第八の試練「時計塔の複素数平面」と、逆回転する青春
この物語はフィクションです。現実の学校現場とは全く関係ありません。ご一読ありがとうございます。
体育館を抜けた一行の前に、月明かりに照らされた古い時計塔がそびえ立っていました。しかし、その文字盤は異常な動きを見せています。針が不規則に飛び跳ね、ある時は音速で逆回転し、またある時は静止する。九条くんの最終試験は、ついに「時間」という概念にまで及びました。
「中村先生、時計塔の扉はロックされました。ここを開けるには、僕がデジタル化した『校舎の記憶(時間)』を正しく整列させる必要があります」
### 【第八のパズル:複素数平面における回転と絶対値】
時計の長針と短針を、特定の「複素数 i 」と見なし、目標とする時刻へ移動させなければならない。
* 現在の針の位置を複素数 z とすると、針を回転させるには複素数 w = cosθ + i sinθ を乗算する必要がある。
* 九条くんが仕掛けたトラップにより、特定の角度 θ で回転させると、針の長さ(絶対値 |z| )が変化し、文字盤を突き破って破壊される(タイムオーバー)。
**問題:絶対値を変えずに、針をちょうど 90° ずつ、合計3回「ド・モアブルの定理」を用いて回転させ、特定の『虚数時間の座標』で静止させよ。**
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### 中村の記憶:『静止』という名の、動かない時計
(……複素数。実数という現実の軸に、虚数という『想像の軸』を垂直に立てた世界……)
狂ったように回る時計の針を見上げながら、私はかつての論文の「核心」を思い出していました。
(……『感情の定常波に関する考察』。私の研究の行き着いた先は、時間の流れさえも『虚数』に置換し、現実世界から一切の変化を取り除くことだった。悲しみが生まれる前に、時間を横に(虚軸方向に)逃がして、現実の時間を止めてしまえばいいと考えていた。……でも、それは平和ではなく、誰も未来へ進めない『永遠の昨日』に閉じ込めることだったんだ……)
**九条(モニター越し):**「先生。あなたは時間を止めることで、生徒たちの卒業(別れ)という痛みさえも消そうとした。……でも、見てください。エミ先生たちは、必死に『今』の針を動かそうとしていますよ」
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### 校務:鈴木先生と「オイラーの公式」
**中村:**「……ああ、わかっている。止まった時間は、もう美しくなんかない。鈴木先生! 複素数平面上の回転角 θ = π/2 を設定。虚数単位 i を使って、この狂った時間を『現在の軸』に引き戻すんだ!」
**鈴木:**「……中村先生。ド・モアブルの定理 (cosθ + i sinθ )^n = cos(nθ) + i sin(nθ) を適用。……エミ先生、山口くん。針が i の位置に来た瞬間に、二人の手を重ねて文字盤を押さえてください。現実と虚数の接点(極)を固定します」
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### 授業:複素数と「多角的な視点」
私は針を必死に抑える二人に、叫ぶように解説しました。
**中村:**「二人とも、よく聞け! 現実(実軸)で行き詰まったときは、横にある『別の軸(虚軸)』を思い出せ! 物事を多角的に、立体的に捉えれば、どんなに困難な回転(変化)だって乗り越えられるんだ!」
**エミ先生:**「先生! この針、重たいですわ……! でも、私たちの『今』を過去には戻させませんわ!」
**山口:**「おう! 筋肉は嘘をつかねえ! 虚数だろうが何だろうが、俺がこの時間を真っ直ぐにしてやるぜ!」
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### 結末:賢者の「今」
「カチリ」と、時計塔の針が正しく「現在時刻」を指して静止しました。扉のロックが解け、中から冷たい夜風が吹き抜けます。
「……お見事です、中村先生。時間を虚数に逃がさず、真っ向から『回転』を受け入れた。……でも、第九の試練は……この学校の最深部。僕たちの『絆』を数値化する、統計学の試練ですよ」
九条くんの声が、夜の帳に溶けていきました。
「中村先生……。時計が動く音が、こんなに愛おしく聞こえるなんて初めてですわ」
エミ先生が、動き出した秒針を見つめて微笑みました。
(……ああ。時間は流れるからこそ、価値がある。……サボり続けた私の時間も、ようやく明日へ向かって動き出したのかもしれない)
中村正樹の「サバイバル卒業試験」は、ついに残り2つ。第九の試練——地下書庫に眠る「相関関係と信頼区間」が、彼らの絆を試します。
演習問題
複素数 z = i を、原点を中心に時計回りに 90° 回転させた複素数はどれですか?
1. 1
2. -1
3. -i
4. 0
解説
複素数平面において、 i は実軸から反時計回りに 90° の位置(真上)にあります。
これを時計回りに 90° 回転させると、実軸上の 1 の位置に来ます。
(計算式: i × ( - i ) = -(-1) = 1 )
**正解:1**




