第13話 プリン完成
森の中に入り、夜ご飯の準備を始めた。レイが薪集めをしている間に、俺はドデベアの肉をスライスして焼いて食べてみたが、予想以上に硬く、焼き肉としては不向きだった。噛めば噛むほど顎が疲れるタイプの肉だったので、肉をミンチにして、ハンバーグにすることにした。
「マスタープリン!プリン!」
「分かってるよ。じゃあレイ、この肉を原型がなくなるまでミンチにしてくれ」
「え、いいんですか?」
「いいよ」
薪集めを終えて戻ってきたレイは、プリンを連呼しながらねだってきた。
ドデベアの肉をミンチにするように指示すると、目を丸くして驚いた表情を浮かべる。
この世界には、肉をミンチにして作る料理がないのかもしれないな。
レイが肉を刻み始めたのを確認し、俺はプリン作りに取りかかった。
鍋に卵を十個割り入れ、白身と黄身が均一になるまでしっかり混ぜる。そこに、アマスギから作った粉状の果糖を加え、さらに混ぜ合わせた。
牛乳を焚き火台にかけ、沸騰直前まで温めてから温度差で卵が固まらないよう、慎重に注ぎながらよく混ぜ、それを綺麗な布でこし、大きな容器と小さな容器二つに移した。
容器ごと鍋に入れ、少量の水を張って蓋をする。湯気が立ってきたら火を弱め、二十〜三十分ほどじっくり蒸し始めた。
「マスター、こんな感じでいいですか?」
「十分だよ」
レイがミンチにしたドデベアの肉を別の容器に移し、玉ねぎのみじん切り、卵、塩を加えて粘りが出るまで混ぜる。
プリンを蒸している横でハンバーグを焼き始め、焼き目がついたところで蓋をし、蒸し焼きにして中までしっかり火を通した。
「マスターまだですか〜」
「もう少しだよ」
プリンが蒸し上がり、鍋から取り出して粗熱を取っている間に、ハンバーグのソースを作り始めた。
露店で買ったトマトを潰し、塩と果糖を加えた簡単な即席ソースだが、今ある材料ではこれが限界だ。
「よっし、いい感じかな」
「ようやくですか!」
「ほら、食ってみな」
レイには大きめのハンバーグを一つ渡した。
「うっま!うまいです!マスター!!」
「もう少し調味料があれば、もっと美味くできたんだがな。今はこれが限界だ」
「それでも、めちゃくちゃ美味いです!」
口いっぱいに頬張り、夢中で食べている。まだまだ食べそうな勢いだったので、俺は残りも全部焼いた。
「そろそろ、プリンはいいかな〜」
「あ、プリン!プリン早く食べたいです!!」
ハンバーグに夢中で忘れていたのか、思い出したようにプリンを連呼しだす。
「ほら、食べてみな」
「あっま!うっま!マスターと契約して正解でした!」
「あっま〜い。ちょうどいい甘さだな。異世界で甘味が食えるのは本当に癒される……」
レイは最初こそスプーンで食べていたが、まどろっこしくなったのか、最後は飲み物のように器を傾けていた。
「……ん?」
「マスター!」
食事の最中、遠くからガサガサと草を踏み分ける音が聞こえた。
レイは即座に剣を手に取り、周囲を警戒する。
「あれって……」
「犬の獣人族ですね。人間とはある程度友好関係にあるので、基本的には襲ってきません。多分……」
木の影から現れたのは、全身がもふもふで、ピンと立った大きな耳が特徴的な獣人だった。
「おい、そこの人間」
どこか見下したような口調で、獣人は近づいてくる。
「その、甘い匂いがする物をニルに渡すのです!」
「これか。いいぞ」
指をさしてきたプリンを渡すと、獣人は距離を取り、プリンを食べ始めた。
レイは明らかに不満そうな顔で、こちらを見てくる。
「うま!うま!人間のくせに、こんな美味しいものを食べてズルいのです!」
「プリン、美味しいか〜」
「プリンとやらを、もっとよこせ!」
距離を取りつつも、強気に要求してくる。
「もう材料がないから無理だよ。でも、ハンバーグならあるけど……玉ねぎとか大丈夫か?」
「ふざけるなです!ニルは好き嫌いないです! どうだ、偉いか!偉いなら、そのハンバーグを早くよすのです!」
ニルはハンバーグを受け取り、一口かじった。
「……これも、美味いのです!」
「マスターの料理は美味しいでしょ!」
レイは自慢げに胸を張っていた。




