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英雄の巻き込まれ建国譚  作者: 信礼智義
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第5話 日本への帰国

毎日午後6時に投稿しています。お読みいただければありがたいです。先に投稿した「英雄の冒険旅行譚」「英雄の人生探訪旅行譚」も一緒にお読みいただけると幸いです。

 ある時、スラさんが泣きながら英雄に縋り付いてきた。

 「お兄さまに結婚式を妨害されてしまいました」スラさんは泣きながらそう言った。


 「どうしてですか?」英雄は思わず聞き返した。


 「兄より先に結婚するなんであり得ない。よって私の結婚は兄が結婚してからにしろとの理由からだそうです」スラさんは言った。


 「お兄さん、皇太子はいつ結婚の予定なのですか?」英雄は聞き返した。


 「まだ未定だそうです。というか、兄はまだ結婚する気がないようなのです」


 「それじゃ僕たちの結婚は…」

 「無期延期になってしまいました。ヒデオと結婚することを夢見て、いろいろ努力もして、やっと実現すると思ったら、どうしてこんなことになってしまったのでしょう」そう言ってスラさんは泣き始めました。


 「王様は何と言っているのですか?」英雄はスラーシャに聞いた。


 「父も困ったものだと言って兄に注意したのですが、兄は私より先の結婚は認めないの一点張りだそうで、父もそのうちあきらめて、兄の気が変わるのを待ちなさいと、私に我慢するよう言われました。父は私より兄を優先する気持ちが強いですから、兄の気が済むまで放置するつもりなのでしょう」スラーシャは悔しそうに言った。


 「王は別に結婚を中止せよと言っているわけではないのですよね。別の神殿ではだめなのでしょうか」英雄はスラーシャに聞いた。

 「私もそう思い、別の神殿にも聞いてみたのですが、すべて兄の命令にて使用が止められています。兄は私たちの結婚を絶対に阻止するつもりです」


 英雄は泣いているスラーシャをみて、なんとかしてやりたいと思った。

 ふと、英雄はシャオイエでのことを思い出した。

 「ねえ、マーシャ、前に一緒に行ったルーシャンの始まりの神殿は結婚式につかうことができるかな?」英雄はマーシャに聞いた。


 「あの神殿はシャオイエ王家が管理しているし、シャオイエ王家に関する行事しか使用しないからいつでも使用可能よ」そう言って、マーシャはニコッと笑った。

 「でも、もしあの神殿を使用したいのなら、王家の一員である私と結婚する必要があるわよ」マーシャは英雄に聞いた。英雄はスラーシャの方を向いて言った。


 「スラさん、シャオイエのルーシャンにある始まりの神殿で結婚式を挙げるのでもいいかい?スラさんだけでなく、マーシャとも結婚することになるけど、大丈夫?」


 スラーシャは微笑んで、「ええ、マーシャとはすでにヒデオに関して協力関係にあります。一緒に結婚することは了解済みです」と言った。


 「私たちも一緒に式を挙げますよ」アプリとヴィーナは言った。


 英雄は二人とも婚約者だし、年齢的に問題なくなるまで手を出さなければいいかと思い、二人の意見に同意した。


 その時、鈴木少尉は破顔していった。「ほう、始まりの神殿か、いいのではないか。早速だが、シャオイエのミーシャ殿に連絡を取らなくてはな。マーシャ殿、すぐに本国に連絡を取ってくれ。私もシャオイエに行く」


 「少尉殿もシャオイエに行かれるのですか」英雄は驚いていった

 「この結婚式はイエ族統一の先駆けである。九頭、とりあえずお前は日本に帰れ。もしよかったら、スラーシャ姫も日本に連れて行け」少尉は言った。


 「わたしがヒデオの国に行くのですか?」スラーシャはびっくりしていった。


 「旦那の国を見るのも悪くないだろ」鈴木少尉は微笑みながら言った。


 「「私も行きたい」」アプリとヴィーナも口をそろえて言った。


 「そんな、私も行きたい」マーシャと言った。


 鈴木少尉は「アプリとヴィーナ殿は一緒に行ってもいいが、マーシャ殿はだめだ」といった。


 「どうしてですか」マーシャは聞いた。


 「シャオイエでの結婚式を実施するためには、マーシャ殿の力が必要だしな。それにさすがにマーシャ殿のパスポートは用意していない」そう言って、スラーシャ、アプリ、ヴィーナのパスポートを取り出してきた。中には日本のビザも押されていた。


 「少尉殿、これは」英雄は思わず聞いた。


 「偽造ではないぞ、ちゃんとしたものだ。明後日の飛行機を取ってある。それまでに用意するのだぞ」少尉は言った。


 英雄はこの人は一体どこまで考えて動いているのだろうか、と空恐ろしくなった。

 

 「しかし、少尉殿、私たちがどうして日本へ帰る必要があるのですか。この国に残っていたほうが少尉殿の手伝いができると思うのですが」英雄は聞いた。

 

 「まず一つ目はお前の命を守るためだ。皇太子は王位継承を脅かすものとしてお前を憎んでいるし、さらにヴィーナ殿を欲しているらしく、お前が邪魔なようで命を狙っている可能性が高い。だが、さすがに日本に行ってしまえば手を出せまい。二つ目はスラーシャ姫がシャオイエに行くためだ。ターイエからシャオイエへの出国は必ず皇太子が邪魔をしてくるだろう。だから、日本に一度出国し、そのままシャオイエに行ってしまえば皇太子も対応できない。夫の故郷を見に行くとでも言っておけば、皇太子も特に何もしてこないだろう。王と皇后には私からそれとなく言っておくからな」 

 そして鈴木少尉は悪い顔をしていった。「三つ目はターイエの前にシャオイエを取るからだ。ミーシャ殿と共謀し、お前をシャオイエの王にする」


 英雄はびっくりして聞いた。「そんなことができるのですか?」


 「今下準備をしている。当然お前の力を借りなくてはならないが、今はまだその時ではない。とりあえず、嫁さんたちと日本を楽しんで来い」鈴木少尉は笑っていった。


 英雄はやや緊張しながら言った。「私に統一王が務まるのでしょうか」


 鈴木少尉は言った。「お前以外できる奴は誰もおらん」


 英雄は複雑な顔をしてその場を立ち去った。


 「いよいよ始まるな。統一戦争が」鈴木少尉は言った。すでに各部族への工作は済ませてある。皇太子が対抗して軍を集めようにも十分な兵力が集まらないように混乱の種は巻いた。

 シャオイエは、ミーシャを通して、議会の王党派と民族派、日系ユエ人を主体とした外人派と共同して英雄を王位につける手はずを整えつつある。

 シャオイエの共和派は隣国のチムル共和国の影響力が強いため、下手に動けばチムル共和国の干渉を生む可能性があるが、干渉させる間もなく一気に進めてしまうつもりである。とりあえず、ミーシャ姫と細かい打ち合わせをする必要がある。

 鈴木少尉はいざというときのため、ヘイス族とホンス族の民兵を動員する手はずを整えた。


お読みいただきありがとうございました。もし少しでも気になりましたら、星かブックマークをいただけますと作者のモチベーションがとっても上がります。どうぞよろしくお願いいたします。

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