第7話の3 イエ王国の成立と戦争の始まり
毎日午後6時に投稿しています。お読みいただければありがたすです。先に投稿した「英雄の人生探訪旅行譚」「英雄の人生探訪旅行譚むも一緒にお読みいただければありがたいです。
英雄はターイエで皇太子によるクーデターがあったことを知った。併せてシャオイエに宣戦布告がなされたことを知った。
シャオイエ王は直ちにシャオイエ軍を動員する旨、議会にはかり、議会もしぶしぶそれに同意した。ヘイス族、ホンス族がそれぞれ民兵軍を組織、そして鈴木少尉が創設した日系ユエ人を主体とした日本帝国陸軍も英雄の指揮下に入ることを宣言、シャオイエ軍とともにヒデオを旗頭にターイエとの国境に向かった。
国境についたが、ターイエ軍はいなかった。偵察隊を出したが発見することはできなかった。情報を集めると軍自体が自然崩壊し、ターイエにはまともな軍事力は存在しないことが分かった。
英雄は鈴木少尉と相談し、ターイエに進攻することにした。ところがそこで議会からストップがかかった。シャオイエ軍はシャオイエ防衛のためにあるのであって、他国に侵略するための軍隊ではない。よって国境を出ることを禁ずるとのことであった。
英雄はシャオイエ軍を集め話をした。
「シャオイエ軍諸君、シャオイエ王家皇太子のヒデオ・クトウ・シャオイエである。今回、君たちは私の指揮下で働いてくれた。すでにターイエからの侵攻はないことが分かった。シャオイエに迫った脅威は去ったといえよう。シャオイエ議会はシャオイエ軍のこれ以上の戦闘を中止し、原隊に復帰するよう指示を出してきた。しかし現在も、ターイエでは王子の王位簒奪により、混乱状態にある。私はターイエの王族の一人として、この混乱を沈め、ターイエに秩序の回復を行わなければならない。これから私はヘイス族軍、ホンス族軍、日本帝国軍を率い、ターイエ解放のため戦う。諸君らとここでお別れである。今までありがとう」
一人の兵士が声を上げた。「皇太子殿下、これは我々ユエ人100年の悲願である統一の機械ではないですか。皇太子がターイエの王となられたら、両王家はひとつとなり、新しいユエ王国ができるのでしょう。そんな偉業を目の前に我々が撤退するなど考えられません。どうか連れて行ってください」
他の兵士が言った。「我々は皇太子に従って戦います。議会の言うことなんて聞くつもりはありません。どうか一緒に連れて行ってください」そうだそうだとほかの兵士たちからも声が上がった。
「議会の指示に従わなかった場合、抗命罪になるかもしれない。それでも私と来てくれるのか」英雄は尋ねた。
「はい、我々はあなたについていきます」兵士たちは口々に言った。
「ありがとう、それではともにターイエにいこう!」英雄は腕を振り上げて大きな声で、宣言した。
鈴木少尉は細く笑んでいた。「サクラを用意しておいたら、思いのほかうまく言ったな。さて、これで歴史が一つ動くぞ」
途中カムトイ元将軍率いるホンス族軍本体と合流、ターイエの首都タードゥに進攻した。タードゥにはわずかな警察隊がいるだけで、英雄の軍が進攻するとたちまち降伏してきた。あっという間に戦闘は終了した。
捕虜に確認したところ、皇太子から首都防衛の命令は受けていたが、本人たちは戦闘する意思もなく、シャオイエ軍が現れたので降伏したとのこと。
王都に入ると、王都の民から解放軍として歓迎された。王宮はもぬけの殻であった。情報を集めたところ、皇太子が側近数名と逃亡したことが分かった。
逃亡先を聞くとチムル共和国とのこと。英雄はやな予感を感じた。
鈴木少尉も「まずいことになりそうだ。シャオイエの情勢が気になる。情報を集めねば」と言っていた。
九頭英雄はターイエの王位についた。略式であるが、6部族が忠誠を誓い、王となったことを宣言した。
それと同時にヘイス軍、ホンス軍、日本軍と4部族の民兵を再編し、新ターイエ軍を編成した。
ターイエの安定に努めている英雄のもとに凶報が入った。シャオイエ議会が、王政の廃止を宣言、さらに安全保障協定をチムル共和国と結び、チムル軍の駐屯を依頼したとのことだ。
英雄は直ちに、ターイエ軍と、自分に従っていたシャオイエ軍をシャオイエの首都シーロンへの派遣を実施した。
