第五の試練「理科室の爆発カウントダウン」と、フィボナッチの調合
この物語はフィクションです。現実の学校現場とは全く関係ありません。ご一読ありがとうございます。
「次は理科室です。でも気をつけて。そこには、僕が『数学的な美しさ』だけで調合した、極めて不安定な反応系が置かれています」
九条くんの警告通り、理科室の扉を開けると、ツンとした薬品の臭いが鼻を突きました。実験台の上では、3つのビーカーの中で液体が周期的に色を変える「振動反応」が起きています。
### 【第五のパズル:隣接三項間漸化式と化学平衡】
扉のロックを解除するには、ある特定の「中和剤」を生成し、センサーに注入しなければならない。
* 3つのビーカーの液量( a_n, b_n, c_n )は、1分ごとに一定の規則で変化し、その関係性は以下の漸化式で表されている。
* **漸化式:a_(n+2) = a_( n+ 1 ) + a_n** (フィボナッチ数列型)
* ただし、液量が一定の臨界値を超えると、ビーカー内のエネルギーが暴走し、理科室が物理的に「強制終了(爆発)」する。
**問題:爆発が起こる「第 n 分」を特定し、その直前に漸化式の「一般項」を逆算して、正確な分量の触媒を注入せよ。**
**エミ先生:**「まあ! 液体が青、黄、赤と点滅していますわ! まるでカウントダウンの信号機ですわね!」
**山口:**「先生、このビーカー、めちゃくちゃ熱くなってきてるぜ! 数学でこの『熱さ』を止められるのか!?」
---
### 中村の記憶:『感情の定常波』と、静止した絶望
(……漸化式。前の状態を引き継ぎ、未来を固定してしまう残酷な鎖……)
私の脳裏に、封印したはずの大学時代の光景が蘇りました。
(……私はかつて、世界を平和にするために、人々の心の『ゆらぎ』を消し去る数式を研究していた。論文タイトルは**『感情の定常波に関する考察』**。怒りや悲しみを逆位相の数式で打ち消し、世界を完璧な『静止』へと導くアルゴリズム。……だが、それは同時に、喜びも、変化も、生きている実感さえも奪う、死のような平和だった……)
**九条(モニター越し):**「先生、その論文の結びにはこうありましたね。『全ての変数が消えたとき、世界は最も美しく、最も空虚になる』と。あなたはそれを完成させる直前で逃げ出した。……だから今のあなたは、あえて『サボり(ゆらぎ)』を自らに課している。……違いますか?」
---
### 校務:鈴木先生と「固有値の解析」
**中村:**「……ああ、そうだ。九条くん。私は『完璧な答え』に絶望したんだ。……鈴木先生、解析を。この数列が臨界点を突破するまでの最短時間を」
**鈴木:**「……中村先生。特性方程式から導かれる黄金比 Φ に基づく指数関数的増大を確認。……臨界点まで、あと2分14秒です。……山口くん、君の動体視力で、液体の色が『黄金色』に変わった瞬間に、触媒を 3.14 ミリリットル注入してください。……これが、静止させないための、動的な平衡です」
---
### 授業:数列の一般項と「限界の予測」
震える山口くんの横で、私は静かに、かつての自分に言い聞かせるように言葉を紡ぎました。
**中村:**「山口くん、ビーカーの熱から目を逸らすな。数列は増え続ける。でも、それを『止める(消す)』のが正解じゃない。……その増大のルールを知り、爆発しないように『調整』し続けること。それが、私がこの学校でサボりながら見つけた、数学との付き合い方なんだ」
**六条(通信越し):**「……先生。あなたはあえて、静止ではなく、調和を選びましたね」
---
### 結末:賢者の「中和」
「シュッ」という音と共に、山口くんが完璧なタイミングで触媒を投入しました。激しく色を変えていた液体は、一瞬で透明な水へと変わり、理科室の電子ロックが軽快な音を立てて外れました。
「……さすがです。かつて世界を静止させようとした天才。今のあなたには、その数列の暴走さえも愛おしく見えるのでしょう。……でも、次の第6の試練は、本校の屋上。……重力と微積分の、逃げ場のない戦いですよ」
九条くんの言葉に、私は深く溜息をつきました。
「中村先生、お疲れ様ですわ! でも、先生の横顔が少しだけ晴れやかになった気がします」
エミ先生が私の袖を引きました。
(……晴れやか? いや、過去の自分の罪深さに目眩がしただけだよ。……でも、確かに。今のこの騒がしい場所なら、私はもう『静止』を望んだりはしないだろう)
中村正樹の「サバイバル卒業試験」は、ついに後半戦へ。物語は、屋上での「微積分と自由落下の極限」へと加速します。
演習問題
漸化式 a_(n+2) = 5a_(n+1) - 6a_n の特性方程式はどれですか?
1. x^2 + 5x -6 = 0
2. x^2 - 5x +6 = 0
3. x^2 - 6x +5 = 0
4. x^2 + 6x -5 = 0
解説
漸化式 a_(n+2) + pa_(n+1) + 1a_n = 0 に対し、特性方程式は x^2 + px + q = 0 となります。
a_(n+2) -5a_(n+1) + 6a_n = 0 と変形できるので、
特性方程式は x^2 -5x + 6 = 0 です。
(これを解くと x = 2, 3 となり、一般項は a_n = C_1・2^n + C_2・3^n の形になります)
**正解:2**




