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数学教師はサボりたい(習作)  作者: 中村正樹
山中高校の職員室
49/50

給食の「公平な分割」と、フリーライダーの戦略

この物語はフィクションです。現実の学校現場とは全く関係ありません。ご一読ありがとうございます。

山中高校の昼休み。今日の給食は、教職員の間でも絶大な人気を誇る「特製カスタードプリン」でした。しかし、配膳ミスにより、職員室に届いたプリンが**「1個」**余ってしまいました。


**エミ先生:**「まあ! 輝くような黄金色のプリンが1個、私たちを誘惑していますわ! 中村先生、鈴木先生、岡田先生……。これ、どうやって分けますの? 喧嘩(争い)は美しくありませんわ!」


**岡田:**「早い者勝ちっすよ! 筋肉が一番多いやつが食う、それが自然の摂理っす!」


**中村:**「岡田先生、ここは弱肉強食のサバンナではなく、文明の利器である数学を尊ぶ職員室です。……鈴木先生、この状況を平和的に解決するための**『ケーキカット問題(公正分割)』**のアルゴリズムを提示してください」


**鈴木:**「……了解しました。不満のない分割を実現するためには、**『一人が切り、もう一人が選ぶ(I cut, you choose)』**というプロトコルが最適です。切る側は、自分が損をしないよう正確に二等分しようと努め、選ぶ側は大きい方を取れるため、両者に不満が残りません」


**中村:**「しかし、今回は3人……いや、4人います。人数が増えると、このアルゴリズムは再帰的に複雑になりますね。……あぁ、計算が面倒だ」


**エミ先生:**「まあ、そんなに難しく考えなくても……。あ、岡田先生! そこでプロテインを飲んでいる間に、私が3等分に切り分けますわね!」


エミ先生が包丁を手に取った瞬間、中村先生はあえて無関心を装い、読みかけの新聞を広げて椅子を深くリクライニングさせました。


**中村:**「……私は、そのプリンには興味がありません。皆さんの好きなように分けてください。私はただ、この静かな時間を享受できれば……(あぁ、誰かが『余り』を残すか、遠慮して私の分を置いていく確率に賭けよう……)」


**鈴木:**「……中村先生。それはゲーム理論における**『フリーライダー(ただ乗り)』**戦略ですね。資源の獲得競争(分割作業)から一時的に離脱することで、心理的負債を負わずに、最終的に分配の恩恵だけを享受しようとする。……残念ながら、エミ先生は今、あなたの分を除いた『完璧な3等分』を完了しました」


**エミ先生:**「はい、どうぞ! 鈴木先生、岡田先生! 中村先生はいらないとおっしゃいましたものね。お言葉に甘えて、私たちが美味しくいただきますわ!」


**中村:**「…………。……いや、エミ先生。数学的な観点から言えば、私の『興味がない』という発言は、あくまで『現時点での優先順位』を示したものであって、分配権の永続的な放棄を意味するものでは……」


**岡田:**「(一口で食べて)うめえっす! 中村先生、ストイックでかっこいいっすね!」


中村先生の「戦略的サボり」は、高度な理論を駆使した結果、**「利得ペイオフがゼロ」**という最も悲惨な結末を迎えました。


**中村:**「……鈴木先生。次の配膳ミスがあった時は、『ナッシュ均衡』に基づいたより強固な分配協定を事前に結んでおきましょう」


**鈴木:**「……承知しました。ただし、その協議にかかる時間的コストは、プリン1個のカロリーを上回るでしょうが」

演習問題

2人の人間が1つのケーキを「自分の方が損をした」と思わずに分ける手法として、「一人が切り、もう一人が選ぶ」やり方を何と呼びますか?

1. ゼロサム分割

2. 非羨望分割(Envy-free division)

3. 比例配分

4. 囚人の分割


解説

「非羨望分割」とは、どの参加者も「他人の受け取った分の方が自分の分より良い」と思わない状態を作る分割法のことです。

**正解:2**

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