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数学教師はサボりたい(習作)  作者: 中村正樹
山中高校の職員室
47/50

出欠確認の「確率論」と、雨の日の偽造証明書

この物語はフィクションです。現実の学校現場とは全く関係ありません。ご一読ありがとうございます。

梅雨時のある朝。職員室に、男子生徒数名が、揃いも揃って「電車の遅延証明書」を持って現れました。


**男子生徒:**「中村先生、これ。雨のせいで電車が止まって……。不可抗力っす、遅刻消してください!」


彼らが去った後、中村先生は提出された紙束を指先で弾きながら、溜息をつきました。


**中村:**「……鈴木先生。今日、鉄道会社の公式サイトを確認しましたが、当該路線に発生した遅延は最大で3分です。しかし、彼らが持ってきたこの証明書には『15分』と印字されている。……鈴木先生、この現象をどう説明します?」


**鈴木:**「……中村先生。統計的解析によれば、本校における『雨の日の遅延証明書提出率』は、晴天時に比べて **85%** 跳ね上がります。一方で、実際の運行トラブル発生率との相関係数はわずか **0.12** です。つまり、ほとんど無相関(関係がない)と言えます」


**中村:**「つまり、彼らは『雨が降れば、駅員も忙しくて証明書の発行が雑になる』という**条件付き確率**を悪用し、あらかじめストックしておいた古い証明書や、他路線のものを提出している……。彼らのズル賢さの期待値だけが、無駄に高まっていますね」


そこへ、長靴を履いて意気揚々と出勤してきたエミ先生が割って入りました。


**エミ先生:**「まあ! 中村先生、そんなに疑ってばかりでは、心にカビが生えてしまいますわよ! 雨の日は、カタツムリさんもゆっくり歩きますし、生徒たちの心もきっと『雨宿り』したくなってしまうのですわ。これは数学ではなく、情緒の問題ですわね!」


**中村:**「エミ先生、情緒で出欠管理をしたら、うちのクラスの出席率は正規分布を無視してゼロに収束しますよ。……さて、鈴木先生。この『偽造証明書』の真偽を判定するための、**ベイズ推定**に基づいたアルゴリズムを組みましょうか」


**鈴木:**「了解しました。過去の遅刻履歴、雨量、そして生徒の『顔の引きつり具合』をパラメータとして入力すれば、 99% の精度で嘘を見抜けます」


**中村:**「……いや、待てよ。……鈴木先生。私も今朝、雨のせいで布団から出るためのエネルギー障壁(活性化エネルギー)を突破できず、 分ほど遅刻しそうになったんです。……もし、私がこのアルゴリズムにかけられたら、私の『やる気』の事後確率はどうなります?」


**鈴木:**「……計算するまでもありません。中村先生の労働意欲が正の値である確率は、**有意水準 1%** で棄却(否定)されます。つまり、先生は数学的に『常にサボりたがっている』と証明されます」


**中村:**「……。……よし、この話は終わりにしましょう。生徒たちの証明書も、今回は不問にします。……誰にだって、雨の日に現実から『サボり』たい確率は、 に近づくものですからね」


中村先生は、自分自身の「不真面目な事後確率」を隠蔽するために、そっと生徒たちの書類をシュレッダーへ流し込むのでした。

演習問題

「ある情報が得られたとき、それがどの原因から生じたものか」を、事前の知識と新しいデータを組み合わせて推測する確率の理論を何と呼びますか?


1. ベルヌーイ試行

2. ベイズの定理

3. 中心極限定理

4. 最小二乗法


解説

「ベイズの定理」は、迷惑メールのフィルタリングや、不完全な情報から真実を推測するAIのアルゴリズムなどに広く使われています。

**正解:2**

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