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「これ全部僕の今の武装」

「河合雁也は強迫的と言えるほど、神経質過ぎる気持ち悪い性格してるんだ。名前も顔も変えて僕にへばりつくっていう計画を成功させるためには、彼のその性格がきっと役立ったことだろう。――高校に入って見つけた、いくつかある彼の儀式的行為を使わせてもらう。グラウンドに出る授業の前に、河合は一度靴箱を確認しに行って、自分のシューズの有無を確認してから教室に戻り、ジャージを持って出て、三階の空き教室で着替える。着替えは一人でやりたいらしい。奥ゆかしいね。――さて、今日は昼休みが終わってすぐの五時間目、グラウンドで体育の授業がある」


 石橋は明朗な口調で、玖珠に彼自身の戦略をすらすらと説明して見せた。

 まるでもう、何年も前から夢に描いてきたように。


「僕は空き教室で河合を待ち伏せる。で、そこでしっかり向き合って片を付けるよ。奴を僕の人生から排除して、安寧を取り戻すんだ」

「なるほど。だけど片って具体的にどうつけるの? あっちは顔も名前も変えてひっついてくるクレイジーストーカー野郎だよ。石橋君お得意の話し合いじゃあ解決しないと思うけど」

「シンプルに危害を加えようかと」

「は?」

「これまでの喜屋武さんや己斐西さんを見て思ったんだ。目的を果たせるなら、最終的に殺さなければ何をやっても良い。少なくとも奴に対してそうする権利が僕にはある。だからとにかく徹底的に暴力を振るうんだ。二度と立ち上がれないくらいに。僕はあいつからの暴力には慣れてるけど、逆はそうじゃないからきっと効くと思う。……ねえ玖珠さん、あいつが僕を追いかける理由、知ってる?」

「き、聞きたくないな――」

「自分より弱いところが可愛いんだって」

「ああー聞きたくなかった……超キモい……」

「昔はただ支配されてた。奴の暴力に身も心も屈して、言うなりになることだけが生きる術だと思い込んでた。だけどそうじゃない。だから僕がただの言いなりにならないことをあいつの体に叩き込んで、僕に全く可愛げがないということを分からせる。ついでに憂さ晴らしをする」

「……どこまでボコるの? そもそも勝てるの? 力技で?」

「まさか。勝つためなら何でもやるよ。催涙スプレーに十徳ナイフ、ピアノ線、スタンガン、タクティカルペン、ライター。これ全部僕の今の武装」

「おいおい、銃刀法以前に持ち物検査で即アウトだよ」

「だからいつもはロッカーとか鞄の奥に閉まってるんだ。でも今、全部持ってきちゃった。あはは」


 昼食をとってすぐだろう、昼休みになってさほど時間を開けずに図書準備室に現れた石橋は、明朗な口調でそこまで語ると、玖珠に歯を見せて笑った。


「だからこの昼休みが終わる頃に、玖珠さんが先生を呼んできて説明してね。石橋と河合が大喧嘩してるって。それでもし気が向いたら、先生に僕が有利になるような証言をしてほしい」

「……多分だけど石橋君、ぼっちのイカれたプッツン野郎の称号を得るだろうね。ていうか下手したら停学……いや退学?」

「僕の古傷がやっと癒えるんだ。そのくらい安いよ。僕ってばお利口さんだから、高卒認定くらい軽くパスしてやるさ」

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