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英雄の巻き込まれ建国譚  作者: 信礼智義
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第7話の2 ターイエ国王宮内にて

毎日午後6時に投稿しています。お読みいただければありがたいです。先に投稿した「英雄の冒険旅行譚」「英雄の人生探訪旅行譚」も一緒にお読みいただければありがたいです。

 皇太子は激怒していた。ヴィーナを手に入れられず、せっかく結婚してやろうといって親書を起こったシャオイエからは無視された。ちなみにミーシャ姫から来た返書は内容を見て、皇太子の怒りを恐れた官僚たちによって隠された。

 更にはじまりの神殿で結婚式を挙げたことだ。あそこは国が分裂するまで、王の結婚にのみ使われる最も重要な神殿で、あそこで結婚したことはすなわち王として、ユエ族全部に君臨することを示している。あまつさえターイエ、シャオイエ統一について、皇太子たる自分を無視する形で言及してきた。

 ターイエでもヒデオの結婚に対する祝賀ムードが国民どもに蔓延し、ヒデオへの支持が集まっている。

これは明らかに王位の簒奪であり、ターイエに対する侵略行為に他ならない、そう考えた皇太子は王のもとに行った。ちょうど王はいくつかの部族の族長たちと謁見をしていた。


 「皇太子殿下、スラーシャ姫の結婚おめでとうございます。今度は皇太子の番ですな」


 「さようですな、わが娘たちも皇太子との結婚を指折り数えて待っておりますぞ」


 「スラーシャ姫に負けぬ立派な式にいたしましましょう」口々に部族の族長は言った。

今日謁見しているのは、皇太子の婚約者たちの部族長たちだった。


 「丁度いい時に来た。お前の結婚について、今相談していたところだ。お前も加わるといい」そう言って、王は皇太子の顔を見てびっくりした。

 「皇太子よ、何をそのように血相を変えておる。妹が結婚しためでたい時だというのに」王は皇太子に尋ねた。


 「これは簒奪以外の何物でもありません。直ちにヒデオを処断すべきです」皇太子は王に詰め寄った。


 王の周りの部族長や家臣たちが「皇太子殿下落ち着いてください」「王に詰めよってはなりません。ここは謁見場ですぞ」と口々に言い、皇太子を引き留めようとした。


 「うるさい黙れ、奴は私が目をつけていたホンス族のヴィーナを嫁にしたばかりか、結婚してやろうとわざわざこちらから言ってやったシャオイエの王女たちも奪い取り、あまつさえシャオイエの王位まで簒奪したのだ。ターイエとの統一の話もしたそうじゃないか。これは簒奪以外の何物でもない」皇太子は怒りに震えながら言った。


 王や家臣はこの皇太子の発言にあきれ、部族長たちは顔を見合わせていた。

 王は諭すように言った。「お前の婚約者は4人、ここにいる部族長の娘と決まっている。それ以上はこの国の決まりで無理だ。他国の王女やら、まして王家に反逆したホンス族の娘、それも反逆者の元妻などとの婚姻など認められるはずがないだろう。ヒデオがスラーシャとヘイス族、ホンス族の娘と結婚することは王の私が決めたことだ。お前は自分の方が先に結婚すると言っていたが、どちらが先かで何か問題があるわけでもあるまい。実際、つい最近までお前スラーシャの結婚式自体に文句は言っていなかったではないか。お前の結婚式は国を挙げて盛大にやってやるから、そんなに目くじらを立てるな。シャオイエの姫二人を娶ったのはびっくりしたが、ヒデオは外国人だし、シャオイエで納得しているのなら問題ないだろう」王は続けて話をした。


 「ヒデオがシャオイエの王位についたのは、我々にとってわるい話ではあるまい。スラーシャを通して、ターイエ・シャオイエがつながったのであり、将来的に統一の可能性が出てきたのだからな。例えば、お前の息子とヒデオの娘が結婚して、統一王となることも可能性としてあるんだぞ」


 「皇太子は結婚式を見てうらやましくなられたのではないでしょうか。スラーシャ姫の美しさはほかの花嫁たちを圧倒していましたし、皇太子も結婚欲が沸かれたのではないでしょうか」部族長の一人が皇太子をホローするように言った。


 「そうでございますな。皇太子さまも婚姻をなされて、国の政治にも積極的にかかわっていただければ」家臣の一人が言った。


 皇太子の怒りは爆発した。「お前ら何を勝手なことを言っている。私は誰の指図もうけない。王よ、王位を私にすぐに譲っていただく。そしてシャオイエに攻め込んでシャオイエを征服し、ヴィーナを我が妻とする。シャオイエの王族は私を馬鹿にした罪できつい罰を与えてやる。ヒデオもただではおかない」そう喚き散らした。


 王はあきれ果てて、部下に命じた。「皇太子は何かの病気にかかったようだ。直ちに病院に連れて行き、治療を行うように」


 皇太子はおもむろに銃を取り出し、王に向けて数発発射した。弾は王に命中し、王はその場で崩れ落ちた。家臣や部族長はびっくりして、その場を動けなかった。


 皇太子は王の亡骸を端に放り出し、血まみれの王位に座った。「本日から王は私だ。王はヘイス族のスズキ元帥の手のものに殺された。王宮にいるヘイス族のものを全員捉えよ」皇太子は命じた。


 部下たちは顔を見合わせていたが、銃を突きつけられるとあわてたように動き出した。部族長たちもその場から逃げるように立ち去った。


 王宮はこの暗殺事件で大混乱にあった。王都の民は家に閉じこもり、王都にいた部族長たちはみな部族の元に逃げ帰った。

 軍もバラバラになった。鈴木元帥が整備した王直属の近衛軍の軍人は出身部族の元に武器を持ったままで脱走した。

 空軍も中立を宣言、基地に立てこもった。官僚たちも一部を残して逃げ去ってしまった。ターイエは事実上機能不全に陥っていた。


 皇太子はシャオイエに宣戦布告をして軍を進めるよう官僚たちに命じた。宣戦布告は行ったが、肝心の軍が存在しないため、軍事行動はできなかった。

 皇太子は各部族に民兵の供出し、シャオイエに攻め込むよう命令を出したが、王殺しに従うものは誰もいなかった。

 皇太子は完全に孤立し、従うものは皇太子大使の養育にかかわったりした関係の深い、いまさら皇太子を見放せないわずかな者たちだけであった。

お読みいただきありがとうございました。もし少しでも気になりましたら、星かブックマークをいただけますと作者のやる気が高まります。よろしくお願いいたします。

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