第7話の1 結婚と王位
毎日午後6時に投稿しています。お読みいただければありがたいです。先に投稿した「英雄の冒険旅行譚」「英雄の人生探訪旅行譚」もお読みいただければありがたいです。
九頭英雄と婚約者たち、弟の勇士、妹の聖あと後輩の齋藤剣の7人はシャオイエにある空港に降り立った。
兄が結婚式をすると聞き、仕事の都合がつかない両親の代わりに勇士と聖はシャオイエに来たのだった。二人は始めてくる国にワクワクしているようだった。
みなは、すぐにシャオイエの王宮警備隊に保護され、王宮に連れていかれた。
王宮で、ヒデオだけ別室に通された。そこにはミーシャとマーシャ、鈴木少尉の三人がいた。
「お久しぶりです。ヒデオ」「さみしかったよ、ヒデオ」ミーシャが笑顔で挨拶し、マーシャは抱き着いてきた。
「おじゃまします。ミーシャさん。マーシャはひさしぶりだけどいきなり抱き着かないでくれ、びっくりするじゃないか。少尉殿ただいま戻りました」英雄は三人に答えた。
「うむ、ご苦労。早速だが話がある。マーシャ殿はいったん退出してくれないだろうか」
マーシャはぶつぶつ言っていたが、部屋から退出していった。
「さて、順をおって説明すると、まずお前はルーシャンの始まりの神殿で結婚式を挙げてもらう」鈴木少尉は話し始めた。
「はい、わかっています」
「結婚相手はターイエ側はスラーシャ、アプリ、ヴィーナの三人とシャオイエ側はミーシャ、マーシャの2名だ」
「えっ、ミーシャさんもですか?」英雄は驚いて聞いた。
「ミーシャ、マーシャを妻にすることでお前はシャオイエの王位継承権を手に入れる。シャオイエの王もこれは了解済みだ」
「でも妻は4人までというのが決まりなのではないでしょうか?」英雄は疑問を口にした。
「ターイエでは、スラーシャ、アプリ、ヴィーナの3人、シャオイエでは、ミーシャ、マーシャの2名どちらも4人以内で問題ない」鈴木少尉は言い切った。
「詭弁だと思われますが…」
「無茶も通せば無茶でなくなる。わかったか軍曹」鈴木少尉は得意げに言った。
「説明を続けるぞ。するとターイエの皇太子がほぼ間違いなく暴発する」
「皇太子が暴発するのですか?」英雄は驚いた口調で言った。
「ああ、暴発する理由の一つ目はあいつはヴィーナに惚れており、自分のものにしたがっている。それをお前に阻止されたのだから怒り心頭だろう。さらにあいつはシャオイエを自分のものにしたいのだろう。ミーシャたちに結婚の申し込みの文書を送っている」
「二人にですか?」
「とても気持ちの悪い文書です。結婚してやるから、王位をよこせという訳の分からない文書でした。それも私が第六夫人、マーシャが第七夫人だそうで馬鹿にするにもほどがあります」
「返事はしたのですか」
「ええ、一応正式な国の文書だったので、一生独身でいること、ターイエの王位をこちらによこすこと、それならば私たち姉妹に仕えることを許してもいいですよ、と返しました」
「そして、二人が九頭軍曹と結婚するとなると、さらに怒り狂うだろうな」
「そして、九頭が結婚のときに行うスピーチで統一について話をすれば、ほぼ間違いなく、自分の地位が脅かされると考え、地位の保全を実行するだろう」
「それはどういうことですか?」
「王位の簒奪だろうな」
「それはどういうことですか?」
「シャオイエの王位を手に入れた九頭は、ターイエの王位継承権2位の地位にいる。クーデターを阻止し、王家を守った英雄に対して、ターイエ国民の支持も高い。スラーシャ姫との結婚は現王の意思であるから、結婚を阻止するのは難しい。もし、皇太子が王の説得に成功して九頭に王位継承権を放棄するよう九頭に指示しても無視すればいいだけだ。逆にこちらから王位継承権をこちらによこすよう説得することもできる。なんせ、100年の悲願であるターイエとシャオイエの統一の機会であるからな」鈴木少尉は続けた。
「皇太子としてはここまで追い込まれたら暴発するしかあるまい。逆にこれで暴発せずに対策を考え、逆転できる能力があるなら皇太子の能力を見直さざるを得ない」
「そうですね。それができるなら王としてふさわしい人材だと言えるでしょう。ただ情報では、とてもそんな人物ではないとしか言えない性格の持ち主だと思われます」ミーシャは言った。
