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英雄の巻き込まれ建国譚  作者: 信礼智義
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第11話 終戦処理と契約の箱

これにてこの物語も終わりになりました。希望があれば外伝を書きます。最後までお読みいただきありがとうございました。

 アメリカ、ロシア、ユエ3か国の代表が秘密裏にルーシャンに集まり、戦後処理の下案が作られた。


 その後、インドのムンバイにて、中央アジア講和会議が正式に開催された。


 チムルに支配されていた少数民族のうち、5つの民族が独立した。その領域はほぼ彼らの主張が通った形で承認された。ユエ国はタリム河とその東側がユエ領として認められた。


 チムル共和国はチムル人民党の指導下で、ロシアの政治的影響下に置かれることになった。


この内容で、ムンバイ平和条約が関係国の中で結ばれた。


 ユエ王国では、臨時首都であったルーシャンが正式に首都となった。


 九頭英雄は王として、多忙な日々を送っていた。戦争で傷ついた国土の復興、インフラの整備、日本やアメリカとの経済協力協定の締結など日々仕事に追われていた。スラーシャやミーシャは英雄をサポートしていた。


 多くの日本人がユエ王国で活動していた。戦争により、義勇兵として戦った日本人たちはユエ国籍を取得し、様々な分野で活動していた。


 弟の九頭勇士は日本企業と合弁で携帯通信会社を作り、ユエ王国のみならず、新たに独立した国やキッタン連合王国をカバーした通信網を構築した。


 妹の九頭聖はアニメーション・漫画の分野で力を発揮、中央アジアでブームを作り出していた。


 齋藤剣はいくつもの激戦を乗り越え、陸軍大佐に昇進していた。そのまま軍に残るつもりのようだ。ちなみにローザと交際しているとのこと。ローザにユエ語を教えてもらっているうちに、仲良くなったようだ。


 いつものように仕事に追われていた九頭英雄は、マーシャの襲来を受けた。サルパとニルパを連れて執務室に入ってきたマーシャは、部屋に入るなり九頭に抱きついて言った。「ヒデオ、契約の箱を見に行きましょうよ」


 「契約の箱か…」そういえばそれを調べにターイエに来たのだったな、と思い出していた。


 そしてその後の怒涛の出来事を思い出した。政略に巻き込まれ、結婚することになり、命を狙われ、王位を得て、戦争を戦い抜き、統一王となった。こんな波乱万丈の人生を送るなんて思いもしなかった。そんな今までの出来事を思い返していると「ビデオ、聞いている?」とマーシャは聞いてきた。


 「行きたいけど、仕事がなあ」本当にやってもやっても終わらない。とにかく忙しい。ミーシャやスラーシャも手伝ってくれており、特にミーシャは一大戦力として居ないとどうにもならないほど働いてくれていた。


 「行きましょう、ビデオ。仕事は何とかなるわ。マーシャやヴィーナ、アプリたちがめちゃくちゃさみしがっているわよ」突然ミーシャが部屋に入ってきて言った。


 「仕事が忙しくて全然かまっていないからな」


 「かまってあげないと、嫌われちゃうわよ」マーシャは真面目な顔で言った。


 「分かった。時間を作っていくか。少尉殿に断っておくか」英雄は言った。


 鈴木少尉に言ったところ、「わしも行くぞ」ということになり、さらに弟の勇士と妹の聖も「面白そう、私たちも行く」となった。さらにローザが「ぜひ行きたい」となり、齋藤も引っ張られる形で参加することになった。


 一行は護衛を付けて、ヘイス族の村まで向かった。ヘイス族の村で、契約の箱の番人に会った。 

 「お父様お久しぶりです」アプリが言った。

 契約の箱の番人はアプリの実の父だった。「国王陛下、おじい様、そしてご友人の皆様よくおいで下さった。私が契約の箱の番人をしておりますイコンと申します。早速ですが、契約の箱の安置場所にご案内いたします」イコンは先頭に立って歩き始めた。


 九頭は彼に続いて歩き始めた。皆もその後について行った。


 しばらく歩いたところで、「いつもアプリがお世話になっています。アプリはよくやっていますでしょうか」とイコンが訪ねてきた。


 「ええ、私も妻たちも頼りにしています。少尉殿もいろいろ頼りにしているようです」

九頭は笑顔で答えた。


 「祖父はアプリがお気に入りでしたからね。下手な男にはやれん、と言っていたぐらいですから。祖父からアプリを結婚させると聞き、かなりびっくりしたのですが、まさか王に嫁ぐことになるとは」イコンが微笑みながら続けて言った。


 「それで孫はいつぐらいになりそうですか」


 苦笑いしながら「もうしばらくはかかりそうです」と英雄は答えた。


 「なんと、アプリに言って頑張らせなくては」びっくりしたようにイコンは言った。


 「いえいえ、大丈夫です。夫婦で考えていますので」英雄はくぎを刺した。


 「そうですか、なるべく早く孫の顔が見たいものです」イコンは残念そうに言った。


 そのうち、とある洞窟についた。洞窟の入り口に入るとすぐ秘儀側に隠し扉があり、そこを進むと二股に分かれていた。


 中は迷路になっていた。さらに隠し扉も多用されており、案内がなければ確実に迷ってしまうところだった。


 一番奥につくと、巨大な扉があった。


 鍵を開けて、その扉を開いた。


 イコンは壁にある明かり台に火をつけた。一か所につけると、次々に明かり台に火が付いた。


 全てに火が付くと、奥に箱のようなものがあり、鈍く光っていた。一行は奥へ進んだ。一定のところまで近寄ると、イコンがストップをかけた。


 そのから、黄金に飾られた大きな箱が見えた。箱は担いで動かせるように二本の柱が箱の下についていた。


 その姿を見た一同は無言だった。神聖な空気が漂い一帯を清浄な気で満たしていた。


 突然箱が輝き始めた。そして声が聞こえた。


 「我がしもべたちよ。最初の地に残りし者、途中で歩みを止めた者、果てに辿り着いた者、別れし者たちがここに集った。我を神として信仰するべし。さすれば千年の繁栄を約束しよう」


 皆はびっくりして、声も出せない状態だった。


 一番最初に我に返ったのは英雄だった。ここは王として私が対応しなければならない、そう考えた英雄は、神に膝まつき、話しかけた。


 「私はこの地の王である九頭英雄です。神よ、私はあなたを神として祭りましょう。しかし、われわれ日本人は多くの神を信ずるものです。それらの神々の一柱として祭ることとなります」


 「神は我のみ、唯一の存在である。我以外のものを信ずることは禁ずる」


 「ヤマトの神とユエの神は神のおっしゃる絶対神とは同一ではありません。本地垂迹の理から、神の化身とお考えいただければよろしいかと思われます」


 「われの化身というわけか。ならば認めよう。我への信仰のあかしを立てよ。我の言葉を疑うべからず」


 言葉はやんだ。皆は腰を抜かしてしまい、その場から動くことができなかった。


しばらくして、「始まりの神殿」に奥の院が作られた。そこに重大なものが安置されていることが発表されたが、何かは教えられなかった。

ただ、そこには、ユエ人、日本人およびユダヤ人の参拝者が多く訪れるようになった。


一人の青年の冒険譚、これにて一段の終了とさせていただきます。ここまでお読みいただきありがとうございました。


お読みいただきありがとうございました。もし少しでも気になりましたら、星かブックマークをいただけますと作者のやる気が高まります。次の作品を読んでもいいという方がいらっしゃいましたら、本当によろしくお願いいたします。

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