第二の試練「六条さんの期待値ルーレット」と、給食室の食料奪還
この物語はフィクションです。現実の学校現場とは全く関係ありません。ご一読ありがとうございます。
「おめでとうございます、先生。第一の試練は通過ですね。でも、ここからは私の領域——『不確実性』の迷宮です」
放送室から六条さんの涼やかな声が響きます。山口くんを救出し、空腹を抱えて給食室へと向かった私たちの前に立ちはだかったのは、重厚な電子ロックがかけられた巨大な冷蔵庫と、その扉に埋め込まれたタッチパネルでした。
### 【第二のパズル:確率と期待値の選択】
モニターには、3つのデジタル・ルーレットが表示されています。
* **ルーレットX:** 100%の確率で、おにぎり1個を獲得。
* **ルーレットY:** 50%の確率で豪華幕の内弁当、50%の確率で空の弁当箱。
* **ルーレットZ:** 10%の確率で「幻の高級和牛ステーキ」、90%の確率で「激辛激苦特製ドリンク(気絶不可避)」。
**問題:10人の生徒全員が「最も効率的に満腹になる(合計期待値を最大化しつつリスクを分散する)」ための最適な選択手順を答えよ。**
**エミ先生:**「先生! 私はステーキがいいですわ! 直感でZを10回まわしましょう!」
**中村:**「エミ先生、落ち着いてください。それは数学的に言えば『全滅への特攻』です。10回まわしても全員が飲まされる確率が約35%もあります。……九条くん、六条さん。君たちは僕に『安牌』を選ばせたいのか、それとも『博打』を打たせたいのか?」
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### 校務:鈴木先生と「リスクマネジメントの演算」
**鈴木:**「……中村先生。単一の期待値だけで見れば、Zのステーキの価値をどう数値化するかに依存します。しかし、今回の目的は『全員の生存(満腹)』です。統計学における『大数の法則』を効かせるには試行回数が少なすぎます」
**中村:**「ああ、わかっている。……六条さん、このパズルの肝は『連動』だね? 一人が選んだ結果が、次の人の確率に影響を与える設定になっているはずだ」
**六条(モニター越し):**「……ふふ、お見通しですね。条件付き確率(ベイズ推定)を応用してください。一人が失敗するごとに、残りのルーレットの当選確率は上がっていきます」
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### 授業:確率の収束と「最善の妥協」
私はパネルを操作し、生徒たちに指示を出しました。
**中村:**「山口くん、君はまずXだ。確実に1個確保しろ。次に、六条さんの仕掛けた『ハズレの蓄積』を利用する。最初の3人がYで外れた場合、4人目の当選確率は……」
**中村:**「……よし、これでいい。期待値を追いかけるのは、ギャンブルのためじゃない。最悪の事態(全員空腹)を避けるための『保険』なんだ。……確定だ、この手順でロックを解除する!」
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### 結末:賢者の「おにぎり」
電子音が鳴り、冷蔵庫のロックが解除されました。中には期待値通り、人数分+αの食料が。
「さすがです、先生。自分の欲望を抑え、集団の期待値を守り抜いた。……でも、次の第3の試練は、山口くんが筋肉で考えた『物理演算の壁』ですよ」
おにぎりを頬張る山口くんは、バツが悪そうに笑っています。「先生、ごめん! 九条にそそのかされて、図書室をめちゃくちゃな重力設定にしちまったんだ!」
「中村先生……。一口のおにぎりが、こんなに論理的な味がするなんて……。さあ、次は図書室ですわ!」
(エミ先生、私はただ、ステーキを狙って激辛ドリンクを引くのが怖かっただけなんです! 勇気がないだけなんです!)
中村正樹の「サバイバル卒業試験」は、胃袋を満たし、重力すら歪んだ図書室へと進みます。
演習問題
1枚100円のくじがあります。
1等:500円(当たる確率 10%)
2等:100円(当たる確率 30%)
ハズレ:0円(当たる確率 60%)
このくじを1枚引いた時の「賞金の期待値」はいくらですか?
1. 50円
2. 80円
3. 100円
4. 150円
解説
期待値 = (賞金 × その確率) の合計です。
期待値 = (500 × 0.1) + (100 × 0.3) + (0 × 0.6)
期待値 = 50 + 30 + 0 = 80円。
(100円払って80円戻ってくる計算なので、引けば引くほど損をする設定ですね)
**正解:2**




