2次関数とWi-Fiの相関関係?
この物語はフィクションです。現実の学校現場とは全く関係ありません。ご一読ありがとうございます。
第2話を作成します。今回は「授業」の要素を織り交ぜつつ、中村先生が「楽をしたい」一心で放った一言が、周囲に深読みされていく様子を描きます。
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「……繋がらない。なぜだ」
山中高等学校、唯一のコンピュータ室。といっても、型落ちのノートPCが10台並んでいるだけの、かつての図書準備室だ。
私は、壁際のWi-Fiルーターと格闘していた。昨日から校内のネットワークが不安定なのだ。
「中村先生、状況は?」
背後から、低く落ち着いた声。朝永教頭だ。
彼は、まるで物理現象を観察するように、点滅するルーターのLEDを見つめている。
「朝永先生。どうもこのルーター、接続台数の上限に達しているか、配置の問題で干渉が起きているようです。……ただの機械トラブルですよ」
「ふむ。……『境界条件』の問題かな」
教頭は弓道の的を見定めるような鋭い眼差しで呟いた。
(いや、ただの安物ルーターの限界なだけなんですけど)
そこへ、廊下から騒がしい足音が聞こえてきた。
「中村センセー! 今日の数学、外でやりましょうよ! 天気いいし!」
元気よく入ってきたのは、バスケットボールを指で回している山口くんだ。運動能力は高いが、数学の時間はいつも窓の外を眺めている。
「山口くん。数学は教室でするものですよ。……と言いたいところですが」
私は、手に持ったルーターと、手元のタブレット(自腹で購入したもの)を見た。
私の脳内に、ある「生存戦略」が閃く。
(そうだ。教室で真面目に板書をしていたら、ノートを取らない生徒の対応で私のHPが削られる。いっそ、このWi-Fiトラブル解決を『探究学習』にすり替えて、生徒に丸投げ……いや、主体的に解決してもらおう!)
「……よし。今日の『数学Ⅰ』は、予定を変更して屋外で行います。テーマは、**『2次関数と電波強度の放物線的関係、および最適配置の導出』**だ」
「……は?」
山口くんが呆然とする。
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### 授業:2次関数の導入(フィールドワーク編)
校庭。
10名の生徒たちが、怪訝そうな顔で集まっている。
**中村:**「みんな、スマホやタブレットのWi-Fiマークを見てごらん。校舎から離れると、どうなる?」
**六条(成績優秀な女子生徒):**「……当然、弱くなります。距離の2乗に反比例して減衰するからですよね?」
**中村:**「正解。六条さん、さすがだね。じゃあ、今のルーターの位置(原点)から、みんなが一番快適に通信できる『頂点』はどこか、2次関数のグラフを使って特定してみよう」
私は地面に棒で大きな座標軸を描いた。
**中村:**「教科書の2次関数の形を思い出して。 。この『頂点 』こそが、君たちが最も電波を掴みやすい聖域だ」
**望月(数学が得意な女子生徒):**「先生、つまりルーターの高さを としたとき、私たちの位置 との関係が放物線を描くってこと?」
**中村:**「その通り! さあ、各自タブレットを持って、電波強度が最大になる地点を探して。そこが、この学校の新しい『アクセスポイント設置予定地』になる」
生徒たちは「ゲームの隠しアイテム探し」のような感覚で、校庭を走り回り始めた。
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### 結末:深まる誤解
放課後。
無事に(生徒たちのデータ収集により)最適な設置場所が判明し、私は新しいルーターをそこに置くだけで、校内のネット環境を劇的に改善させることに成功した。
「……ふう。これで明日の授業準備もネットで楽にできるぞ」
私が事務作業をしていると、鈴木先生がやってきた。彼女はタブレットに記録された生徒たちのログを見て、珍しく目を見開いている。
「中村先生……。驚きました。単なる接続トラブルを、2次関数の動的理解に繋げ、さらに実社会の問題解決(DX)を生徒自身に行わせるとは。……『主体的・対話的で深い学び』の極致です」
「いえ、私はただ、自分が配線し直すのが面倒だっただけで……」
「謙遜は不要です。あなたは、生徒たちの『認知特性』を数理的に把握し、最適な学習環境を構築した。……まさに、情報の魔術師ですね」
(違う。私はただ楽をしたかっただけなんだ……!)
遠くの校長室から、稗田校長が窓の外を見つめながら微笑んでいるのが見えた。
「人類の歴史は、試練を英知で乗り越える記録。……中村先生、あなたはやはり、この学校の運命を変える鍵のようですね」
私の意図とは裏腹に、山中高校の「ICT革命」の噂は、静かに、しかし確実に広まり始めていた。
演習問題
2次関数 y = -(x - 3)^2 + 5 のグラフについて、正しい記述はどれですか?
1. グラフは下に凸であり、頂点は (3, 5) である。
2. グラフは上に凸であり、頂点は (-3, 5) である。
3. グラフは上に凸であり、頂点は (3, 5) である。
4. グラフは下に凸であり、軸は直線 x = -3 である。
解説
2次関数の基本形 y = a(x - p)^2 + q において:a が正なら下に凸、負なら上に凸。頂点は (p, q) となります。本問では a = -1(負)なので上に凸、 p = 3, q = 5 なので、頂点は (3, 5) です。正解:3




