【灰色の砂時計】4※
チャリティーオークションを、呪術部と神殿の共同開催にすると、王宮出張所から打診があったのはそれからすぐのことだ。
「呪術部から品物の提供をしていただく必要はありません。お気遣いは不要です、絶対にいりません。ただ呪術部の綺麗どころ何人かが、オークション会場で壇の近くで立っていてくれればそれでいいんです。デルガト侯爵はそういうの、得意ですよね?」
呪われた砂時計の一件で、すっかり呪術部に惚れ込んだというレジナルドが「ここはぜひ親睦を深めるためにも共同作業をしましょう!」とはりきっているのである。
もちろん、ダウナー気質の呪術部は気乗りしない態度を隠さない。ヘレンなどはっきり迷惑がっており、レジナルドの訪問予定がある日は無理矢理にでもどこかに隠れる。
しかし、たとえばその場に呪いの鎖で繋がれた王弟カイルがいた場合、鎖が「よく見える」というレジナルドはすぐにヘレンを見つけてしまうのだった。
「オークションはすべて神殿の方で手配しますので、ヘレンさんは私の横に立ってくれているだけでいいんですよ。それだけでみんなあなたの虜です。私も」
「虜にするつもりはありません!」
いやがるヘレンは、レジナルドの申し出を強く突っぱねる。
すかさずカイルが「一番の奴隷は僕だからね、いまから志願しても二番手以下だよ」とレジナルドに釘を刺し、ヘレンは「だからそれも……嬉しくない」とぶつぶつと言う。
レジナルドは邪気のない顔で微笑み、まるで「わかりました」と引き下がりそうな和やかさで、正反対のことを口にするのだ。
「私、これで結構負けず嫌いなんです。二番手は嫌です。奴隷になるにしても、奴隷の中では一番でいたい」
伊達にこの年齢でここまで出世していないですからね、と爽やかさに見合わぬ俗っぽいことを口にする。
そのやりとりに背を向け、ヘレンは大きくため息をつき、愚痴っぽく呟くのだった。
最近、呪術部が賑やかすぎて嫌なんですけど、と。
★第三章ここまで。
いつも応援ありがとうございます(๑•̀ㅂ•́)و✧
*ただいまの登場人物*
ヘレン:呪術師
メルヴィン・デルガト:呪術部部長。侯爵。
【第一話】
女王
ミッシェル・ウェインライト:公爵。女王の近衛騎士。
【第二話】
カイル:王弟。奴隷紋(+鎖)付き。
フィリス:聖女。
フランシス・キーソン:宰相補佐官。侯爵。カイルとは幼馴染。
【閑話】
ナイゼル・ギュスターヴ・クレマン:魔術師。
ルシエル・ディ・ザルディーニ:四番目の姫。
【第三話】
レジナルド:聖職者。王宮出張所の責任者。