そ、それにゃ! フラン、いつ頃そんな状態になったか思い出してほしいにゃ!!」


フランチェスカの頭に飛び乗り、揺さぶる。


できればその時点で教えてほしかったのだが。


「エーデルワイス! 頭に乗るのはやめてぇ……重たいわ! 思い出せるものも思い出せなくなるじゃない!」


仕方なく頭から降りて、膝の上に座る。


フランチェスカは髪を整えながら、静かに考え始めた。


***


「エリオント。最近外を見ているけど、何を見ているんだい?」


教室の窓から外を眺めていると、パキラ・クラフティが声をかけてきた。


「パキラか……いや、なに。いつも昼休みに猫とじゃれている子がいてな。最近、以前よりも表情が豊かになっていて、見ていて面白いんだ。ほら……今も猫と喧嘩している。」


「エリオント殿下が令嬢に興味を持つなんて珍しいね。僕はあの猫の方が気になるけどね。なんだか魔法の気配がする。」


この国ではすでに廃れてしまった魔法も、サントノーレ国ではまだ一般的に使われている。


一部の家系に能力者が残っていることは知っていたが……カルミア以外にも存在していたとは予想外だった。


「パキラ。お前の魔法で、あの猫を調べてくれないか? 何か手がかりになるかもしれない。」


「分かった。あの子、フランチェスカ・アマレッティ侯爵令嬢だろ? オルテンシア王太子殿下の婚約者だったはずだけど、この前揉めていたのを見たよ。カルミアにもよく絡まれていたし……ちょっと気になるね。」


そう言ってパキラは教室を出ていった。


最近、この国でも何かが動いている。


父や兄も、その点を気にしていた。


何も起きなければいいが――そう簡単にはいかない気がした。


そう思いながら、再び窓の外を見る。


先ほどまでいた一人と一匹の姿は、もうどこにもなかった。

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