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キャンピングカーで異世界放浪してたいだけなんだが 〜元社畜の俺、飯目当ての美少女契約者が増えたり勇者扱いされている〜  作者: 暁 とと


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第3話 ヤンデレ化

とりあえず、助手席からソファーの上に寝かせ、しばらく様子を見ることにした。


「うう……」

「お、おい。大丈夫か?」


 俺の言葉が伝わるかどうかは分からないが、意識を取り戻した女騎士に声をかけてみた。

 女騎士は辺りをキョロキョロと見回し、状況を確認している。もしかしたら混乱して俺を攻撃してくるかもしれない、と思い、少し距離を取った。


「ここは……?あなたは誰ですか?」


 どうやら、日本語が通じるようだ。女騎士は警戒しているのか、剣を構えている。


「べ、別に怪しい者じゃないぞ。俺は、あの大きな魔物からお前を助けた、命の恩人だ!」

「そ、そうですか。それは……助けていただき、ありがとうございました」


 そう言って、警戒を解き、深々と頭を下げられた。


「私の名前は、アイリス・レイです。レイと呼んでください」

「あ、こちらこそ丁寧にありがとうございます。俺の名前は、佐藤築だよ」


 こうして、挨拶を交わした。


「ところで、この馬車で助けてくれたのですか?」

「馬車……ああ、これのことか。これは車って言って、馬の力を借りずに、エンジンで動くんだよ」

「そ、そうですか……エンジンや車というものはよく分かりませんが、凄い物だということは分かりました」


 いまいち理解していない様子だったが、理解してくれた。


 そんな話をしていると、女騎士のお腹の虫が『ギュルル』と大きな音を立てた。


「お腹空いてないか?」

「めっちゃ空いてます!」


 ツナ缶を渡そうとしたが、開け方が分からないだろうと判断し、俺は缶を開けて皿に移し、レイに差し出した。


「なんですか、これは?」

「ツナ缶。マグロだよ」

「マグロ……ですか」


 レイは俺から受け取ったツナを、フォークで恐る恐るすくい、そっと口に運んだ。


「ん〜♡美味しいです!!なんですかこれは!?ツナの肉質がとても柔らかくて、口当たりもなめらか……初めて食べる味です!!」

「じゃあ、それをこの食パンの上に乗せて、この白いマヨネーズをかけてみな」


 俺の言葉通り、パンにツナを乗せ、マヨネーズをかけると、二口で平らげていた。


「佐藤さん……これ、美味しすぎます!!王族の料理を食べたことがある私の舌が、唸りを上げています!!」


 まさかツナ缶ひとつで、ここまで喜ばれるとは思わなかった。

 こんなに幸せそうにツナを食べる人、初めて見た。

 そこまで言うなら、と最後のツナ缶をレイに差し出した。


「佐藤さん!! 本当にいいんですか!?」

「ああ、いいよ」

「ありがとうございます!!」


 そう言ってレイは、パンの上にさらにツナを山盛りにし、新品だったマヨネーズをほとんど使い切っていた。


「何か、ほかにはないんですか?佐藤さん」

「急におねだり始めたな……じゃあ、これでも食べてな」


 ツナ缶やパンだけでは無いのか、ご飯の要求をしてきた。なので、四本入りのちくわを袋から出して渡すと、レイは嬉しそうに頬張った。

 しかも、残りのマヨネーズをつけて食べている。


「ほ、他にはないんですか!?」


 なおもせがまれ、ポテチなどのお菓子類や、カレーとご飯まで差し出すと、レイは勢いよくバクバク食べ始めた。


 見た目は華奢で可愛らしい女性なのに、胃袋は異次元とでも繋がっているんじゃないかという食べっぷりだ。

 というか……日本から持ってきた食料が、全部なくなった。


「おいおい、俺の食料、全部消えたぞ?」

「美味しかったので、つい!あ、右手を出してください」

「右手?」


 なぜか、急に右手を出すよう言われた。


「はい」

「ありがとうございます。少し動かないでくださいね」


 そう言うと、レイは俺の右手の甲に手を当て『右手を証に、汝をマスターとする』と呟いた瞬間、ズキッとした痛みが走った。


 右手を見ると、何か変な紋章が浮かび上がっている。


「な、なにこれ!?」

「これで、あなたは私のマスターです!」

「は、え?ちょっと待て、状況がまったく掴めないんだが!?」


 そう言うや否や、レイはいきなり俺の前で膝をついた。

 マスターだの契約だの、意味不明な言葉を並べられて、頭が追いつかない。


「私は、あなたと契約を結びました。これにより、マスターと私は繋がり、運命共同体となったのです」

「はぁぁ!?ふざけんなよ!」

「ふざけてませんよ。私を助けてくれて……それに、こんなに美味しいご飯を用意してくれる人と契約したいと思うのは当然です!!マスターのご飯、最高です!」


 そう言ってきた。


「じゃあ、契約破棄で」

「え、私を捨てるんですか……?美味しいご飯で囲って、依存させておいて? ……そんなの、許されるわけないじゃないですか。だって私、あなたの物になっちゃったんですよ?」


 急にヤンデレ化してきた。

 このまま契約破棄を口にし続ければ、腰に下げた剣で一突きされそうな雰囲気を醸し出している。


 俺は、契約についてはとりあえず了承する事にして、その場を収めた。

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