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Episode001 異世界転生一週間記念の温泉旅行

俺が放った『火炎弾』に当たったグリフォンが、抵抗の声を上げながら墜落した。

魔石と羽を数十枚、クチバシを残して消滅したグリフォンは、今日10匹目の犠牲だ。


「よくやったな、アヅマ! お前ってまだ冒険者になって一週間しか経ってないんだろ? それでコレはバケモノじみてるな!」

「いやいや、ケントたちもサポートしてくれたから上手くいったんだろ?」

「おーいー、冒険者の先輩には『さん』を付けろよデコ助野郎!」


そんなことを言い合いながら笑い合う。

この世界は、魔物や魔王という危機がありながらも活力があって好きである。

勉強や仕事に追われるだけの人生を過ごしている人しかいない地球(アッチ)とは大違いだ。

コイツ等も、歳は違っても実力があった俺をすんなり認めて、仲間にしてくれた。

とは言っても、パーティーを組んでいるとかではないのだが。



俺はつい一週間前、よく分からないが、目を覚ましたらコッチにいた。

寝ている間に何があったのか知らないが、近くにあった池で姿を見ると、比べ物にならないくらい金髪金目になっていた。

姿を変えて世界を渡ったってことは、転移ではなく転生の可能性の方が高い。

一回死んでいると思うとゾッとするが、それで痛みとかなかったんだしいいか。

寝ながら死ぬと死んでいること気が付けないで地縛霊になるとか聞いたことあったし、転生してくれていて良かったとは思う。

それはともかく、俺の脳内に機械的な声で、「転生特典として、『魔法再現』を付与します。魔法の効果は取得時にのみ閲覧可能ですので、取得した際には10秒は目を閉じるのを忘れないでください」とか聞こえて、目を閉じたらホントに何か出てきた。

それで、その『魔法再現』の効果が『発動の瞬間を見ていた魔法を完全に再現することができる。回数無制限。』って便利機能だったのは今も感謝が尽きない。

近くを通った冒険者に言語も分からぬまま連れられて来たのが王都だったが、到着直後でモンスターと戦いまくったおかげで使える魔法の種類はもう100を超えた。

どこかの誰かが使っていたのを発見したから『言語理解』もコピーしたし、今はもう全ての言語を使ったり理解したりすることができるし。


「それじゃ、いつも通りギルドで打ち上げやるか!」

「「「おう!」」」


5人の声が重なり、王都に帰るべく、臨時パーティーの1人の転移魔法が発動する。

転移する瞬間って、呼吸を止めてないと少し酔うんだよね。

今日のグリフォンはそれなりに強かったし、報酬もそれなりだろう。

そんなことを思いながら、明日から行こうとしている場所に胸を弾ませるのだった。



グリフォン討伐の翌日。

俺は荷物をまとめて宿から出た。

何を隠そう、今日から俺はしばらく温泉旅行に行くのだ!

一週間でかなり金を稼いだ俺は、旅行で全財産を使い切るくらいのつもりでいる。

だいたい200万テリンも稼いだし、足りなくなったら帰ってくるけどもそれなりに満喫できるはずだ。

昨日の魔術師の人が使った転移魔法を『魔法再現』でコピーしたから、あとは指定する行き先の名前を言うだけなのである。

『魔法再現』をくださったのが誰か知らないけど、マジでありがとうございます…!

俺は『魔法発動不可領域』である王都の敷地を出ると、盛大に叫んだ。


「転移魔法発動!『温泉街アフェル』!」


その直後に呼吸を止め、目を瞑る。

ここで目を瞑ってしまうのが癖になってしまっているのは問題であるが。

地面に着陸した感覚がして、俺は目を開けた。

そこには、王都とはまた違って落ち着く風景が広がっていた。

……なんというか、やけに日本の温泉街を再現したみたいな街並みだな。

近くの山からは湯気が噴出していて、多くの種族の旅客で賑わっている。

前世に読んだラノベだと、そんな温泉街がヤバい集団の本拠地だったとかあったが、こんなに素晴らしい世界にはそういうのはないらしい。

周囲にはエルフやドワーフ、サラマンダーとの混血らしき人種までいて、見ていても飽きそうにはない。


「さて、まだ朝も早いが宿に入るか」


俺はそう何気なく呟き、王都で聞いた、温泉街アフェルで一番の温泉旅館に向かう。

しかもどうやら、そこには混浴があるそうだ。

そう、混浴である。あの男子なら一度は夢見てもおかしくない幻の存在。

地球にいた頃は全くの御伽噺(フェアリーテイル)でしかなかったが、流石は異世界である。

ただ、俺はあんまり混浴への興味がない。

裸の付き合い的な意味では温泉はいいのだが、男女でなら桶の1つでも飛んでくるのがお約束ってモンじゃないだろうかとは思うのだが。

そんなんで訴えられたら俺の異世界生活が終わってしまう。

まあ、今のところ、その辺に関する法律は見つかってないから問題ないはず。

とりあえず、下心とかなしで『混浴という存在自体への興味』ってことで今日は混浴にでも入ってみるとしますか。

あれやこれやと思っていると、俺はその温泉旅館に到着。

受付でチェックインを済ませ、指定された部屋の鍵を片手に部屋に入る。

この宿で一番高い部屋――予約はしていなかったが空いていた――を頼んだのだが、それなりの金額するところだし、本当にその値段に合いそうなくらいの部屋だった。

特設の露天風呂もあるが、露天風呂ってのは友達でも恋人でもいいから、誰かと入るって小さい頃から心に決めている俺はわざとスルーする。

そのまま混浴に着替えや下着を持っていき、服を脱衣所で脱いだ俺は、そこの扉を開けると……。


「すっ、すいませんでした……」


……扉の目の前の温泉に、黒髪黒目の何者かが入っていたので、一回扉を閉めた。


次回 Episode002 勇者にフラれた&追放された最強少女との出会い

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