道場破りの「老数学者」と、Excelの迷宮
この物語はフィクションです。現実の学校現場とは全く関係ありません。ご一読ありがとうございます。
「……ここが、噂の『神速の学び舎』か」
ある朝、山中高校の校門に、古武士のような風格を漂わせた老人が立っていました。
彼の名は、隣町の進学校で数十年間教鞭を執り、県の数学教育界で「歩く関数表」と恐れられるベテラン、権藤先生。
「中村とかいう若造が、試験を5分で採点したと聞いた。……数学は魂の対話。機械ごときが測れるほど、浅いものではないはずだ」
権藤先生は、私が作成した「エレガントな解法」の問題用紙を叩きつけにきたのです。
(……うわあ、面倒な人が来た。これは『古き良き教育』vs『デジタル化』の不毛な論争フラグだ。断頭台(説教3時間コース)は絶対に嫌だ!)
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### 校務:鈴木先生との「伝統のデジタル翻訳」
職員室に緊張が走る中、私は鈴木先生に目配せをしました。
**中村:**「権藤先生、お越しをお待ちしておりました。先生の著書『泥臭い計算の美学』、拝読いたしました(嘘です、タイトルを今ググりました)。実は、先生が提唱される『計算のプロセスに見える生徒の迷い』を、私たちは数値化しようと試みているんです」
**鈴木:**「……その通りです。中村先生が構築したシステムは、単なる〇×判定ではありません。生徒がどのステップで論理の飛躍を起こしたか、筆跡の停留時間から推測するアルゴリズムを……今、即興で追加しました」
**中村:**「(鈴木先生、ナイスアシスト!)……権藤先生、ぜひ、先生が一番『手強い』と思われる難問を、本校の生徒に出してみてください。私たちのシステムが、先生の『眼力』にどこまで迫れるか、証明させてください」
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### 授業:整数の性質(不定方程式の最短経路編)
権藤先生が監視する中、数学Aの授業が始まりました。
**中村:**「今日は特別講師の権藤先生から頂いた宿題だ。163x + 78y = 1 の整数解を求めてみよう。力技で計算すると日が暮れるけど、ユークリッドの互除法を『逆走』させれば、必ず解に辿り着ける」
**山口(体育会系):**「先生! これ、権藤先生が言ってた『泥臭い計算』を繰り返すと、最後にパズルみたいに x と y が飛び出してくるな! 筋トレの追い込みみたいで燃えるぜ!」
**六条(天才肌):**「……ですが中村先生。この計算過程、行列の初等変形として一般化すれば、もっと直感的に処理できますよね? 私はその『構造』をスプレッドシートに組んでみました」
**権藤先生:**「……ほう。道具を使いながらも、その根底にある『数の理』を、自分の言葉で語っておるのか……」
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### 結末:老数学者の「敗北」と「託宣」
放課後。
権藤先生は、私のノートPCに表示された「生徒一人ひとりの思考プロセス分析グラフ」を食い入るように見ていました。
「……負けた。私が30年かけて培った『生徒の躓きを見抜く勘』を、貴様はわずか数ヶ月のコード(記号)で再現したというのか」
「いえ、権藤先生。先生の『勘』という膨大なデータがあったからこそ、私たちはそれを数式に置き換えることができたんです。先生こそが、このシステムの『真の設計図』ですよ」
(よし、おだてて帰ってもらおう……!)
しかし、権藤先生は私の手を強く握り、涙を浮かべて言いました。
「中村くん……。君こそが、アナログとデジタルの断絶を繋ぐ、教育界の『特異点』だ。……私は今日、引退を決めた。あとは君のような、無私(?)の心を持つ若者に託すとしよう」
(引退!? 責任重大な言葉を置いていかないでください!)
さらに校長室から、稗田校長が慈愛に満ちた表情で現れました。
「中村先生。伝統という名の枯れ葉に、デジタルという名の光を当てて、新たな芽を吹かせたのですね。……あなたの不屈の意志は、ついに世代の壁さえも超えたようです」
(校長、私、ただ怒られたくなかっただけなんです……!)
中村正樹の「波風を立てたくない」という処世術は、ついに「教育界の世代交代を促す伝説の一幕」として、県の教育史に刻まれてしまうのでした。
演習問題
今日の授業の復習です。
**【問題】**
不定方程式 ax + by = 1 が整数解をもつための、 a と b に関する条件として正しいものはどれですか?
1. a と b がともに偶数であること。
2. a と b が互いに素であること。
3. a が b の倍数であること。
4. a と b の和が奇数であること。
解説
ユークリッドの互除法により、最大公約数 g は ax + by の形で表せます。
ax + by = 1 となる解が存在するのは、最大公約数が 1 、つまり a と b が「互いに素」であるときです。
**正解:2**




