【呪いの祝福あれ】1
※第一章は以前短編で投稿したのと同内容です。
強く気高く美しい、女公爵にして女王陛下の近衛騎士であるミッシェル・ウェインライト。
高貴な身の上でありながら、幼馴染である女王陛下のため剣を取り、屈強な男性騎士たちの間で修行を積んで数年。
めきめきと頭角をあらわし、数々の武功を立てて、いまやその名は国外まで轟いている。
目の覚めるような麗しい容姿の評判とともに。
彼女は常に騎士の正装にて、女王陛下に寄り添っている。
女王は二十歳を超えて未婚であり、近い親族の男性はいない。そのため、公的な行事で男性のエスコートを受けた場合、相手が誰であれ必ず波風が立つ。その状況を鑑みて、ミッシェルが常に女王のエスコートをつとめているのだった。
それはもはや、この国の社交界名物。
婚期を迎えたご令嬢方は、舞踏会や夜会の場では少しでも良い相手と縁をもつため奮闘するものであるが、女王とその騎士が現れると誰もが頬を染め、見とれてしまう。
高い教養と類まれな美貌で知られ、必ずや素晴らしい相手に嫁ぐと目されていたご令嬢が、感極まって「あんな素敵な方が世の中にいるのを知りながら、みすみすそこらへんの男で手を打たなければならないなんて」と口走ってさめざめと泣いてしまった件を筆頭に、未婚・既婚問わず女性たちはこぞって女公爵ミッシェル・ウェインライトへの好意を隠すこともない。
相手が女性であるがために、後顧の憂い無く「推し」として女性同士で盛り上がっている。
その飛ぶ鳥を落とす勢いのミッシェルが。
女王陛下を狙った邪悪な呪いを身代わりとして受けて倒れ、意識が戻らないという事件が起きた。
王宮の魔術師団の中でも、華やかさとは無縁の閑職にして冷や飯食い、呪術研究部にその一報が入ったのは、ミッシェルが倒れて三日後のことであった。
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