そしてさらに悪いことが重なった。旧皇太子がチムルに亡命政権を作り、チムルの援助を求めたとして、チムル共和国がターイエにも宣戦布告を行った。
チムル共和国は初代大統領がソ連崩壊のどさくさにまぎれて、近隣少数民族を併呑し中央アジア最大の国となった。危うくシャオイエ、ターイエも飲み込まれるところであった。
運よく侵略前に初代大統領が急死し、その息子が2代目大統領を引き継いだが、息子の方は国内の安定を重視したため、シャオイエ、ターイエは独立を保つことができた。
そして、2代目大統領がなくなったことで、現在初代の孫のカドチェコフが3代目大統領となっていた。チムル共和国はロシアの影響下にあり、現在北部地域を中心に多くのロシア人が居住しており、ロシア軍もその地域に駐屯していた。
カドチェコフ大統領は初代に倣って領土拡張を意識していたが、ロシアから無用な混乱を起こすなということで圧迫をうけ、動きを封じられていた。
しかし、ロシアが西方にて戦争を始めたため、現在チムルに対する影響力が低下しており、これを機会にターイエ、シャオイエに領土拡張の魔の手を伸ばそうと考えていた。
そこにちょうどいい口実ができたチムルは早速侵略を開始した。
シャオイエ、ターイエのあるチムル東部地区はブルカという町にチムル軍東部方面軍司令部が置かれていた。ブルカは町の西方にタリム河というかなり大きな川が流れており、チムルの東部での経済の中心であり、交易拠点にもなっていた。
そこには4個師団、約5万人が駐屯していた。大統領からシャオイエ、ターイエへの侵攻を命令された東部方面軍司令官のシュルパ大将は隷下の4個師団のうち、シャオイエにジュドー中将以下2万の兵力と、T90、T80を主体とした戦車220両の機甲兵団、ターイエにはジュール中将以下2個師団2万、こちらはシャオイエと異なり、山岳地帯が多いことから戦車は100両余りの機甲兵団を派遣していた。
シャオイエに軍を派遣し、シーロンを占領した時、共和党チムル派はチムルに亡命した。シャオイエ王夫妻を解放し、みんなで無事を喜んだ後、シャオイエ王はヒデオに言った。
「ヒデオ君、いやターイエ王、あなたにシャオイエの王位も継いでもらいたい。ユエ王国の統一王として、この国難に対処してもらいたい」
英雄はびっくりして言った。「ターイエだけでもいっぱいいっぱいなのに、シャオイエまでなんて。王様、私は数か月前まで一介の大学院生だったのですよ」
「チムルの侵攻が行われている今、指揮系統がターイエ、シャオイエで別れているのは、合理的でない。統一した指揮系統で戦争を遂行した方がよい。それにこのことはスズキ元帥とも相談した結果なんだ」シャオイエ王は言った。
「少尉殿? 」英雄は尋ねた。
「この戦、絶対に勝たなくてはならない。どんな手を使ってもだ。すでにアメリカにはCIAを通じて援助の依頼をしている。ただ、西の戦争もあり、すぐに援助を得るのは難しいかもしれない。ならば、他の手も打っておかなくてはなるまい」
「ほかの手ですか」英雄は尋ねた。
「前シャオイエ王夫妻と元ターイエ王妃、それとお前の妻5人を借りていくぞ」
「どこへ行かれるのですか?」
「日本だよ、日本の援助をもらうのだ」少尉は言った。
「でも日本は武器の輸出も認めていませんし、戦争に介入できるとは思えないのですが」
英雄は疑問に思っていった。
「そこを何としてでも引きずり込むのだよ。お前は何としてでも現状維持に努めて、戦力を維持するのだ」鈴木少尉は言った。
「しかしどうやってやればよいのか」
「餅は餅屋だ。細かいことは専門家に任せろ。とりあえず防衛網を築き、ゲリラ戦で補給網を寸断するのだ。空軍は直接チムルと当たるな。できるだけ温存しておけ。俺たちが帰ってくるまで、お前はここで踏ん張るんだ」
鈴木少尉は言った。「お前ならできる。わしが見込んだのだからな」
翌日、英雄はシャオイエの王位を継承し、統一王となることを宣言、ユエ王国が誕生した。臨時首都として、ルーシャンに首都を置き、ここに統一政府を置くこととした。
バンザイの声がルーシャンの街に轟いた。
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