物流企業の「黒船」と、時給換算の恐怖
この物語はフィクションです。現実の学校現場とは全く関係ありません。ご一読ありがとうございます。
「中村先生! ついに『外圧』ですわ! 山の下に、大手物流企業『カメレオン・エクスプレス』の役員様たちが黒塗りの車で乗り付けていますの!」
エミ先生が、今度は開国を迫るペリー提督を迎える幕府の役人のような顔で報告に来ました。
生徒たちが飛ばした「最短経路ドローン」の噂を聞きつけ、彼らの特許レベルのアルゴリズムを買い取りたい、あるいは共同研究をしたいと、ビジネスのプロたちがやってきたのです。
「エミ先生……。私は公務員です。副業は禁止されていますし、何より、企業との交渉なんていう『責任の重い仕事』に関わったら、私の有給休暇が消滅してしまいます」
(断頭台は嫌だが、スーツを着た大人たちに囲まれて「イノベーション」について語らされるのも、精神的な死と同じだ!)
「……よし。鈴木先生、朝永教頭。彼らを**『時給換算の迷宮』**に追い込みましょう。この学校がいかに採算の取れない、非効率な(ふりをしている)場所であるかを叩き込み、投資意欲をゼロにします」
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### 校務:鈴木先生と「非効率のモデリング」
**中村:**「鈴木先生。彼らに見せるプレゼン資料を用意してください。生徒一人がコードを一行書くのに必要な『ハーブティーの消費量』と『岡田先生の筋肉談義に付き合う時間』を、コストとして厳密に算出したグラフです」
**鈴木:**「……中村先生。それは『機会損失』の極致です。……ですが、資本主義の論理がこの純粋な探究環境を侵食するのは、データの汚染に等しい。了解しました。ROI(投資利益率)が永久にマイナスになる、悪魔の収支シミュレーションを作成します」
**中村:**「助かります。これで、彼らも『ここはビジネスの相手にならない』と悟るはず……」
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### 授業:整数の性質と暗号(RSA暗号の鍵生成編)
校長室で役員たちが待ち構える中、私はあえて「最も難解で、一円の得にもならなさそうな」数学の授業を延長しました。
**中村:**「みんな、今日は『大きな素数の掛け算』がいかに世界を守っているか……RSA暗号の仕組みをやるよ。 n = p × q という、たった一行の式が、どれだけ解くのに時間がかかるか」
**六条(天才肌):**「先生、この素因数分解の困難さを利用して、ドローンの制御通信を独自暗号化しました。外部からのハッキングは、スーパーコンピュータを使っても300年かかります」
**山口(体育会系):**「先生! 300年って、俺が毎日スクワット100回を10万回繰り返すより長いな! 鉄壁だぜ!」
**物流企業の役員(廊下で聞き耳を立てて):**「……なんだと? 独自暗号化だと? あのガキ……いや、あの生徒たちは、軍事レベルのセキュリティを授業の合間に構築しているのか……!?」
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### 結末:賢者の「無欲」という最強の交渉術
結局、私は役員たちに「本校のアルゴリズムは、ハーブの香りと筋肉の躍動という、数値化不可能な変数に依存しているため、他所では動きません」と、丁寧にお断りしました。
彼らは、私の「全く金に興味がない(ように見える)死んだ魚のような目」を見て、こう確信しました。
「……あの中村という男、底が知れん。数兆円の価値がある技術を、『ハーブがどうの』とはぐらかして守り抜いた。あそこは、金銭という概念を超越した、真の『賢者の隠れ里』なのだ……!」
彼らは「自分たちが関わるにはまだ早すぎる」と、畏敬の念を抱いて去っていきました。
廊下では、稗田校長が誇らしげに真鍮のブローチを撫でていました。
「中村先生。富という名の誘惑を、知恵という名の霧で隠し通す……。その不屈の意志、まさに財宝を守る伝説の守護竜のようです。……あなたは、この学校の純潔を、何よりも大切に思っているのですね」
(校長、私、ただ契約書の細かい文字を読むのが面倒だっただけなんです! 守護竜じゃなくて、ただの活字嫌いなんです!)
中村正樹の「責任から逃げたい」という一心での拒絶は、あろうことか「巨大資本に屈しない、高潔なる教育の守護者」という伝説を、経済界にまで広めてしまうのでした。
演習問題
2つの素数 p = 11 , q = 13 を用いて、RSA暗号の鍵の一部となる を求めなさい。また、n = p × q の値を求めなさい。また、( p - 1 )( q - 1 )の値を求めなさい。
1. n = 143, ( p - 1 )( q - 1 ) = 120
2. n = 121, ( p - 1 )( q - 1 ) = 100
3. n = 143, ( p - 1 )( q - 1 ) = 132
4. n = 132, ( p - 1 )( q - 1 ) = 110
解説
* n = 11 × 13 = 143
* ( p - 1 )( q - 1 ) = 10 × 12 = 120
この120という数字は、暗号の「鍵」となる別の数字 e を選ぶ際に非常に重要になります。
**正解:1**