「皇太子のこれからの行動を考えるといくつかパターンが考えられるが、王を監禁し、王位を簒奪、それを理由に我々がターイエに王を助けるため侵攻、皇太子を逮捕して両国の統一を宣言というのが、我々にとって一番最良で、一番簡単で、一番ありうるパターンだな」
「ほかにもいくつかパターンがあるのですか」
「ああ、いくつもパターンも考えられるな」
「最悪だとどういうのがありますか」
「王を殺し、チムルを呼び込む。ただこれはあまりにも最悪の場合だ。王を殺せば、親殺しで皇太子の信用は最低まで失墜する。当然誰かのせいにすると思うが、かなりうまくやらないとだめだ。そして、チムルを呼び込み、戦争を起こせば王家の名を利用された挙句に100%ターイエはチムルに併合され、皇太子は消されるだろう。これはチムルが周辺の小国を併呑していく中で何回か行った手法だ」
「いくらなんでもそんなことはしないと思います。あまりにも考えなしで、その場しのぎ、最悪のパターンです」ミーシャは言った。
「可能性は少ないが、油断はせん方がいいだろう。情報は集めさせておこう」鈴木少尉は言った。
「その通りですね、万全の手は打っておくべきでしょう」ミーシャも行った。
さて、5人との結婚式はほぼ用意が終わっていた。シャオイエ国を挙げての結婚式で、ルーシャンのはじまりの神殿で行われた。
シャオイエで一番上位の司祭が結婚式を執り行うそうだ。ちなみにターイエとシャオイエが分裂する際、祭礼をつかさどる部族はシャオイエの方についたそうで、格式ではターイエより上であるとのことだった。
はじまりの神殿はこのユエ族にとって建国の神殿であり、そこで揚げられる王族の結婚式にはシャオイエのみならずターイエやほかの国からも多くの観光客が来ていた。
ターイエからは王妃様がこの結婚式に参列するために来ていた。王は不参加とのことだった。王妃いわく、いろいろ理由を言っていたが、仲の悪いシャオイエの王族に会いたくないそうだ。
皇太子はこの結婚は認められない、妹が兄より先に結婚するなど許されない、それにヒデオがシャオイエの王女を2人も妻にするなど許されないなどわめいていたそうだが、ヒデオとシャオイエの王族との結婚が主で、スラーシャ姫はそれに便乗する形である、ここで一緒に結婚しないとヒデオをシャオイエにもっていかれる。それにシャオイエの王女たちが結婚相手を選んだのであってこちらからとやかく言うことができないことを言って黙らせたそうだ。
結婚式には、王妃のほか、ヘイス族のアプリちゃんの両親や部族の主だった人々、ホンス族の族長たちが参加してくれた。
鈴木少尉とミーシャ、ヘイス族とホンス族の幹部たちで何やら話をしていた。何を話していたのか聞いたところ、鈴木少尉はお前を王につける算段だよと言ってニャァと笑った。
結婚式はつつがなく終わった。みんなとてもきれいだった。5人とも特別な民族衣装を着て、神殿の神官の前で婚姻の儀式をおこなった。
弟、妹、後輩の剣も参列してくれた。弟の勇士はシャオイエについていろいろ聞いて回って、「ここってもしかして宝の山?」と言って何か画策している様子だ。妹の聖はミーシャと会ってすっかり意気投合し、3人の女の子をはべらしご満悦の様子だった。
齋藤は鈴木少尉に紹介し、軍人としての訓練を開始することとなった。階級も与えられ、伍長となった。ちなみにCIAのエージェントにもあった。ローザさんと言う女性で、大変きれいな方だった。鈴木少尉に齋藤にユエ語を教えるよう依頼されたらしく、ぶつぶつ言いながら齋藤にユエ語を教えていた。
結婚式の終了後、英雄はスピーチを行った。シャオイエだけでなく、ターイエや近隣の国々に届くようにテレビとラジオの両方で放送が行われた。後で、弟の勇士がSNSにアップしてくれるそうだ。
英雄は結婚の報告と、祝ってくれたことの感謝、シャオイエの王位を継ぐこと、そしてターイエとの統一、そして将来の立憲君主制のあり方について話をした。
話し終わると人々からの歓声に包まれた。
英雄に中に王となって国を導くことへの強い意識がわいてきた。
お読みいただきありがとうございました。もし少しでも気になりましたら、星かブックマークをいただけますと作者のやる気が高まります。よろしくお願いします。