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「校庭に避難しろー!」

「にしても、河合君はあたしが思った以上にスリリングな人だったみたいだね。んでもって、すごく下衆だ。正義の真裏をいくのが彼と言う人なんだろう。支配的で冷酷、喜屋武さんみたいな人を焚きつけるズル賢い奴……さすがにこれは許せないね」


 言いながら玖珠が膝に手をつき立ち上がると、喜屋武がきょとんと見上げてくる。


「こうしちゃいられない。やっぱりあたし、様子を見てくるよ。こりゃ下手したら人死が出る」

「あの、玖珠さん!」


 踏み出そうとしたところを、喜屋武に手を掴まれた。


「あのっ……私の、こと。もう怒ってないの? だって昨日、私はあなたにも石橋君にも酷いことをした。あなたのことが好きだって言っておきながら、勝手な理想を押し付けて、あなたの友だちともろくに話をしないで、まったく目の前が見えてなかったのに」


 玖珠は首をかしげてみせ、自分の手を握る喜屋武の手を、逆に力強く引いて立ち上がらせた。


「喜屋武さんがあたしや石橋君の背景をくみ取ってくれたように、あたしもたった今喜屋武さんのいきさつを知ったんだ。確かにその直情的なとこは懸念すべき弱さだと思うけど、話を聞く限り喜屋武さんは河合君にそそのかされただけ。あたしは中学から喜屋武さんのこと見てたから、あなたが不器用で真面目で、人一倍正義感が強い人だってことを知ってる。だから反省してるなら、必要以上に自分を責める必要はないよ」


 喜屋武は呆気にとられた顔をして、じわりと涙目になると勢いよく抱き着いてきた。


「っやっぱり私、玖珠さんのこと好き――!」

「っとぉ……」玖珠はよろめきながらも彼女を抱きとめる。

「あなたは自分のことを卑下していたけど、玖珠さんはとっても魅力的な人だよ。スリルジャンキーでも良い。むしろその、ちょっと変わったところも好き。玖珠さんが危険を楽しむんだったら、私はあなたが手放しで楽しめるように、そばであなたを守るよ……」

「重いなぁ、告白が!」


 苦笑しつつ背中を叩き、そっと喜屋武の体を離した。


「でもま、あたしのこと好きだって言ってくれるんなら、あたしの親友の加勢に付き合ってくれるよね?」


 もう迷いの晴れた顔で笑い、喜屋武は頷いて見せた。

 

 石橋が河合との決戦に選んだという、三階の空き教室。そこを目指そうと、喜屋武と玖珠が図書準備室を出てすぐだった。


 ――ジリリリリリリリ――!


 廊下中に、けたたましい非常ベルの音が鳴り響く。

 何事かと喜屋武と顔を見合わせていると、他の教室から沢山の生徒がバタバタと走り出て同じ方向へと走っていくのが見えた。


「校庭に避難しろー!」


 誰かが叫ぶ。その声につられ、パニックのように生徒が一目散に逃げていく。

 非常ベル。逃げ惑う生徒。火事か? 地震か? 

 それとも一体、何が起きたというのか――。


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