4話 初の練習試合で分かれる光と闇
もう4月も終わりが近づいてきた。初めての山ランをした日からはバッティング練習も少しずつできるようになっていった。そして土曜日、この日は初めて一年生も練習試合に出ることができる。しかし、その人数は10人ほど。残りの20人以上は試合観戦、補助にまわる。補助とはいっても初めての練習試合のためボールを取りに行く仕事だけだった。1試合目は一年生は誰も出場機会がなかった。2試合目が始まる前、俺たちは学校のグラウンドで練習をする。試合をしているグラウンドから少し離れているため移動には少し体力が削られる。下のグラウンドに着き俺たちはバッティング練習をすることになった。一周を終えボールを集めている最中に先輩から声をかけられる。
「早くボール集めろ。上の整備しに行くぞ。」
俺は、いや一年生はみんな驚いていただろう。まさかまた上のグラウンドに行かなければならないなんて思ってもいなかったからだ。ボールを拾いが終わり試合会場へと走って行く。5分ほどかかる道のりをバタバタとメンバー外の一年生が走っていく。
「急げー。」と三年生から声をかけられる。グラウンドに着く直前、既に呼吸が乱れている一年生が多く、座りこみそうな一年生までいた。
「早よ並べ。」 少しの休憩の時間もない。試合は5回裏ノーアウトだった。5対2で三瀬高校が3点リードしている。流石は三瀬高校だと思った。5回を終え俺たちはグラウンド整備をする。そろそろ終わろうとおもっていたその時
「何してんだ、まだやってないとこがあるやろ。ちゃんとせぇーよ。」
監督から怒りの言葉を全員が受ける。そもそもブラシが回っている時点で終わり始めても良いくらい、もっと言うなら終わっても問題ないくらいだ。しかも、一部の選手に言うのではなく整備をしている選手全員に向けて放った言葉である。俺は腹が立った。
「わざわざ整備をするためだけにここまで走ってきてグラウンド綺麗にしてるのに何故怒られないといけないんだよ。」横にいた福谷にそう言った。
「整備くらいメンバーでできるやろ。こんなにも人数いらんって。」
「見て。お礼も無い。他の奴は言ってんのに。あの岸原先生でもありがとうって言ってるで。」
「そうやな。小崎先生はこれが当たり前やと思ってやってるんやろ。自分勝手やけどな。」
小崎先生の印象は最初の頃なんて良い方だった。先輩から聞いた話では小崎先生は野球部全員嫌いということを知った。その理由が少し分かったかもしれない。整備が終わるとまた下のグラウンドへと戻る。結局最後も上のグラウンドに整備をしに行かないといけないのだがそこからの記憶はほとんどない。ただ走って疲れて怒られて整備をさせられた。およそ6時間でバッティング練習1周しただけ。練習をしたとはとても言えない。
「ここ人数多い。他のところ行け。」
「もっと真面目にやらんか。」
「草が生えてるなら抜いとけ。気づかんのか?気付いら抜け。当たり前やぞ。」
そんな言葉が連発でグラウンドに響く。メンバーは荷物を片付け、下のグラウンドへと向かって行った。
「なんでメンバーは整備やらんで良いの?あいつらが使ったんやからあいつらもやれよ。ていうかあいつは何?真面目にやれとか草抜いとけとか。草生えてるの自分が気付いてるのにあいつは抜かんとかおかしい。使ってもないグラウンドを整備するためにここに来たわけじゃないねん。」
「あれでも甲子園に行った監督や。しょうがない、あいつは自分が正しいと思っているから。」
「俺らは奴隷か。やってられん。」
早いうちに不満が溜まった。あくまでメンバー外は雑用やっとけば良いみたいな考え方、俺らはあいつの操り人形になってしまっている。下のグラウンドに着くとメンバーはバッティング練習をしている。
「俺達捨てられた?」そう疑ってしまうほどの扱い。練習が終わり部室では2つの空気があった。試合に出た一年の光と出れなかった一年の闇。中には不満が爆発している一年もいた。俺も不満はあったがなんとかこらえた。寮に帰った後俺は倒れ込みそうだった。一気に疲労と不満が体にのしかかる。この生活から逃れるにはメンバーになるしかないと思い、決心した。
「絶対あいつの奴隷にはなるもんか。」
どうも雨見零です。短くまとめるつもりが長くなってしまいました。ようやくストーリーが動きそうなところまで来ました。投稿は3日ほどの間隔でやっていますが目標は1週間に2話投稿することにしようと思います。最低でも1週間に1話を投稿していこうと思っております。
それでは次回もおたのしみに。